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第8章 争い

 わざと腹部に刺されたが案外刺し込みは深くない。


 いくら元軍人といえど所詮は女性の力。


 刺した後に手応えを感じていなかったのかすぐに抜き再び同じところを突いていこうとする。

 

 いい判断、一回でいけないのなら何回も刺せばいい。


 だがそれは素人のみにしか通用しない。


 戦闘経験のある人からすればただ同じ動きをしてくる的とみえるだろう。


 また同じところに向かってくるナイフを刺される寸前に身を捻り、手を掴む。


 戦場がこんな狭い正方形の石しかなく、そこに灯台があるので一歩間違えれば海へと落ちる。


 そのため最小限の動きをしつつ相手を無力化する。


 掴んだ手を力強く痕が残らないように握りしめる。


 いきなりの痛みにヴィーツェは反射で手を離してしまう。


 ナイフを落とし、逆転のチャンスを消した俺は手を離し油断した隙に蹴りをいれる。


 服は病室から出た後に用意をされていて非常時にでも動けるようなのか、案外動きやすい。


 一方ヴィーツェはきちんとした制服を着ていたので動きやすそうとは思えない。


 蹴りを受ける体制に入ったヴィーツェだが、うまく流しきれずに灯台に衝突する。


 流石に倒れたかと思って近づいたがヴィーツェは体を起こすと同時に灯台を蹴りこちらへ向かってきた。


 あまりにも無防備な体勢だが、俺はどこか違和感を覚え一瞬の隙を与えてしまった。


 しかしヴィーツェは横方向へ移動し、後ろに隠してある拳銃を奪い海へと落下する。


 「なっ」


 違和感の解決と共に究極の選択を迫られる。


 が、そんな暇もなく俺は咄嗟に地面に落ちているナイフを拾い海へと身を投げた。

 

 不幸中の幸いとも言えるのだろうか、ここから海は少し高く助けることが可能だがどちらかはダメージを負ってしまう。

 

 しかしヴィーツェは俺を撃とうとしている。


 落下の衝撃を食らうのは俺だろう。


 早くも二回も落ちるとは流石につらい。


 ヴィーツェは銃を構え俺を狙う。


 俺でも銃の弾道を見切るのは無理だが相手が何処を撃ってくるのかは大体予想がつく。


 狙いは心臓だろう。


 頭であれば運良く避けきれる確率が高いが心臓ではどうしても被弾をする。


 そこへ狙いをつけ、ヴィーツェはトリガーを引く。


 目の前から光が表れその後に弾がこっちへ向かう。


 俺はナイフで銃弾の軌道を心臓から肩へと反らした。


 ヴィーツェは一発でやれると思っていたのかそれ以降撃ってはこなかった。


 肩へと被弾した後左手が脱力し、右手だけでヴィーツェの手をとり、抱きしめ背中を海へ向ける。


 まだあの時の怪我が治ったばかりでこの衝撃でもかなりのダメージが入った。


 「ぐっ」


 危うく意識が飛びそうになったがなんとか堪える。


 銃が使えなくなったせいかヴィーツェにはもう敵意はない。


 海から上がったところで周りに武装をした集団が銃を構える。


 恐らくこの国の自警団だろう。


 俺はヴィーツェを降ろした後でもう腕を上げる力さえない。


 俺から降りたヴィーツェはすぐさまに立ち、手を上げる。


 やつらは俺が無気力になっていると確信しヴィーツェを押さえた後俺も確保された。

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