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それでも僕らは生きる  作者: まっちゃー
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6.ついに触れる記憶の欠片

お久しぶりです。

翌日

「はあ~焦ったわ。でも、良かった~」


「…まあ一応良かったということで」


「一応って何、アン~?」


「…いいえ、こちらの話です。人生は成り行き任せですものね」


「いや、本当アンが何言ってるかわかんない。」


「そうですね。メアリ様はわからなくていいんですよ」



「何それ。仲間外れ~?」


「いいえ、いいえ。そんなことではございませんよ。」


「ならいいけど」


「ええ。」


「私同世代の子たちと話す機会が今まであまりなかったけど、話してみると楽しいものね」


「王子との会話が楽しかったのですか?」


「ええ。楽しかったわ。お互い完全に心を開いて話しているわけではないけど、リチャード様の誠実

さとか聡明さに気持ちよさは感じたわね。」


「そうですか。それは良かったですね。」


「ええ。今後もまた話そうと約束もしたしね」


「そうでしたね…。メアリ様なら大丈夫ですね」


「ええ。王子相手だけど、リチャード様なら大丈夫な気がしているわ。」


「旦那様はどうなさるのでしょうかね」


「そうね。まだわからないわ。とりあえず私はお父様に丸投げよ。ふふふ。」


「そうですね。メアリ様はあまり抱え込まずにご家族に頼ってくださいね。」


「ええ。いつもみんなにはたくさん頼ってしまっているから、今度は私が頼ってもらえるくらい成長

することが当面の目標ね。」


メアリが純粋な笑顔を見せたので、アンは

(「はあ。メアリ様のこの笑顔の破壊力よ。これは誰でもやられるわよね。王子も例外じゃないわ。」)

と内心で癒されながら、また心配もしていた。


「今日は、昨日の分も勉強頑張らないとね」


「そうですね。無理せずに頑張りましょうね。」


「ええ。」




「今日の授業も疲れたわ。アン、私ちょっと図書室に用があるから行くわね。」


「かしこまりました。では参りましょう。」


「ええ。」






図書室に着くと、


「じゃあ、アン15分ぐらいで済むからちょっと待っていて」


「はい、わかりました。」





「んーと、貿易関係の本ってどの辺だっけ…?あれ、無いな~。希少な本だから、奥かな?」


メアリは図書室のさらに奥の方へ進んでいった。奥の鍵のかけられた部屋まで行きついて、試しにノブを回してみた。すると、鍵はかかっておらず、扉が開いてしまった。メアリは驚きながら中に入ると、以前来たときと全く変わらぬ整頓された室内に少し安心した。


「侵入者がいる可能性はそんなに高くないわね。でも、ブランドンがうっかり鍵を閉め忘れたりするかしら。」


ブランドンとはアーガイル公爵家の図書室の有能な司書である。


「しかも、今不在なのも気になるのよね~。ま、とりあえず本を探しましょう。

 あ、この本借りたいっ!この本もっ!」


メアリが奥の部屋にある貴重な本を「あれも、これも」借りたいと思い手に取っていると、これから

整理されるべき本の積みあがった机の上に、見たことのない物体があるのが目に入ってきた。


「あれ、なにこれ。何かのケースかしら。」


持ってみると


「堅い。でも表面が反射するわ。鏡かしら?でもこんな小さくては鏡としてはあまり機能しないわね…。」


メアリが持ち上げて裏返してみると



「えっ……何これ?」



一枚の絵姿、ではなく人の姿がそのまま絵具ではなく鮮やかに描かれているもの。この世界にはまだない“プリクラ”というものが物体とケースの間に挟んであった。メアリはこれが人の姿を描いている、映しているものであるということを認識するのにしばらく時間を要した。自分の恰好と姿が違いすぎるせいであった。

一人の男の子と一人の女の子が並んで楽しそうに映っていた。



そして、メアリが何かのケースだと思ったものは、これもまたメアリの住む世界にはない携帯であった。



「……なんで、…、懐かしくて、虚しくて、苦しい。…これは何で、この人たちは誰なの?」

メアリの目から涙がこぼれた。温かさを感じると同時に喪失感も襲ってくる。



「わからない…。」



メアリはそのまま、しゃがみこんで、意識を失ってしまった。










ー同じころ図書室の前の廊下ではー


「メアリ様が出てこられないわ。どうしたのかしら」


「どうしたんだ、アン。」


「あら、ブランドン?!今まで図書室にいなかったの?」


「ああ。丁度少し休憩がてら庭に出ていたんだよ」


「今、メアリ様が図書室にいるんだけど、15分ぐらいで済むから、っておっしゃっていて、もう30分経つのに出てこられないのよ…」


「それは何かあったのかもしれない!行こう!」


「ええ!」




「お嬢様―。返事をしてください!」


「メアリ様―。メアリ様!…っう…」


「まだ、なにもわからないのだから落ち着こう。」


「…そうね。取り乱してごめんなさい…」


「これは奥の書斎かもしれない」


「行きましょうっ」





二人が奥の書斎に入っていくと、メアリがうずくまって床に横になっているのが見えた。


「…お嬢様!」


「メアリ様!」


急いでブランドンがメアリの脈を測ると、


「脈はある。とりあえず、お嬢様を自室にお連れして、シリルに診てもらおう」


「ええ、ええ、そうですね。急ぎましょう」




ブランドンがメアリを彼女の部屋に運び、公爵にメアリの状況を伝え、シリルを呼びにいき、アンが忙しなくメアリの身の周りを整えた。

アーガイル公爵家侍医のシリルがメアリの部屋にやってきて、


「メアリ嬢はどのように倒れたのだ?」


と問うと


「うずくまって、床に横になって倒れておりました」


とアンが答えた。


「ブランドンの言った通り、脈はあるし、心拍も問題ない。特に変わったこともないと言える。何か心理的な原因があったと考えるのが妥当だな。疲れとかな」


「疲れですか…。一昨日、お茶会があって、昨日王子が公爵家までいらしたのですものね。それは疲れますよね。疲れからメアリ様が倒れてしまわれたのかもしれないですね。」


「うん。その可能性は高いな。とりあえずは安静にしてもらったら大丈夫だ。また、メアリ嬢が目を覚ましたら呼んでくれ。」


「ええ。わかりました。ありがとうシリル。」


「ああ。当然のことをしたまでだ。」








メアリは次の日の夕方ようやく目を覚ました。

ありがとうございました。


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