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修羅の舞う夜に  作者: Lyrical Sherry
第二章 試験編
34/103

第三十三話 ―決着―

第三十三話目です。


タイトルから察せられると思いますが、ようやく決着がつきます。

地味に長かった...

棍と一本の短剣によるフェイクにチアーラさんは上手くかかってくれた。

一瞬チアーラさんの意識をあたしから外すことに成功したあたしは、乗っていた結界から飛びおりた。


「上ね…!」


流石はチアーラさん、フェイクだと気づいた瞬間にあたしの位置に気づいたようだ。

しかし、あたしは既に次の行動を始めている――チアーラさんに一撃入れるための行動を。


「惜しかったわね」

「まだ終わってないよ――【結界・強】…!」


結界から降りてくるあたしに向けて、チアーラさんは旋棍を振り上げてくる。

その攻撃の先に【結界・強】を生成する。

結界に当たって威力の落ちた攻撃を、あたしは右手で持った短剣で逸らす。


(今ので魔力が空っぽ――これで決めなきゃいよいよ終わりだなぁ…)


「うぉっ!」


チアーラさんの攻撃の威力を逃がしきれず、逸らした短剣は弾き飛ばされてしまう。

流石に【強】の強度とはいえ、結界ひとつでは攻撃の威力を落としきれなかった。


「もう武器が無いようだけど?」

「いや、ちゃんとあるよ…!」


あたしは結界から降りながら、宙に浮いた棍を掴み取る。

棍は地面に挿していたのだが、この棍に巻き付けた鉄糸は、チアーラさんが先ほど弾いた短剣につながっている。

チアーラさんが短剣を弾いた衝撃で、棍が引っ張られ――ちょうどあたしの降りる場所に浮かび上がっていた。


「それも計算の内かしら?」

「そうかも…ね!」


あたしは鉄糸の巻き付いている側を下にして、チアーラさんに思いっきり振り下ろした。

しかしチアーラさんがクロスさせた旋棍に、あたしの棍は受け止められた。


「まだまだ…!」


あたしが棍を振り下ろした勢いで、チアーラさんに弾き飛ばされた短剣が戻ってくる。

着地しながら、戻ってきた短剣を掴み取る。


「頑張ったみたいだけど、甘いわよ!」


チアーラさんが受け止めたあたしの棍を弾き飛ばそうとしているのが見えた。

あたしは棍から手を離し、掴み取った短剣をチアーラさんの左脚に向けて投げる。


(でもこれはチアーラさんの脚に当てるためじゃない…!)


チアーラさんの左脚に、鉄糸を巻き付けるためだ。

そして、チアーラさんはあたしが手を離した棍をあたしの後方に吹き飛ばす。

――と同時に、チアーラさんの左足に鉄糸が巻き付いた。


「――えっ…?」


チアーラさんはすぐに、あたしに反撃してこようとするが――

左足を何かに引っ張られたように体勢を崩し、反撃をすることができなかった。

棍とチアーラさんの左脚に巻き付けた鉄糸のせいだ。


「よく考えたわね…!」


今の隙に――


(――っまた痛みが…!

 ここを逃したらもう後はない――もう少し――あと少し…!!)


頭の痛みがさらに強くなって、一瞬意識が飛びそうになってしまった。

しかしこのチャンスを逃せばもう後は無い。

あたしは気力だけで、頭が割れそうな程の痛みを我慢してチアーラさんに接近する。


「武器を持っていないのにどうするつも――」

「あたしが兄ちゃんから体術も学んでるの忘れたの?

――はっ!」


あたしはチアーラさんの胸部に向けて左手で掌底を打ち出した。

ガンッ!――と音がしたと思うと、あたしの掌底はチアーラさんの右手の旋棍によって防がれていた。


「チアーラさんなら受け止めると思ってたよ!」


受け止められることは予想していた。

あたしはさらに一歩踏み込み、逆にチアーラさんの右の手首をつかんだ。


「まさか…」


チアーラさんも、あたしが何をしようとしているか察したようだ。

あたしは掴んだチアーラさんの右手を引き寄せながら、右手でチアーラさんの胸倉をつかむ。

そして、左足を軸にして――


「せぇぇぇい!!!!」


チアーラさんを背負うようにして持ち上げ、地面に向かって投げる。

兄ちゃんに教えてもらった、背負い投げという体術だ。


「そう簡単には――」


そう言いながら、チアーラさんは足から着地しようとしていた。

もし足から着地されれば、反撃を受けてあたしの負けになるだろう。

だから、着地なんてさせない。


「いや――」


チアーラさんの左脚にはまだ鉄糸が巻き付いていて、棍にも同様にまだ鉄糸が巻き付いている。

そしてあたしがチアーラさんを投げたのは、チアーラさんによって棍が吹き飛ばされた方向。

これによって、鉄糸はあたしの右足の近くを通って半円を描くような形になっている。


「これで終わりだよ…!」


左脚の軸がブレないよう――背負い投げで浮いた右足を使って鉄糸を絡めとる。

そしてチアーラさんが地面に近づくにつれ、あたしとチアーラさんの間の鉄糸の緩みは無くなっていく。

あたしがチアーラさんを投げ切る頃には鉄糸の緩みはなくなり――むしろチアーラさんの脚が引っ張られている状態になっていた。


「くっ…!」


流石のチアーラさんも片足だけで、背負い投げの勢いと体重を支えることはできなかったようだ。

チアーラさんは、背中から地面に衝突した。


「――ぐぅっ…!」

「アーシス!?ちょっと!!」


チアーラさんを投げ切った瞬間、頭の痛みがさらに強くなった。

ガーナもあたしが相当頭が痛いことを察したのか、焦っているように見える。

正直もう意識が飛びそうだった。


(まだ…終わってない…!)


チアーラさんは模擬戦を始める前「殺す気で来なさい」と言っていた。

初めに考えたように、あたしが人を殺す覚悟があるのかも見るため――


「まだ…あと少し…!」

「無理するんじゃないわよ!!」


激しい痛みに耐えながら、チアーラさんの脚に巻き付いていた鉄糸から短剣を取った。

ガーナも取り乱すほどに焦っているけど、最後までやらなければならない。


(――またっ…!?)


チアーラさんに近づいていく度に、夢で見たときと同じように殺されていく村の人達や母さんの表情が頭に浮かんでくる。

それでも、チアーラさんにあたしの覚悟は変わらない。

躊躇ってあの夢のような結果を招くわけにはいかないんだから。


「これで…あたしの、勝ち…?」


あたしは地面に倒れているチアーラさんにまたがって――首元に短剣を突き付ける。

するとチアーラさんはあたしに向けて笑顔で――


「よく頑張ったわね…合格よ」


そう言った。


(チアーラさんの笑顔…久しぶりにみた気がする…)


流石に無理に痛みを我慢した反動だろうか、それとも魔力を使い切ったからだろうか。

ガーナとチアーラさんが何か言っているけど、あたしはもう頭が回らなかった。

そしてあたしは――そのまま意識を失った。

ようやくアーシスとチアーラの模擬戦に決着がついたぞぉぉぉぉ!!!


棍・短剣・体術でようやくチアーラに勝ちました。

最初一撃入れろって話だと思ってたんだけど...あれ、なんで勝っちゃた...?

まぁ、何はともあれ、アーシスは二つ目の試験も合格しました!


でもあんま無茶なことしないでくれ...こっちが大変なんだよぉぉぉ!!!!!

...もしかしてこれからもこんな無茶なことする?

え、やめて?切実にやめて?


★次話は09/10投稿予定です。

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