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修羅の舞う夜に  作者: Lyrical Sherry
第三章 初任務編
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第四十六話 ―任命式もガーナと一緒―

第四十六話目です。


今回はアーシスの任命式、ようやく"修羅"の一員となります。

 三日後、今日はあたしの任命式の日なので城に来ていて、今は式の前で待合室――というのだろうか――にいる。

 因みにチアーラさん、モルガナ姉ちゃん、カイナート兄ちゃん、ブラッドのおっちゃんも一緒にいる。


「はぇ~、皆の装備すごいね……チアーラさんそれ動きづらくないの?」

「見た目はこんな感じだけど、むしろ動きやすいわよ」


 そういうチアーラさんは、真っ黒のドレスに肩から肘までの小さいマント、ケープって言うんだっけ?――のようなものを羽織っている。

 靴もヒールだし、これで動きやすいとは体幹お化けなのか、そういう造りなのか――多分どっちもだろうなぁ。

 でも、身体のラインがでるようなシンプルなもので、スカート部分は右側に切り込みが入っていて、そのスリットから除く太腿のベルトには、短剣を挿す鞘がついている――もちろん、今は鞘を納めるベルトだけだけど。


「姉ちゃんはスカートなんだ……恰好良いっていうより、可愛い?

あ、でも籠手があるんだね」

「自分は長いズボンよりこっちの方が楽なんスよね~。

あと、自分の籠手は守るっていうより、武器を扱いやすくするための物っスね」


 そう言う姉ちゃんは、袖なしのシャツと短いスカートが主な――見た感じ下に短いパンツもはいてるっぽい。

 後は膝上くらいまでの丈でフードがついたマントを羽織っている。

 そして、肘から先を覆う籠手――一見普通の籠手だが掌と手の甲には籠手とは違う金属の板がはめ込まれている。

 姉ちゃんの武器は円月輪という大きい鉄の輪で、籠手の金属の板はこれを扱いやすくするためのものらしい。

 実際に姉ちゃんがその武器を扱っているところは見たことが無いので、どう使うかは正直分からない――というか姉ちゃん曰く「戦闘はあんま得意じゃないんスよ、なんでこれを使わない方が良いんスよ」ということらしい。


