表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
修羅の舞う夜に  作者: Lyrical Sherry
第三章 初任務編
49/103

第四十七話 ―うんざりしてるんだね―

第四十七話目です。


今話からだんだん"修羅"としてのお仕事の話が始まります。

まずは軽いジャブから。

 案内された部屋にはまだ誰もいなかった、ローベルト様かクラウディア様から何かの話があるのだろう。

 と、任命式も終わったので、あたしは今まで避けていた前髪で左目を隠すように直し、外套の袖を肘までまくった。


「あら、アーシスその前髪……」

「あぁ、ちょっと思うところがあって、左目は髪で隠すことにしたの」


 先程までは式典中だったので、しっかり両目が出るようにしていたけど、実は少し前からあたしは左目を前髪で隠すようにしていたんだよね――正確にはエリーゼに会った日あたりから。

 理由は二つ。


「前に魔熊と戦ったときに左目が見えないことに気づかれたんだけど――魔物にも分かるなら人が相手ならすぐに左目が見えないのがバレる。

でも眼帯とかつけると見えないって一目でわかっちゃうから、前髪で隠そうかなって」

「そういうことだったのね」

「あとは傷跡が残ってるからわざわざ人に見せるような物でもないしね。

特に子供には刺激が強いだろうし」


 魔熊で戦ったときの左頬の傷は残ってるけど、左目と一緒に隠せるし。

 身体中の傷も服を着てれば隠れるしね――因みに袖をまくってるのは、訓練中は半そでのシャツだったから、長そでだと違和感があるんだよね。


「それはそうね。

 そういうところまでちゃんと考えられて偉いわね」


 理由を答えると、チアーラさんが頭を撫でてくる。

 あたしも18歳になって成人したとはいえ、この人にとってはあたしはまだ子供に見えるんだろうか。

 そういうあたしも、こうやってチアーラさんに頭を撫でられるのは嫌いじゃない。


「おっと、お邪魔してしまったかな?」

「あっ、いえ」


 ローベルト様とクラウディア様が部屋に入ってきた。

 この人たちにこんなところを見られることはなかったから、改めてみられると恥ずかしくなってくる。


「そ、それより、何か話があるのでは!?」


 あたしは咄嗟にローベルト様にそう尋ねた。元々この部屋に案内されたのは何かしら話があるだろうからだ。

 別に耐えられなかったわけじゃない、全然そんな事ないからね?


「そうだな、今日は氾濫についての話をしようと思ってな」

「そういえばそんな時期でしたね……」


 ローベルト様が「氾濫」と言葉を出しと途端、皆の表情が曇った。

 氾濫はあたしも試験で行った「魔物の森」から大量の魔物が溢れだすこのを言い、年に一度発生する。

 皆は何度も体験しているはずなのに、なんで皆そんな微妙な表情をしてるんだろう。


「ということは今年も入り込んだんですね……」

「数は減ったが、いなくなる事はないな……」

「毎年毎年、よくもまぁいなくなんないっスよねぇ……」

「"狐"達に情報は流させているけど、それでも噂止まりだからねぇ……」

「別に捕らえること自体は楽だが、こう毎年だとなぁ……」

「もっと、本格的に情報を流した方が良いかしら……?」


 とそんな風にチアーラさん、ローベルト様、モルガナ姉ちゃん、カイナート兄ちゃん、ブラッドのおっちゃん、クラウディア様が頭を抱えている。

 皆の様子を見た感じ、危険というよりウンザリしていると言った印象だった。

 話していることから察するに氾濫自体とは別のことだとは思うのだが……。


「えっと、チアーラさん……?」

「ごめんなさいね、アーシスはまだ知らなかったわね」

「実は氾濫の時期が近づくと、他国から盗賊団やら違法商人やら、犯罪組織がこの国に入ってくるのよ……」

「氾濫時は門を閉めて入れないんで、氾濫の前に入ってくるんスよ」

「あぁ、なるほど……ちょうどいまがその時期だから、氾濫が始まる前に取り押さえるってことなんだね」


 大体察した。

 皆の様子を見る限り危険だとか人手が足らないとかじゃなくて、本当に毎年面倒でウンザリしていたんだろうなぁ。


「毎年のことではあるが、今年もローアブールからも連絡が入っている。

後程そっちにもまとめた書類を渡すから目を通してくれ」


 ローアブールとはラプラド王国の東隣に位置する同盟国だ。

 貿易国だから様々な情報が集まるのだ――この国に入り込んだ輩の情報もローアブールから受け取っているらしい。


「分かりました。まずは"狐"達に情報を集めさせます」

「そうしてくれ。情報部と調査部隊も連携するように伝えておく」

「ありがとうございます。"狐"達にも連携して調べるよう伝えておきます」


 調査部隊は"狐"とは異なりこのラプラド王国内の情報を調査する国の部隊、情報部は調査部隊や"狐"の集めた情報をまとめ、管理する組織だ。

 さっきまでウンザリとしていたのに、すぐに対応についての話を進めていた。

 流石というべきか、対応が手馴れているんだなぁ。


 そして、これがあたしの初の仕事となるだろう。

 人を相手にすること、人の命を奪うかもしれないこと、あたしはその覚悟を改めて決めなければならない。

今回からお仕事開始...と思いましたがまずは情報収集。

それまでアーシスは待機です。


★次話は11/20投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