第一話
Lyrical Sherryと申します。
文章作成の練習もかねて趣味全開で描いたものです。
悪いことほど覚えているもので、嫌なことほど夢に見るものだ。
特に幼い頃の絶望など一生忘れることはできない。
●
ここはラプラド王国郊外の村。いわゆる田舎というやつだ。
みんな畑仕事をしたり家畜の世話をしたりしている。あたしは今は休憩中で、家の庭で日向ぼっこ中。
「アーシス、休憩は終わりよー」
「はぁーい」
この声はあたしの母さんの声。
うちは母さんが花や薬草などの世話をしていて、あたしもその世話を手伝っている。
母さんと一緒に話をしたり、花や薬草について色々教えてもらえるから、この時間が好きだ。
「アーシスはお水あげてくれる?お母さんは肥料とってくるから」
母さんが肥料を取りに行って、あたしは水やりを始める。
特に詳しいわけじゃないけどある程度は花の名前は覚えている。
(今の時期の花はアリッサム、スカビオサ、スミレ、スイセン…)
(薬草だとオウレン、イカリソウ、タンポポ…)
花も薬草も季節ごとに育てるものが変わってきて色合いが変わるので見ているだけでも楽しい。
薬草の効能は10歳になったら教えてもらえる。今は8歳だから後2年かな。
世話をしていると、真っ白で微かに光を帯びている花に気が付いた。
「そういえばこれなんて花だっけ…?」
とてもきれいな花で、見覚えはあるのだが名前が思い出せない
「母さんが戻ってきたら聞いてみよ」
●
「キャァァァァァァァァ!!!」
それからも母さんが戻ってくるまで世話を続けていると突然悲鳴が響いた。
悲鳴が聞こえた瞬間、村の人たちとは違う知らない男たちの怒声も聞こえてきた。
(どうしたんだろ…)
何があったのか気になって見に行こうとする。
「アーシス!こっちに来なさい!急いで!」
息を切らして顔を青くした母さんがあたしの手を引いて家の中に連れていかれる。
「母さんどうしたの…?」
「いい?絶対に音を立てては駄目よ。静かにここに隠れていなさい。」
母さんに何があったのか聞こうとしたが、口を押えられて話すことができない。
近くの窓から外の様子を見てみると、悲惨な状態だけが見えた。
男たちに次々と殺されていく村人、そしてところどころから上がっている火。
何が起きているのか、子供ながらに理解できた。何者かが村を襲っているのだろう。
だから母さんもここに隠れているように言ったのだ。
ガチャッ
物陰に隠れているので見えないが、家の扉が開けられた音がした。
村を襲った男たちが入ってきたのだろう。
「一人も逃すな。全員殺せ」
「この家は俺が見ておくからお前は別の家を見てこい」
家の中に入ってきたのは一人の男、見つかれば殺されてしまう。
しばらく息をひそめていると、足音が遠のいていく。
「ふぅ…」
「あ?そこだなぁ?」
安心して少し声が漏れてしまい、男に気づかれてしまった。
隠れていた物が蹴り飛ばされて男に見つかってしまった。
「アーシス逃げなさい!」
そう言いながら母さんが男につかみかかった。
(母さん…でも、母さんが…)
母さんをおいて逃げるなんてできない…
「何をしているの!はなく逃げなさい!!」
母さんの声で我に返り立ち上がろうとしたが、脚に力が入らない。恐怖で腰が抜けてしまった。
「くそっ!邪魔だ!」
「あっ!」
男は手に持った剣を振り下ろし、母さんの体を貫き、母さんはその場に倒れてしまった。
見えるのは倒れた母さんと血だまりだけ…
「――るな…」
先ほどまで腰が抜けていたのに、気づいたら体が動き出していた。
近くに落ちていたナイフを拾って男に心臓に突き刺した。
「母さんに触るな!くそ!くそっ!!くそっ!!!」
男が既に絶命しているのも気づかずナイフを突き刺す。何度も何度も何度も…
「おい何やってんだうるせぇぞ。住人がいんならさっさと殺――何してやがんだこのクソガキ!!」
「うぐっ…!」
別の男がやってきたのに気づかず、その男に蹴り飛ばされてしまった。
蹴られたお腹と、飛ばされた拍子にぶつけた左目に痛みが走る。
(痛い…痛い…怖い…痛い…怖い…怖い…怖い….)
痛みと恐怖にうずくまっているうちに男の足音がこちらに近づいてくる。
足音が止まったことに気づき、そちらを向くと、男は手に持った剣を振り上げているところだった。
バチバチッ
「ぐおっ!?」
電気のような男が聞こえたと思った瞬間、目の前にいた男はその場からいなくなっていた。
代わりにそおの場所には金色の髪をなびかせ、仮面をつけた女性が立っていた。
「安心して。もう大丈夫よ。」
透き通るような優しい声。
「母さん…」
その声を聴いてあたしは気を失った。
月に2~3更新を予定しています。
2話以降は少し時間が空くかもしれません。