「で、おっちゃんはなんか、おっちゃんって感じだね」

「なんだそりゃ……」


 筋肉が浮き出る程に全身ぴっちりとした服を着ている――その上に脚鎧・手甲がつけて、肩からは短いマントのような物をかけている。

 おっちゃんの武器である逆刃の両剣はあたしの棍と同じような造りで、普段は二分割して背中の鞘に挿しているらしい――今は城の中なので外しているけど。

 筋肉が主張されているような印象で、脳筋のおっちゃんらしい。

 うーん、あたしはあんまリ筋肉が目立たないから、おっちゃんみたいにぱっと見でわかる筋肉が羨ましい――姉ちゃんとチアーラさんが全力で止めてくるから言わないけど。


「みんなの中だと、兄ちゃんのが一番動きやすそうだね。

あと手甲も、姉ちゃんのより簡単な造りっぽいけど」

「僕は体術中心だからね、動きやすくないといけないし。

手甲はモルガナちゃんとは違って僕は防御のためのものだね」


 兄ちゃんはシンプルなもので白いシャツと黒いズボンにブーツ――そして、その上から長い丈のコートを着ている。

 両手には手や指の甲のみを覆う手甲がつけられている――おそらく刃物を甲で弾くためのものらしい。

 そんな話をしていると――コンコン――とノックの音が聞こえた。


「皆様、まもなく任命式が始まりますので、ご準備のほど宜しくお願い致します」


 そう言ってきたのはお城の人だ。

 あたしたちはそれぞれ返事をして、その人に連れられて任命式を行う場所へ向かった。



 連れられてきたのは結構な広さのある部屋だった――広さや装飾などを見る限り式典用の会場といったところだろう。

 中にはローベルト様とクラウディア様にエリーゼ、その他にも数人しか人がいない。

 チアーラさんに聞いたところ、"修羅"の任命式に出席するのは限られた人のみで、簡単に言えば騎士団長や近衛騎士などを含めた、偉い人達しかいないとのことらしい。


「それじゃあ、しっかりね」

「うん、大丈夫だよ」


 入った後、チアーラさん達は並んで立っている偉い人に続いて並んだ。残ったあたしは、まだ閉じられた扉の前に立っている。

 チアーラさんにはああ言ったものの、国の偉い人達の視線が集まっていると思うと緊張してきた……。


「うっ、ガーナぁ……」

「もう、あなたなら大丈夫よ、チアーラからも色々教えてもらったんだし」

「うん……」


 耐えられずガーナに助けを求めてしまった。

 任命式自体は短いし、あたし自身が何かを話すと言うわけでもない。

 ガーナの言う通りチアーラさんから色々教えてもらったのだが、普通こんなに国の偉い人が集まっている場所に来ることはないのだから、誰だって緊張するでしょ。

 ガーナがいつものように尻尾で器用にあたしの頭を撫でてくれる――これだけでかなり落ち着く。


「アーシスよ、前へ」


 あたしは一度深呼吸をしてローベルト様の前まで歩いていき、跪いた。

 跪くのと同時に頭も下げる――上げて良しと言われるまで顔を上げてはいけない。

 ローベルト様もクラウディア様もあまり気にしない人ではあるが、式だし他の人もいるのでそういうわけにはいかないからね。


「面を上げよ」


 そう言われてあたしは顔を上げる。

 ローベルト様は以前お会いした時は人の良さそうな印象だったが、今は国王らしい威厳のある印象だ。

 クラウディア様も同じく威厳のある姿だ――エリーゼはずっとあたしを見て笑顔を浮かべてるけど……。


「アーシスを"修羅"の一員として任命する。

ついては"般若"の仮面と名を授ける」

「はっ!」

「また、"般若"の従魔ガーナにも修羅の一員として"白蛇(はくじゃ)"の名を授ける」

「有難く頂戴するわ」


 あたしは一度立ち上がり、ローベルト様から"般若"の仮面を受け取った――本で見たことがある物と異なり骸骨のような印象が強い。

 般若とはどこかの国で宗教に関するものだったと思う――確か「恨みを持った女の妖」だったか。

 ガーナの"白蛇"は、まぁ見た目通りかな――ガーナは蛇だから仮面はないし。


 それにしても「恨み」で思い出すのは母さんを殺されたときのことだ。

 今ではあの出来事を乗り越えて進むために頑張ってはいるが、恨みが無いわけでは無い。

 チアーラさんのことだからあたしの恨みを察してとかではなく、あの出来事から生まれたあたしの思いを忘れないように――怒りや恨み、憎しみに捕らわれないようにというところだろう。


(まぁ、見た目が怖いから"修羅"としての仮面の役割は問題なさそうだなぁ……)


「"般若"そして"白蛇"としてこの国の民を守るため我らが友を救うため、その力を振るうことを期待している」

「御意」


 受け取るために一度立ち上がったあたしは、再度跪いてローベルト様に頭を下げる。


「以上で任命式は終了だ。皆の者、ご苦労だった」


 これであたしの任命式は終わりだ。

 あたしの任命式を見ていた人たちは、「ちっこいのにすごいな、これから頼むぜ」とか「お噂はかねがね、これからよろしくお願いいたします」とかあたしに一言かけてその場を後にしていく。


「ふへぇ……緊張した……」

「お疲れ様、アーシス」

「ありがと、ガーナがいなかったら全部頭から消えてたところだったよ……」


 チアーラさん達やクラウディア様達を除く他の人達がいなくなったことを確認してあたしは一息ついた。


「では、アーシス様、皆さまこちらへどうぞ」


 いつの間にかこの場に来ていたお城の人にそう声をかけられた。

 ローベルト様たちは楽な服に着替えるらしいので、あとから来るらしい。

 あたしたちは先にその人に案内されて、いつもの部屋に移動した。

今話では他のメンバーの装備も簡単に出てきました。

かんたんにまとめると、チアーラ「妖艶」、モルガナ「可愛い」、カイナート「スマート」、ブラッド「豪快」みたいなイメージです。


ここでの般若は仏教用語よりも、能面の「憤怒」や「恨み」の部分が大きく影響を受けています。

アーシスが囚われているというより、「憤怒」や「恨み」という感情に飲まれないで欲しいという理由です。

またガーナの"白蛇"は、般若が進化した"真蛇"から。

ガーナは般若のサポート役ではありますが、心情としては保護者に近いものなので"般若"の先の状態の"真蛇"からとった形になります。


★次話は11/15投稿予定です。

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