第9章狙い
警察へ取り押さえられた後俺はまた病室にいた。
「全く君はどんだけ無茶をすれば気が済むんだ。俺だってそんな万能じゃないからね。」
やっと離れ自由になったと思ったがまたここに来てしまった。
「なんとか処置はしたけど前回のもあって骨が何本か折れてたよ。それにこの刺し傷無理して受けたんだろ?」
「思った以上に深くやられました。あいつにあれだけ力があったとは。」
あの後検査をしてわかったが、刺されることを前提に受けた傷が予想より少し深く入っていた。
流石に彼女のことを舐めすぎていたのかもしれない。
「今回ばかりはちゃんと安静にしてもらうからね。僕が許可を出すまで外出禁止。」
「わかりました。」
大佐が無茶な願いを聞き入れて俺を解放してくれたのに俺はそれを無下にしてまた戻ってきた。
今回はしっかりと安静にしておくとする。
「何か素直だね。君がそんなこと言うと裏があるようにしか思えないよ。」
一瞬大佐が目付きを変えた。
まさかバレたのか。
「なんてね。冗談だよ。君が彼女を利用してこの国から出ようなんて思ってただけだから。」
大佐の言葉を聞いて確信した。
痛む体を堪え、固定された体を機械ごと倒して首をとる。
が、大佐はそれを予想をしていたのか、体を動かさず銃を脇腹へと突き刺す。
「僕が絞め殺されるか君が死ぬのかどっちが早いと思う?けど、僕を殺れても君が生きている保証はないよ。」
大佐のいつも後ろにいる秘書官が既にトリガーを引く直前だった。
「流石は大佐だけありますね。けど俺を殺ったら恐らくまた始まりますよ。」
「君の死をどうやって伝える。もう君はあそこでは死んでいることになっているだろう。ここは君の知っている国ではないよ。」
「もし俺が既にあっちへコンタクトを取っているとしたら。」
「ないね。それならば君はここにはいない。それにもう諦めなよ君の体は躓いただけでも逝けるよ。その体でどうすることもできない。」
俺が万全の状態であればこの窮地を脱することは容易ではないが大佐の言う通り、この状態では二人どころか一人でさえも危うい。
最悪のタイミングで計画を明かされてしまった、いやこのタイミングを見て言われたにちがいない。
しかしどうする。
俺がここで降伏をしても何事もないかのようには済まされない。
「さぁどうする?いまなら君の体の一部だけで済ませてあげる。それともこのまま全てを捧げるか。」
この窮地に立ったのはいつぶりだろう。
あの部隊が結成されて以来か。
この感覚は久しい。
必ず生きて見せる。
「ならば俺は無事でお前が代わりに捧げろ。」
「何をいってるのか、、」
大佐の言葉を聞かず俺は腹を膝で蹴りその反動で突き刺された銃をかすり傷で済ます。
そのまま手で銃を奪い残りの手で首を再び掴む。
秘書官は俺が常に斜線を大佐と被らせていたので撃とうにも撃てない。
大佐を抑えた後に秘書官の手へと銃弾を放つ。
「さて、お前等はどうすることもできない。そこから一歩でも動けば二人とも容赦なく撃ち殺す。交渉だ、俺をそのままあの国へと帰らせろ。」
「まさか僕がこんなにも打ち負かされるとは。流石は異名を持つだけある、」
ボキッと鈍い音が鳴る。
「ぐぁ!」
「無駄話をする時間なんてない。乗るか乗らないかだ。」
俺は抑えていた腕を指へと移し、一本折った。
「はぁはぁ、わかったそんなにも早くしたいのならば応じてあげよう。」
折られた手とは逆の手で殴ろうとするが呆気なく銃で打ち落とす。
「なるほど答えはnoでいいんだな。」
俺は秘書官を狙い腹部へと撃った。
「ぅくっ、」
撃たれた秘書官は膝を付き床に血を流す。
「早くしてやらないとあいつは失血で死ぬぞ。もう一度問うぞ、yesかnoだ。お前の言葉で言ってみろ。」
「卑怯者め、殺すのなら僕だけを殺せ彼女は関係ない。」
「この部屋にいる時点で同じだ。」
「僕は君をあそこへはとは戻らせないよ。死んででもここに引き留めるからね。」
「わかった。ならば二人とも楽にさせてやる。」
応じることはないと確信したところで俺は大佐の頭へと向ける。
「俺を治したことは感謝するが深入りしすぎだったな。」
「さよなら。」