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第7章 それぞれに抱くもの

 あの後俺たちは目的の場所へと向かった。


 「本当に私がダメと言ったら早く下がって下さいよ。」


 「お前はまだあの事を引きずっているのか。」


 未だにヴィーツェはあの騒動の事を忘れていないようだ。

 

 年頃なのでそういうことにも興味があるのは仕方がないが流石にも引きずりすぎてはないだろうか。

 

 「まだあの事って、てか今私の事を可愛そうな目で見ていませんか。私達まだ出てから三分も経ってませんからね。カップラーメン食べられないですからね。」


 そういえばそうだった。


 あの後俺達は申し訳なさに負けて少し生活に使うものを買って出ていった。


 買ったものはヴィーツェのカバンにしまっているので俺は手ぶらですんでいる。


 というかカップラーメンとはなんの事なんだろうか、食べるというのだから食べ物ではあると思うのだが後で聞いておこう。


 「あなたって時々子供みたいな所ありますよね。まぁ見かけが残念ですが大人びているせいもあってギャップというものがあるせいなのですが。」


 「残念とはなんだよそういうお前は子供にしか見えないぞ。」


 身長やら、体格などを見比べるとヴィーツェは軍のものではないような腕の細さ、見た目の幼さが目立つ。


 だがよく見てみると普通の人には分からないような、長年戦い続けている者でも分からないような強さがみえる。


 「なんですかそんなにもじろじろと見てそんなに"こども"をみていると変な不審者として捕まりますよ。」


 ついいつもの癖で相手を観察してしまっていることに気がついた。


 視線を戻そうとして上へ目をやると何か違和感がした。


 「なんですか。困ったような顔をして。」


 「お前はまだ大きくなれるさ。」


 やっと解決をしたら今度はヴィーツェが黙り込んで少し考えると、また顔が赤くなってこちらへ殴り込んできた。


 俺はそれを回避し、ダッシュで逃げた。


 まだ体は痛むが少しの運動であれば問題はないようだ。


 目的地まであとは道沿いに進むだけだったので進むにつれ磯の香りがしてきた。


 建物を曲がった先にそこには一面に広がる海が見えた。


 「なるほどここがゆっくりとできる場所か。」


 少し遅れてヴィーツェが来る。


 「あなた一応病人ですからね。なんでこんなに走れるのですか。」


 「鍛え方が違うからな。」


 「それよりまだ目的には着いてませんよ。こっちです。」


 どうやらここが目的の場所ではなく他にいい場所があるらしい。


 少し歩くとそこは人影がなく、白い灯台が一つあるだけだった。


 「ここの景色を見せたかったんです。」


 色々とあったせいで太陽が海の底へと沈んでいる。


 俺は灯台に座り、寄りかかった。


 「どうしてここを?」

  

 普通に海で遊ぶならここは適さないし、人目の付かない場所へわざわざ行くのも考えずらい。


 「以前姉とここにきたことがあって、姉はどこかいい場所は無いかと毎日出掛けていたんです。それがここなわけです。かなり前なのでここも変わってしまいましたけどまだ綺麗で良かったです。」


 少し明るくなったと思ったらまた重いような顔をした。


 「姉なんていたんだな。彼女も軍へ?」


 「はい。私と同じ部隊でした。姉は結構な腕利きでしたが私は全然駄目で姉が迎えてくれたんです。」


 「一回指揮をしたといったが、その時はもういなかったのか?」


 「つい最近のことです。あなたが来る前、終戦する前、姉がいきなり単独行動に出まして。追いかけてたらあなたを見つけたわけです。本当にあの時は姉らしくない行動に出たなと思いましたよ。」


 「お前の姉の髪は短かったか?」


 「はい。そうですけど何故。」


 やはり何処か違和感があったと思った。


 その時全てが繋がり気づけば目の前がぼやけて見えた。


 「俺、17と言ったっけ。」


 「確かそうでした。いきなりどうしたのですか。」

 

 ヴィーツェはあまりにも不思議に思ったのかこちらへ振り返った。


 「では何故俺は数年平和に暮らしていたのか、何故俺はお前たちに拾われたのか。」


 答えは簡単だ、俺はこの何十年と続いてきた戦争が始まる前からいたし、その時のヴィーツェは恐らく居なかっただろう。


 そしてヴィーツェ達の部隊が俺を拾ったのは彼女が俺を救ったからだ。


 「まさか、あなたが。」


 ヴィーツェは俺に手を伸ばし座っていた俺を立たせた。


 俺は前があまりみえていないくても分かった。


 泣いている。


 「そうだ。俺がやった。」


 「っ、」


 ヴィーツェは唇を噛みしめ手の力を強めた。


 「やるならやれ。ただし、」


 俺が全てをいい終える前に護身用に持っていたナイフを取り出し腹部へと刺し込む。

 

 俺は血を吐きながら最後まで言う。


 「俺も全力でやる。」

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