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修羅の舞う夜に  作者: Lyrical Sherry
第二章 試験編
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第二十五話 ―従魔契約―

第二十五話目です。


カイナートとブラッドにガーナについてと浮き出た紋様についてのお話を聞く話です。

まずは二人を落ち着かせたあたしは、ガーナについて話した。

ガーナと出会った経緯から、魔熊との戦闘、あたしの過去について話したことまで全部。

話が終わったガーナは、一気に二人と話したことで疲れたのか、今はまたあたしの首に巻き付いて寝ている。


「ってわけで、ガーナも一緒と一緒に帰って来たんだけど――駄目だった…?」


カイナート兄ちゃんとブラッドのおっちゃんの表情は、難しいものになっていた。

ガーナは魔物だろうが、言葉も通じるし危ない存在ではないと思うのだが、二人の表情を見て不安になってしまった。


「おめぇにも懐いてるようだし、駄目とは言わねぇが…」

「ちょっとびっくりして、ごめんね」


二人ともガーナが人の言葉を話せることにびっくりしただけだったんだね。

駄目だと言われなかっただけでも安心だ。


「ガーナは魔物だと思ったんだけど、あたしは人の言葉を話す魔物なんて聞いたことないし。

 二人ならなんか知ってるかなって思ったんだけど…」

「あぁ、俺もそいつは魔物だろうとは思うが…俺ぁそこらへんはあんま詳しくねえからなぁ

カイナートおめぇはどうだ?」

「一応聞いた…というか、昔何かで見たことがあったような…

 アーシスちゃん、ガーナちゃんちょっと待ってて」


そう言うと、兄ちゃんは家の方に向かっていった。

しばらくして戻ってきた兄ちゃんは、一冊の本を持っていた。

あたし達のもとに戻ってくると本を開いて何かを探し始めた。


「えっと…あった――多分これだね」

「なんだこれ?」

「伝説級…?」


カイナート兄ちゃんが持ってきた本は魔物に関する本だった――あたしは初めて見るなぁ。

兄ちゃんの見せてきたページには『伝説級』という、聞いたことがない魔物の階級が記されていた。


「魔物の階級は本来、下級から極級までの5つなんだけど…

実はその階級には含まれない『伝説級』っていう階級があるんだよ」

「その『伝説級』がガーナに関係あるの?

 なんか、伝説になるくらいヤバい魔物って感じなんだけど…」


『伝説級』という名前だけ聞くと、相当危険な魔物か、何かの宗教で信仰されていた魔物という印象があるんだけど。

しかしガーナは言葉を話す以外は正直ただの蛇だと思うので、そんな仰々しいものとは違うと思うんだよね。

いや、言葉を話すというだけでも相当だと言うのは分かってるけど。


「そんな仰々しいものじゃないよ」

「そうなの?」


兄ちゃん曰く、あたしが考えている者とは違うようだ。


「『伝説級』の魔物は強さや凶暴さもバラバラなんだけど、共通点があるんだよ」

「「共通点?」」


あたしとおっちゃんの疑問の声が被った。

あたしはおっちゃんから魔物との戦い方を教わったから、魔物についても色々知っているのかと思っていたのだが、純粋な知識に関してはまた別だったみたいだ。


「言葉を話すこと」

「ガーナじゃん!」

「そうだね」


ただ、人の言葉を話せる以外は共通点が無いらしいので確証はないらしいけどね。

ただ、その『伝説級』と知られなくても、ガーナが人の言葉を話せることを知られると騒ぎに――

それこそ、森の中でガーナに話したように、ガーナを狙う者も現れるかもしれない。

あまり、人前では話さないようにさせた方が良いかも…


(まぁあたしはあんまり街の方にはいかないし。

 知り合いって言ったら家の皆かお城の人達くらいだからあんまり気にしなくてもいいか)


