第四十二話 ―ロザリア―
第四十二話目です。
ガーナの魔法を調べてから、あたしはガーナとひたすら訓練を続けていた。
あたしは少しずつ魔力操作が上達しているものの、前より細かく結界の強度を決められる程度で、生成済みの結界の大きさを変えたり、動かしたりすることはまだできない。魔力量も何とか少しずつだけど、増えてきている。
ガーナはすこしずつ調整できるようになってきてるらしい。
ガーナの視覚の共有はたまに発現して頭が痛くなることもあった。
チアーラさんは結構加減してくれるのだが、他の皆はチアーラさん程加減してくれない――あたしの実力も上がってるから、前よりも厳しいのは当たり前なんだけどね。
「っと、休憩終わり!
ガーナも――てあれ、チアーラさんどうしたの?」
「あら、今日は仕事で忙しいんじゃなかったかしら?」
さっきまで休憩していて、そろそろ訓練を再開しようと思ったところで、チアーラさんが訓練場に来ていた。
ガーナの言う通り、チアーラさんは今日は仕事があると言っていたのだが――ほかのみんなも仕事で出ているので今日はあたしとガーナだけで訓練をしていた――何かあったのだろうか?
「仕事の休憩がてら来ただけよ、あなた達に紹介しておきたい人がいてね」
「「紹介したい人?」」
そう言ったチアーラさんの方を見てみると、少し後ろにもう一人女性がいることに気づいた。
金色の髪に、鋭い目つき、服装はどこかの屋敷の使用人のような見た目だ――チアーラさんとの模擬戦の時に姉ちゃん達と一緒にいた人だ。
あたしが見ていると、その女性が前に出てきた。
「お初にお目にかかりますわ、アーシス様。
チアーラ様からお話は聞いております。
私は"狐"のまとめ役を担っております、"狐筆頭"ロザリアと申しますわ」
「"狐"って確か潜入とか諜報とかしてる人たちだよね、そのまとめ役?」
「そう、今後ロザリアや他の子たちと仕事をすることもあるだろうから、今のうちにと思ったのよ」
皆も国外で仕事をすることがあると言っていたし、あたしもそのうち国外で仕事をすることがあれば、助けてもらうことがあるかもしれない。
それなら確かにロザリアさんと今のうちに会った方が良いと言うのもわかる。
でもなんで使用人のような服装?それにチアーラさんも今日まで何も言わないし……
「私はまだ仕事があるから、あとは頼むわねロザリア」
「ええ、承りましたわ」
そう言うとチアーラさんは仕事をするために家に戻っていった。
もういいや、チアーラさんが急でろくに教えてくれないのはもう諦めた。いつものことだし。
この女性――ロザリアさんも慣れた様子だ。
「"狐"についてはチアーラ様から聞いているかと思いますが……
私の仕事の内容の含めて改めて説明させて頂きますわね」
「あ、うん。お願いします。
ガーナもちゃんと聞いててね?」
「分かってるわよ」
それからあたしとガーナは、ロザリアさんから"狐"や"狐筆頭"についての話を聞いた。
●
"狐"についての内容は次の通り
・他国への潜入・諜報
・戦闘については中級の魔物を単独で討伐可能な程度
・捕らえた者の尋問
・他国に潜入している人はラプラド王国に戻ることは殆どない。
"狐筆頭"であるロザリアさんについては次の通り
・"狐"からの報告をまとめて、チアーラさんに報告することが主な仕事。
・捕らえた者の尋問
・戦闘については上級の魔物までなら単独で討伐可能(あたしと同じくらい?)
教えてもらったのはこんなところ。
潜入中の"狐"が帰ってこないのは、ラプラド王国との関わりが露見しないように、ということだろう。
この国と関わりがあると知られると潜入っていうのが直ぐにバレるだろうし。
ロザリアさんは"狐"から報告を受けるのが仕事とのことだが、"狐"が帰ってこないのにどうやって報告を受けるんだろう?
「"狐"が戻ってこないってことは、ロザリアさんが各国に行って報告を受けてるってこと?」
「いえ、特殊な方法で報告を受けるので私自身が向かうことは殆どないんですのよ」
「へぇ~」
その特殊な方法の詳しいことは教えてもらえなかった――今後正式に部隊に入るとはいえ、まだ部外者であるあたしに教えるわけにはいかないんだろうね。
後はチアーラさんが口止めしてあたしを驚かせようとしている可能性もあるけど……
「そういえばさっき報告のまとめが主な仕事って言ってたけど、他の仕事もしてるの?」
「ええ、名持ちの皆様の補佐をすることも私の仕事ですの」
「そうなん――って名持ちってなに……?」
「ワタシも"狐"っていうのは、チアーラさから聞いたことはあるけど、名持ちっていうのは聞いたことないわね……」
あたしがそう聞くと、ロザリアさんはキョトンと目を丸くした。
なんで?
あ、これまたチアーラさんが教えてくれなかったやつだ……
"狐"のまとめ役ロザリア、新キャラ登場しましたわね。
今話では主に"狐"の説明回でした。
★次話は10/25投稿予定です。




