3.リチャード視点(茶会)
短め。
今日は初めて公に同世代の子と会う。
別に期待もしていなければ、絶望もしていない。ただ、将来自分を支えてくれる子がいるかどうかという心配だけが心を占めていた。
「リチャード様、楽しみですね」
「うん。まあそうだね。みんなの性格や気質はどんな感じだろう、とは考えるね」
「そんな、固いことを。単純にどんなバカでも、困った時に助ける気概さえもっている奴ならいんですよ。頭脳明晰な子と共に国を支えていくみたいな、固定概念で自分の世界を狭めないでくださいね。あなたは王子である以前に一人の人間として十分魅力的なんですから。」
「やっぱりセバスチャンはいつも、僕のほしい言葉を、最高のタイミングでくれるね」
「まあ、それ容姿も込みですけどね」
「そうかい。そうやって最後に恥ずかしいからって茶化してしまうのは君の悪い癖だよ」
「…俺は殿下を勇気づけたのに、殿下の私への当たりがなかなかに厳しい…つらい…」
「もう時間なんだよね?」
「そうでございました。それでは参りましょう」
こちらの主従もなかなかにコミカルなやり取りを行っているのであった。
会場に着くと、父王の挨拶と自分の挨拶があり、その後本格的に会が始まった。
テーブルの面子はおおよそ階級別に分かれており、当主の城で担う役割も考慮に入れている面があった。順番に、右側のテーブルから挨拶と少しの会話を行う。左端よりのテーブルは僕の学友・婚約者候補の大本命とされる者達が座っていた。そこを最後に残していく。確かに今のところ6つほどのテーブルを回って1、2人ほど気になる人物がいたぐらいだ。
そうして、最後のテーブルにたどり着いた。
「今日はみんなといろいろな話をしたい。僕たちは同世代だから、今後大人になった時互いに助け合えるような関係を築きたいんだ。だから話せることは何でも話すよ。その代わりと言っては何だけど、みんなも同じようにしてほしい。」
するとナーストン公爵令嬢エリザが
「私、ナーストン公爵令嬢エリザと申します。そのようにおっしゃっていただけてとても嬉しいです。何をお話ししたらよろしいかしら。とにかく、このようにリチャード王子とお会いできることをうれしく思いますわ。」
と積極的に言葉を交わしてきた。
それに対しては
「ナーストン公爵には軍務大臣として、お世話になっているよ。僕もみんなと会えてうれしいよ。」と答えた。
そのほかのメンバーは自分の絵姿と貴族名鑑の記憶から、自分からコンタクトをとり、話を始めることにした。
皆、ちょっとした動作やしぐさは優雅であり、会話の種類も豊富で、さすが高位貴族であると思った。同時に、やはり自分はこの中から学友と婚約者を選ぶのであろうなと思い、少し物足りなさやつまらなさのようなものも感じつつあった。
そこで最後にこんな質問をしてみた。
「皆は自分が貴族であることに誇りを持っているかい?」
また、ナーストン公爵令嬢が一番に
「私は自分が貴族であることに誇りを持っております。そして、誇りをもつようにと教え込まれてきましたわ」
と答え、その後もテーブルに着く全員が似たように答えた。
そんな中で、アーガイル公爵令嬢だけが、
「私は貴族としてある種の矜恃はもっておりますが、貴族であることに誇りを持つということは正直に言って…。失礼いたしました。本日実は私あまり体調がすぐれないゆえに、変なことを申してしまったかもしれません。ご容赦ください。」
というように、他の者と違う答えを言った。いや、答えこそ聞けなかったが、これは貴族の誇りというものに疑問を持っているといったような返答であったことは確かだった。
「体調は今平気かい?」
と彼女を気遣う様子を見せるが、早くこの先の彼女の考えを聞いてみたいという思いもむくむく膨らんできた。
「はい。今は良うございます。しゃべる際に緊張しすぎてしまったからかもしれません。ご心配おかけしまして申し訳ございません」
やはり、彼女は自分のこの質問に関する答えはこの場では言うべきではないと判断しているようだった。
「いいや、大丈夫だよ。この後も参加できそうならゆっくり過ごすといいよ。」
「はい。お心遣いをありがとうございます。」
その後、最後まで恙なく会は進み、終了した。しかし、この会の間中彼女の答えが気になって仕方なかった。そして、お忍びで彼女の見舞いにでも行くふりをして、彼女の家に押しかけてしまうという作戦を脳内でたてたのだった。
ありがとうございました。