「それと『伝説級』の魔物は魔法を使う魔物もいたらしいけど….」

「ガーナはあたしが教えるまで知らなかったよ」

「そこは追々確認してみても良いかもね。

 それにあくまでそういう記録があるってだけだし」

「それもそうだね」


以前おっちゃんから聞いた話では仮に極級であっても魔法は使えない。

仮に人の言葉を話せるとしても、あくまで魔物だから魔法が使えない可能性の方が高いとは思う。

覚えていたら確認するのもありだとは思うけど。


「にしても上級の魔熊をかぁ…

 おめぇには早いとは思ってたんだがなぁ」


ガーナについての話がひと段落したところでおっちゃんが魔熊についての話を始めた。


「ガーナがいなかったら倒せなかったよ」

「ああ、こいつ――ガーナがおめぇの死角を見てくれたんだったな。

 だがおめぇ、その傷じゃ跡が残るぞ」

「あー、やっぱり?」

「傷が深くねぇ分、もう治り始めちまってるからな、その状態で治癒魔法を使っても傷跡は残るだろうよ。

 …ったく、無茶しやがって」


そう言いながらおっちゃんはあたしの頭をガシガシと撫でてくる。チアーラさんとか兄ちゃんみたいな優しい撫で方も好きだけど、おっちゃんのこの撫で方も嫌いじゃないんだよね。

それはそうと、今のあたしは魔熊との戦闘でついた傷が残っている。

顔も含め体のいたるところ――顔、腕、脚、お腹、背中、本当に全身――に切り傷が残っている。

思ってた通り傷は消えないらしい。


「別に気にしてないし、いいよ」

「はぁ…おめぇが良いんなら良いけどよ」


痛くないって言ったら嘘になるけど、治れば何かに不自由がある訳じゃないしね。

何よりガーナと出会ったのと、初めてあたしが自分で守れたことの証みたいなものなので、むしろ残ってた方が良い。

油断しないように戒めみたいなものにもなるしね。


「ちなみにこのこと、チアーラさんとモルガナちゃんには――」

「言ってないよ。

 話そうとしてもどうせまともに聞いてくれないだろうし」

「「確かに…」」


兄ちゃんもおっちゃんもあたしが言った意味を理解したようだ。

そこであたしはあることを思い出した。


「それより、二人に聞きたいことがあるんだけど!」

「「聞きたいこと?」」

「これ!」

「んだこれ?」

「あぁ、なるほど」


あたしは二人に右手の甲に浮き出た紋様を見せた。

おっちゃんは分からなそうなだが、兄ちゃんは思い当たることがあるようだ。

やっぱおっちゃん、戦闘が関わらない純粋な知識はあんまリ無いっぽい...


「これは従魔契約の紋様だよ」

「従魔契約?」


また知らない言葉が出てきた…

兄ちゃんは持っていたほんのページをパラパラとめくって、こちらに見せてくる。


「従魔契約っていうのは、お互いに認め合ったヒト種と魔物が結ぶ契約だよ。

 ヒト種が魔物に名前を付けて、魔物がそれを認めると成立するんだ」

「あー、なるほど…」


思い当たる節がありまくる。

会ったばかりだったけどガーナには気を許していたのは自覚している。

ガーナも同じような感じだったし、一緒に来ることも名前が欲しいと言うこともガーナから言ってきたことだ。

でも実際にそれだけあたしが認めるというか信頼していたのも、信頼されていたのも少し気恥ずかしい。

あの時ガーナとのつながりを感じたり、安心感が強くなったのは従魔契約が理由だったのかもしれない。


「そういえば、ガーナちゃんの名前は何か由来があるのかい?」

「うぇっ?」


兄ちゃんにそれを聞かれて変な声が出てしまった。

別に隠すようなことでも、言いたくないわけでもない――ないんだけど、少し恥ずかしい。


「ガーネットからとったの…」


あたしがそういうと兄ちゃんは優しい笑顔を向けてくれた。

おっちゃんは意味は分かっていないようで頭に?を浮かべているが、兄ちゃんは何となく察したようだ。


「友達ができて良かったね」

「…うん」


前言撤回。なんとなくどころか、兄ちゃんは完璧に分かってた。

あたしは恥ずかしくなりながら、ただ兄ちゃんに撫でられるだけだった。

無意識にガーナと従魔契約を結んでいたようです。


魔熊との戦闘で負ったアーシスの傷は消えないそうです。

治癒魔法だと傷跡も治るらしいですが、治りかけでは傷跡まで消すことはできないようです。

なんでなんやろなぁ...?


カイナートはアーシスが「ガーネット」と言っただけでガーナと名付けた理由を理解したようです。

兄ちゃんすげぇな。

因みにアーシスは友達がいません。

この家に来た頃は怖くて外に出たり人とかかわることが怖く、訓練を始めてからはずっと訓練をしていて街に出ることも無いので友達になるような人とかかわることが無かったという感じです。

アーシスや街の人に何か問題がある訳ではないです。


★次話は08/01投稿予定です。

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