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修羅の舞う夜に  作者: Lyrical Sherry
第二章 試験編
37/103

第三十六話 ―姫殿下―

第三十六話目です。


アーシスがクラウディアに別室に連れていかれた後の話です。

一体誰に会うことになるのか。

医務室であたしの『修羅』入隊が認められ、あたしの装備についての話がまとまった。

皆が帰った後、あたしはクラウディア様に連れられて、とある部屋の前に来ていた。

その部屋はチアーラさんに連れられて、初めてクラウディア様と会った部屋だ。


「あの…?」

「ふふっ、まずは入って」


クラウディア様がそういうと、その部屋の扉が開いた。

いつの間にか傍に来ていた、お城の人が扉を開けてくれたようだ。


(え――もしかして、またそういう感じ…?)


なんとなくだけど、あたしは少し嫌な予感がした。

扉が開けられて、部屋の中に入ると――部屋の中の椅子には一人の女の子が座っていた。

クラウディア様と同じ色の軽いウェーブのかかった髪と瞳で、多分9歳くらいの少女だ。


「待たせてごめんなさいね、エリーゼ」

「大丈夫ですよ、お母さま!

 ――もしかしてそちらの方は…」


お母さま――目の前にいる少女はクラウディア様のことをそう呼んだ。


(やっぱりかぁ…)


何となく察していたが、この少女はクラウディア様の娘――つまりこの国の姫殿下だ。

予想してあんまりおかげで驚かなくて済んだ。

あたしも慣れたものだ。


「アーシスちゃん、この子は私の娘のエリーゼよ

 エリーゼ、この子は『修羅』への入隊が決まったアーシスちゃんよ」


クラウディア様があたしと姫殿下にそれぞれ紹介してくれた。

この方に紹介させてしまったことに少し申し訳なくなりながらも、あたしは姫殿下に向き直った。


「お初にお目にかかります殿下、あたしはアーシスと申します」

「初めましてアーシス様。

 私はローベルトとクラウディアの娘、エリーゼ・ランドブル・ラプラドと申しますわ」


正直あたしは敬語はあまり上手くない自覚があるんだけど、殿下は気にせず丁寧挨拶を返してくれた。

ローベルト様もクラウディア様もあまり気にしない人なので、そのお二人に似たのかもしれない。


「アーシス様、その左目の傷は…それに他にも…」

「昔怪我をしてしまっただけです」

「痛くはないのですか…?」

「昔のことですから、もう痛くはありませんよ」


クラウディア様もローベルト様も気にした様子はなかったから忘れていた。

姫殿下とはいえ相手はまだ子供なのだから、傷跡はまだ見慣れないらしい。

魔熊との戦闘で負った傷は仕方ないけど左目の傷跡は隠した方が良いかもしれないなぁ、一番ひどい傷だし、人との戦闘になれば直ぐ左目が見えていないこともバレそうだし…

っと傷についてはまた後で考えよう、それより少し暗い空気になってしまった――話を変えた方が良いかもしれない。


「それでクラウディア様――」

「――アーシス様、私のことはエリーゼとお呼びください!」

「分かりました、エリーゼ様」


クラウディア様になぜ姫殿下に会わせたのか聞こうとしたが、姫殿下にそんなことを言われた。

まぁ、クラウディア様もローベルト様も名前で呼んで良いという方だったので予想できていた。

おかげで特に焦ることもなく、エリーゼ様のことを呼ぶことができた。


「違います、エリーゼです!」

「え、だから、エリーゼ様と――」

「様はいりません!

 それと敬語もは必要ありません――お姉さま!」

「…!?!?」

「すごいわね…お姫様なんでしょ、この子…?」


これは予想してなかった――と言うか予想できるわけないだろ。

今まで散々驚くことはあったが、今までで一番驚いた――ガーナも滅茶苦茶驚いてるよ。

例のごとくあたしの思考は止まった。


「いえ、そういうわけには…」

「お願いします、お姉さま!」


(なんだこの状況…様も敬語も必要ないのは流石に駄目でしょ…

 しかも何でエリーゼ様から「お姉さま」なんて呼ばれてるんだろう…)


姫殿下のお願いとは言え、あたしが呼び捨てや敬語無しに話すわけにはいかないだろう。

あたしがどうしようか考えながら、クラウディア様を見ると――


「アーシスちゃんが嫌じゃなければ、この子のお願い聞いてあげて」

「え、あたしも嫌なことはないですけど――流石にまずいのでは…?

 エリーゼ様は姫殿下なんですから…」


エリーゼ様やクラウディア様が良くても、他の人達は良しとはしないだろう。


「それなら私とエリーゼ、ローベルトも問題ないわね――あとはチアーラ達しかいない時だけなら問題ないんじゃないかしら」

「まぁ、それなら…」

「あなたも大変ねぇ…」


ガーナは完全に他人事だった。

いや、あたしがエリーゼといるときはガーナも一緒にいるんだからね?

