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修羅の舞う夜に  作者: Lyrical Sherry
第二章 試験編
38/103

第三十七話 ―姉ちゃん―

第三十七話目です。


今話は次話の最後の後に、家に戻った後の話です。

今回はモルガナ視点です。

今日はチアーラさんとアーちゃんの模擬戦があった。

その他とも色々あったけど、アーちゃんの『修羅』への所属が決定した。


(そりゃ自分だって嬉しいっスよ…アーちゃんが自分で考えたことっスし。

 でも最近そっけない態度をとっちゃってどう話せば良いか分かんないっス…!)


アーちゃんが『修羅』に入りたいと言ったあと、色々と心の整理が必要だった。

危険なことも人の命を奪うこともしてほしくない――でもアーちゃん自身が決めたことの応援もしたい。

そんな相反する思いが頭の中でぐるぐると巡っていた。


(うあぁぁ!――こんなのお姉ちゃん失格っス…!)


そんな風一人で悶えていると――コンコンッ――部屋の扉がノックされた。


『姉ちゃんあたしだけど、入って良い?』

「ちょっ、ちょっと待ってほしいっス!

 まだ心の準備が…!」

『入るよ』


待ってほしいと言ったのに、アーちゃんは無視して扉を開けて部屋に入ってくる。


「待ってって言ったんスけど…」

「待ってたら姉ちゃんいつまでも話してくんないじゃん」

「分かったっスよ――とりあえず、ベッドに座るっス」


アーちゃんの言葉に反論は出来なかった――未だに心の整理ができていないので、自分でもいつまでかかるか分からない。

諦めてアーちゃんを部屋のベッドに座らせて、自分も隣に座った。

しばしの気まずい沈黙の後、先に口を開いたのはアーちゃんだった。


「姉ちゃん怒ってる?あたしがみんなに話さずに決めたこと…」

「怒ってはいないっス!

 色々と自分の心の整理がついてなかっただけで…」

「そっか…なら良かった」


自分が怒っていないことを伝えると、アーちゃんは安心したように笑みをこぼした。

自分のせいで不安にさせてしまったのに。


「自分らの仕事は危険なんス。何度も聞いてるかもしんないっスけど、人を殺すことだってあるんス…

 だから、自分の我儘だってことは分かってたっスけど、アーちゃんに危ないことはさせたくなかったんス…」

「分かってる、危険な仕事ってことも――姉ちゃんがあたしの心配してくれてることも。

 だからあたしこそごめんね、姉ちゃんの気持ちも考えないで」

「アーちゃん…」

「あたしは姉ちゃん達みたいにいろんな人を守りたいって思ったの。

 でもそれだけじゃなくて――守られるだけじゃなくて姉ちゃん達の力になりたかった――大事な家族として」

「大事な家族っスか…」


家族という言葉を聞いて、チアーラさんの言葉を思い出した。

自分も皆のことは家族のように思っていたけれど、アーちゃんも同じように思っているとは知らなかった。


「あたしにとって母さんは、母さんだけってことは変わらない。

 けど、何年も一緒にいたんだから――あたしはみんなのことを家族だって思ってる――嫌だった?」

「そんな事無いっスよ――むしろアーちゃんもそう思ってくれてて嬉しいっス」

「あたしも――ってことは、姉ちゃんもあたしのこと家族だと思ってくれてるの?」

「そうっスよ――じゃなかったらこんなに可愛がらないっス!」


アーちゃんに自分の考えていたことを伝えて、アーちゃんの思っていることも聞けた。

そう思ったら気持ちがスッと楽になった。

気づいたらさっきまでの気まずさも忘れて、アーちゃんに抱き着いていた。


「ちょっと姉ちゃん、苦しいよ」

「あ、ごめんっス」

「大丈夫だよ――あたしも嫌なわけじゃないんだから。

 だから、お返し」


アーちゃんの声を聞いて、急いで離れた。

と思ったら、今度はアーちゃんから抱き着いてくれた――数年ぶりのアーちゃんは身体の成長はあまりなかったけど、数年前より幾分大きく感じた。


「ふふ、アーちゃん苦しいっスよ」

「嫌だった?」

「嫌じゃないっス」

「あ…」


そんなやり取りをしていると、アーちゃんは何かを思い出したかのような声を出した。


「姉ちゃん、チアーラさんとの模擬戦の最後の、見てくれた?」

「最後――あぁ、見てたっすよ!

 チアーラさんも本気じゃなかったとはいえ、上手く動けてたっスね」

「うん、姉ちゃんに教えてもらった戦い方だよ」


アーちゃんの言う最後のというのは――自分の武器をおとりにしてチアーラさんの不意を突いた動きのことだ。

何年か前に、アーちゃんに聞かれて自分が教えた戦い方だった。


「でも、まだ少し軸がブレてたっスよ。

 それにまだ動きに無駄があったっスよ、それがなくなればもっと早く動けるっス」

「やっぱりそっかぁ…」

「また時間のある時に訓練に付き合うっスよ」

「ありがと、姉ちゃん!」


アーちゃんと話したおかげで、ようやく気持ちの整理がついた。

これからはお姉ちゃんとして、アーちゃんを応援して、自分が守ろうと心に決めた。

モルガナがアーシスに対して口数がすくなかったのは心の整理がついていなかったからでした。

アーシスに自分の思いを話して、アーシスの思いを聞いてようやく整理がついたようです。

がんばってねお姉ちゃん!


★次話は10/01投稿予定です。

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