第二十四話 ―友愛―
第二十四話目です。
というわけで前話からの続き、白蛇さんの名前を決めます。
この話を書きたかったーーーーー!!!!!
白蛇の名前を考えるにあたって、あたしは彼女の姿をもう一度良く見てみる。
彼女は全身があたしの髪と同じ真っ白で、瞳の色もあたしと同じ赤色だ――あたしの肌は白じゃなくて褐色だけどそれはいいや。
あたしの目は自分じゃあんまり気にしたことがないから分からないけど、彼女の目は綺麗で宝石みたいだった。
「そうだ!」
「決まったかしら?」
「うん、『ガーナ』はどう?」
「『ガーナ』?」
本でしか見たことはないが、世の中にはガーネットという赤い宝石がある。
「ガーネットっていう宝石があるんだけど、あなたの目と同じで綺麗な赤色なの」
「そんなものがあるのね…」
「それだけじゃないよ?」
宝石には花と同じように、宝石言葉というものがある。
いくつかあるのだが、ガーネットの宝石言葉には――
「宝石には宝石言葉ってものがあって、ガーネットの宝石言葉の中に『友愛』ってのがあるの」
「『友愛』?」
「うん、だから…
その、ご主人様とかじゃなくて、友達として、一緒にいてほしいなぁって思って…」
言っててだんだん恥ずかしくなってきた…
「それでそのガーネットっていう宝石からとって、『ガーナ』ということね?」
「う、うん、どうかな…?」
「友愛…友達ね…いいじゃない気に入ったわ!」
少し恥ずかしいけど、気に入ってくれてよかった…
「じゃあ、改めてよろしくねガーナ」
「ええ、よろしくアーシス」
あたしとガーナは笑いあった。
チアーラさんに助けられてから笑うことはあった。
けれど今日は、色々と心が軽くなって心の底から笑えてるのが、自分でもわかった。
「え、うぇぇ!?」
「え、な、なに!?」
二人で笑っていると突然、あたしの右手の甲とガーナのお腹のあたりが光りだした。
訳もわからず、あたしたちはその光が収まるのを待つことしかできなかった。
あたしとガーナから突然発された光はものの数秒で収まった。
「なにこれ?」
光が発せられていた右手の甲を見てみると、六角形の盾のようなものに蛇が巻き付いているような、慣れない紋様があった。
特に痛みや身体に違和感はない。
ガーナを見てみると、彼女のお腹にも同じ紋様が浮き出ている。
「ガーナ大丈夫?」
「大丈夫よ。
ただ――なんだかつながってる感じがするわ…」
ガーナに言われてあたしも気づいた、なんだかガーナを近くに感じる。
首に巻き付いているから近いのはそうなのだが、そういうことではない。
なんというか、そんな感じがするというだけで、上手く言葉では表せない。
(なんだろう、心がつながってるって言うのかな――なんだか暖かい感じがする…)
ガーナを見てみるが、あたしと同じようなことを思っているようだ。
ガーナは蛇なのだが、やっぱり感情とか結構分かりやすい。
「うーん、別に痛いわけでも違和感がある訳でもないし、戻ったら色々聞いてみよっか」
「聞くって、あなたがお世話になってる家の人?」
「うん、 戦い方とか怪我の手当ての仕方とか、全部皆に教えてもらったんだよね。
明日の昼には森を出るけど、なんか違和感感じたらすぐに言ってね」
「わかってるわよ。
あなたもちゃんと言いなさいよ?」
「うん」
これに関しては今考えてもわからないからね。
明日の昼には森を出て帰るので、帰ったら聞いてみようと思う。
多分チアーラさんやモルガナ姉ちゃんはあんま話してくれないかもしれないけど、兄ちゃんとかおっちゃんなら今まで通りにしてくれるし、二人に聞いてみよう。
「じゃあ、今日はもう休もっか。
結界も張ってるから安心して休んでていいよ」
「結界?――そういえばあなた、あいつと戦った時も何か使ってたわよね?」
ガーナが不思議そうな顔をしている。
ああそうか、人の言葉を話せるとは言えガーナは元々ただの蛇だ。
魔法のことは知らないのか。
あたしはガーナに魔法や魔力、この世界の常識について色々話しながらゆっくり休むのだった。
次の日、十分に休んで回復したあたしは、ガーナと共に森の外へ出た。
