第6章 知らぬこと恥を知る
施設の受付らしき場所のドアが開かれるとそこには自由に遊ぶ子供達がいて、それを見守る年老いた人もいた。
中には子供と一緒に遊ぶ大人もおり、それらの景色は俺にとって異様な雰囲気に包まれていた。
「どうでしょう。楽しそうでしょうか。」
「あぁ何か楽しそうだな。」
この景色を見ているとふと昔の記憶が甦る。
曖昧な部分だがそれでもどこか楽しく、面白く暮らしていたあの時。
暖かい場所で、気持ちよい場所。
そこで生活していた全てが戦争によって滅ぼされてしまった。
「どうかしましたか?」
顔に表れていたのかヴィーツェは不思議そうにこちらをみる。
「いやなんでもない。それよりゆっくりとした場所へ行きたい。」
少し外の空気を吸ってから休もうと考えたが、何故か彼女の目は輝いていた。
「はい。私にお任せください。」
俺がずっと居座ってきた施設の門をでて右へ曲がった。
そこから出た後の景色はエードとは異なり一つ一つが大きい建物に囲まれていた。
ガラス張りの建物が遠くからでもわかるほど大きなものが一つだけ建っている。
その他には様々な形や色の家、中には一際目だった建物があった。
「そこが気になりますか?どうですか寄り道程度に。」
「寄り道か悪くはない。」
俺としてはかなり気になるので即答した。
するとヴィーツェは少し笑い歩く向きを変えた。
「なんだ?」
「いえ、ただあなたも同じ人間だなと。」
意味が分からなかったので無視して俺もそちらへと向かう。
その建物はガラスの面積が多く主に支えとなる部分以外ガラス張りになっている。
外から見た感じだと中には人が二人程度いるのみ、ここで暮らしている人ではないようにみえる。
ドアへ近づくとここはエードと同じ仕組みなのかドアがセンサーで自動で開く。
「この自動ドアでは驚かないのですね。そっちにもあったのでしょうか。」
「まぁ一応ただ警備的に安全ではないから使われているのは極少数だ。ドアを開けるのがめんどくさいやつや、新しいものに目がないやつ。などろくでもない奴らだけどな。」
実際、他にも使われていたと思うが正直あまりあの国の中を覚えていない。
ただ小さかった時の記憶を便りに話しただけ。
「そうなんですね。でもここは人が自由に出入りでき、物を買う場所です。」
建物の中へと入るとそこには様々な物がギルメルシュ国の通貨で売られていた。
中には見たことのないものもあって度々目が引かれては別の物を見てと視線が忙しかった。
「そんなに珍しいものがありますか?」
「あぁ特にこれなんかは紙にインクを付けることで新たな娯楽が生まれるんだな。」
そう言い手に取った物を見せるとヴィーツェは何故か顔を赤らめた。
「そ、それは。」
「なんだそんなにもいいものなのか何か女性が特に多い気がするが、これはお前たち女性向けなのか。」
「い、いえそう言うわけでは、てかそれは男性向けのヤツです。」
表紙には女性しか写っておらずこれが男性向けと言われると何か気になったので開いてみることにした。
「ま、ま待って下さい。まだあなたには早いかと。」
「いや俺はお前よりは上だぞてか早いってなんだよ。」
手に取った物を開こうとしたらヴィーツェが顔を赤らめながらこっちに近づき奪い取ってきた。
「とにかくこれは放っておいて違うのを見ましょう。」
「おい勝手に取るなよ。それはまだ誰のものでもないんだろ、なら俺が貰う。」
「あなたはこれが何か知っているのですか!大体何故一番先にこれを取ったのか。」
俺は気になるものがあるとつい追いかけてしまうのでこれも手放せない。
そう言い争っていると後ろから誰かが近づく音がした。
「おきゃくさま~?」
これが本能と言うのか俺はヴィーツェと一緒に一瞬で頭を下げた。
「すいません!」
尚これ以降本と言うのを知って、ついでにそれは大人向けのものと言うことまで知って、めっちゃ気まずかった。