ガーナも他人事じゃなくなるからね?


「エリーゼも良いわね?

 私とアーシスちゃんとローベルト、チアーラたち『修羅』しかいないときは問題ないけれど――

 それ以外の人がいるときは我儘を言っては駄目よ?」

「分かりました!」


クラウディア様の出してくれた妥協案――と言えば良いのだろうか――でなんとか収まった。

そういうわけで、あたし、エリーゼ、クラウディア様、ローベルト様、チアーラさん達――だけの場合のみ、あたしはエリーゼに対しては敬語を使わず、エリーゼもあたしのことを『お姉さま』と呼んで良いと言うことになった。


「よろしくお願いします、お姉さま!」

「うん、よろしくエリーゼ」


自分でも驚くくらい直ぐに順応できた――あたしも驚き慣れてきたのだと思う。

こんなことに慣れて良いものかと思ってしまうが――まぁ無駄に困惑するよりは良いよね、良いと言うことにしておこう。


「――っとそうだ――ガーナ」

「はいはい」


あたしはガーナのこともエリーゼに紹介しようとガーナに声をかけた。

ガーナも「分かってるわよ」と言った感じで、あたしの首に巻き付いたまま顔をのぞかせる。


「お姉さま、その白い蛇さんは…?」

「紹介するね、この子はガーナ――従魔なんだけど…あたしの友達だよ

 仲良くしてあげて」


エリーゼは顔をのぞかせたガーナをキラキラした目で見ている。

ガーナは蛇だから怖がられないか少し不安だったけど、大丈夫そうだ。


「初めましてお姫様。

 ワタシはアーシスの従魔で友達のガーナよ、よろしくね」

「ガーナちゃんって言うんですね…!

 ガーナちゃん喋れるんですね、すごいです!」


喋る蛇なんてすごいどころではないのだが…

姫とは言えまだ子供――無邪気さゆえなのかもしれない。

今会ったばかりなのに、エリーゼはガーナと楽しそうに話をしている。

そんな二人を見ていると、クラウディア様があたしに向かって手招きしているのが見えた。


「エリーゼが無理言ってごめんなさいね、アーシスちゃん」

「いえ、大丈夫です。

 ――まあ、何であそこまで慕ってくれるのかは分からないですけど…」


あれだけ慕ってくれるのは嬉しいんだけど、如何せん理由がわからない。


「エリーゼはチアーラに憧れていてね――絵本の英雄に憧れるのと同じようなものかしら。

 ほら、チアーラってたくさんの人を守れる程に強くて――それに美人でしょう?」

「そうですね――でもその憧れってチアーラさんに対してであって、あたしは別なんじゃ…?」


話を聞いただけでも、チアーラさんに憧れるのは分かる。

ただ、あたしをこんなに慕ってくれるのはまた別の話でしょ。


「それがいつの間にか騎士達からあなたの話を聞いていたみたいで。

 あの『修羅』に鍛えられた、小さいのにすごい子がいるってね」

「あたしの話ですか…?」

「私もつい話して暇って、それに加えてチアーラとの模擬戦を見たものだから」

「そういうことでしたか

 驚きはしましたけど、あたしもこんな風に慕ってくれるのは嬉しいですから」

「それなら良かったわ」


多分あたしが聞いたような話をエリーゼも聞いていたらしい。

クラウディア様がなんであたしの話をエリーゼにしたのかは分からないけど、まぁいいや。

大方、その話を聞いたことで気になって――模擬戦を見たことで、あたしにも同じよな気持ちが芽生えたといったところかなぁ。

というか、この国の騎士達大丈夫なんだろうか…


「そのうちエリーゼについてのことで『修羅』としての仕事もお願いすると思うわ」

「仕事ですか?」

「ええ、今はまだ詳細が決まってないから話せないけれど、決まったらチアーラから話をするわね」

「分かりました」


おそらく護衛とかだと思う――流石にエリーゼを鍛えろとかは無いだろうし。

そんな仕事の話をした後は、再びエリーゼと話して過ごした。

驚きはしたものの、とても素直で良い子だった――流石は姫殿下と言ったところか。

さて国王に続き、連続で今度はお姫様に会いました。

なかなか強烈な子でしたね、本当にお姫様か...?


エリーゼに会って、アーシスは初めて左目の怪我について聞かれました。

クラウディアもローベルトもチアーラから聞いて知っていたので特に聞かなかったのですが、エリーゼはそうではなかったようです。


また、エリーゼはガーナのことも怖がったりしませんでした。

子供ってたまにすごいですからね...


最後にはクラウディアから簡単にですが仕事の話をされました。

エリーゼ関連なのでなにかしらの護衛かな?と予想しているアーシスでした。


★次話は09/25投稿予定です。

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