一週間とはいえずっと森の中にいたので、森の外に出たときは日の光がまぶしかった。
とりあえず、家に戻ってチアーラさんや皆に報告をしよう。
●
一週間ぶりに家に帰ってきたが、特に変わった様子はない――まあ当たり前だが。
因みにガーナはあたしの首に巻き付いているのだが、日の光がまぶしいらしく顔を隠している。
あたしは深呼吸をして居間に入ると、チアーラさんが待っていた。
「ただいま」
「おかえり、アーシス…」
あたしを見たチアーラさんはほんの少し険しそうな表情をしたように見えた。
直ぐに堅い表情に戻ったので、あたしの気のせいかもしれない――
「一週間生き抜いたよ、試験は合格?」
「そうね…合格よ」
「良かった」
今のチアーラさんは口数が少なく、最低限のことしか話さない。
原因があたしなのは分かりきっているので、あたしも最低限のことしか話さないようにしている。
「もう一つの試験は?」
「3日後に行うわ。
それまではゆっくり休んで、3日後のお昼に城の訓練場に来なさい」
「…わかった」
なぜ城の訓練場に行くのか疑問はあるが、聞いても多分教えてもらえない。
これは今のあたしとチアーラさんの状態のせいではなく、基本的にこの人は予め教えてくれない人からだ。
流石に9年も一緒にいればそのくらいのことは分かる。
「兄ちゃんとおっちゃんは?」
「訓練場にいるわ」
「わかった」
もう一つの試験について聞いたあたしは、二人の居場所を聞いた。
ガーナについて話すのと、あたしたちに浮き出た紋様について聞くためだ。
あたしは席を立ち、居間を後にした。
●
訓練場に来ると、カイナート兄ちゃんとブラッドのおっちゃんが模擬戦を行っていた。
模擬戦をしていた二人だが、あたしが訓練場に来たことに気づいたようで、模擬戦を中断してこちらに歩いてくる。
「兄ちゃん、おっちゃんただいま」
「おかえりアーシスちゃん」
「おう、生きてるみてぇだな」
兄ちゃんはいつもの優しい笑顔で迎えてくれた。
おっちゃんに関しては意味が解らん、死んでたら帰ってこないって。
とはいえおっちゃんも笑顔で迎えてくれた。
チアーラさんとモルガナ姉ちゃんがあんな状態だから、いつも通りの二人が安心するなぁ。
「帰ってきたのは良かったけど、その傷…」
「あー、ちょっとね。
それで、兄ちゃんとおっちゃんに話したいことと、聞きたいことあるんだけど、今大丈夫?」
魔熊との戦闘で負った傷は血は止まったし手当てもしたが、残ったままだ。
今はごまかしたが、ガーナのことを話す時に魔熊との戦闘やこの傷のことも話すことになるだろうなぁ。
「僕は大丈夫だよ」
「おっちゃんは?」
「俺がなんか教えられるとは思わねぇが、問題ねぇぞ」
二人とも訓練中なのに快く承諾してくれた。
ていうかおっちゃんは雑っちゃ雑だけど、結構色々知ってるじゃん、何言っているんだか。
「ありがと。
ガーナ、そろそろ大丈夫?」
「いつの間にかあなたの家についてたのね、もう大丈夫よ」
「良かった」
あたしはまずガーナのことを話すつもりなので、ガーナに起きてもらった。
森から出た時は目がチカチカすると言っていたが、もう慣れたようでよかった。
「うん?」
ガーナのことを話そうと思って二人に向き直ったのだが、二人とも唖然としていた。
あたしが白蛇を連れて帰ってきたからかな。
(んなわけないか、ガーナが人の言葉を話してるからだよね…)
二人は直ぐに我に返ったのだが、質問攻めにされてしまった。
あたしは何とか二人を落ち着かせて、話を始めるのだった。
チアーラに報告をして、一つ目の試験は合格を貰いました。
チアーラは自分の中で色々整理しているので、口数が少なくなっている感じです。
二つ目の試験は3日後に城の訓練場で行うようですが、何をするのでしょうか。
騎士相手に対集団戦とかでしょうか。
ともかくまずはカイナートとブラッドにガーナのことを話し、光について聞くことが先!
ということで話そうと思ったら二人とも唖然からの質問攻め。
そらそうなるわ。
★次話は07/25投稿予定です。




