第8話 魔石採取
「うん、ごめんなさい。」
レイクは、項垂れながら謝った。
「反省したか?」
「うん。」
「よし、じゃあこの話は終わりだ。」
『よろしいですか、マスター!』
「ああ。」
『その魔虎の死骸ですが、魔石を取り出して血抜きして、死骸と魔石を倉庫に保管しておくのが最良と思います。レイクはどう思いますか?』
「うん、それでいいよ思うよ! 魔石は魔力をため込んでいて、取り出しておかないと死骸の維持にその魔力を使ってしまうし、魔石は魔石でなにかと使い勝手があるし、牙や毛皮は素材としても良いもんだからね。本当は、捌いて保管した方が良いんだけど…」
「それは無理だ、毛皮を剥いだりできないしな。」
『あと、死骸は、腐敗しますので早い目に処分することをお勧めします。食用にするわけではありませんので、1、2週間といったところでしょうか。』
「わかった。魔石は、何処にあるんだ?」
「心臓の右側だよ。」
「心臓の右側だな。レイク、他の魔虎が近付いてこないか見張ってるれ。もし近付いてきそうならすぐ言ってくれ。」
「わかったよ!」
俺は、レイクの返事を聞くと光銃をホルスターにもどし、魔虎の巨大な死骸を苦労して仰向けにした。そして、腰からコスモセイバーを抜いて出力を最低、厚みを極薄に設定してスイッチを入れると15cm程の極薄の光刃が発生した。それを魔虎の胸に当ててゆっくり引いた。肉の焼ける匂いが漂うなか、胸骨ごと切り裂いたが、切り口は焼けているので血は出ていない。丁寧に心臓付近をえぐり取り、魔石と取り出すと、コスモセイバーを戻した。魔石には僅かに血が付いていおり、湖で血を洗い流した。
「これが、魔石か」
それは透明な多面体カットの丸い拳大の水晶のような物だった。しばらく眺めてからその魔石と魔虎の死骸を倉庫に収納した。
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倉庫
瞬間物質移送装置 × 1
タイガーファングの魔石(大) × 1
タイガーファングの死骸 × 1
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「さて、レイク、あそこにしか装置を置く場所がないんだよな?」
俺は、丘の上を見ながら、レイクに聞いた。
「うん、あそこには魔虎が巣にしている浅い洞窟があるんだけどそこがいいと思うよ。」
「ということは、あの群れを全滅させる必要があるんだな。」
「たぶん、そんなことしなくても大丈夫じゃないかな。」
「そこらへんに移送装置を置きっぱなしにするわけにもいかないから、大丈夫じゃなくても行かなきゃならないな。」
相手は丘の上だ、隠れる場所などない、ならば、正面から行くしかない。俺はそう思いながら、光銃を取り出し、いつでも撃てる態勢で魔虎の群れに向けて歩き出した。魔虎達は、俺が近づいていくと後退りを始めた。
俺が丘の上に辿り着くと比較的大きな3頭が、飛び出して襲ってきた。俺は落ち着いて、まず、先頭の1頭の眉間に一発撃ち込むと横に飛び、2頭目をかわしたそのまま1回転し、膝立ちで2射目を撃ち、2頭目の胸を横から撃ち抜いた。1頭目は即死、2頭目は虫の息で転がっていた。3頭目は、警戒して近寄ってこない。
「ガルゥゥゥ~~~~!!!!」
威嚇の声を上げる3頭目。その時…
「ガウ~~!!」
別の1頭が奥から唸り声をあげた。
「ガゥ!」
それを聞いた3頭目は、警戒しながら奥の1頭に道を開けて下がっていった。
『魔物:タイガーファング×2を討伐しました。』
『経験値を獲得しました。』
『階梯 上限に達しました。階梯5に上がりました。』
『倉庫 階梯3に上がりました。』
『武器庫 階梯2に上がりました。』
『電脳感応 取得しました』
同時にメッセージが流れた
「ガウ!」
奥から出てきた1頭は、一声鳴くとと、前足を前方に投げ出し、『伏せ』の体勢で頭を下げていた。敵意がないことを示しているようだった。
「やった!」
「とうした。レイク!」
「『お待ちください。』っていてるよ。」
「わかるのか?」
「うん、わかるよ!」
「だったら、最初に話を通してくれよ。」
「それは、無理だよ。力を示さないと言うこと聞いてくれいないから。」
「そんなもんか?」
「そっ!」
「ガウ(強き者よ)!」
「なんだ!」
「ガウ、ガウ(もうこれ以上は、お止め下さい。)」
「どういう事だ? 俺は、襲われたから反撃しただけだ。」
俺は警戒を解かずにそう答えた。
「ガウ、ガウ、ガウ(このまま貴方と争えばこの群れは全滅しますので、我々は降伏したします)」
魔虎達が一斉に伏せて敵意がないことを示した。
「いまさら何を言っている。攻撃してきたのはそっちだろう。」
「ガウ、ガウ、ガウ、ガウ(ここは、我等の営巣地です。ここを守るため、ボスは貴方に挑みました。子を守るためです。どうか、ご容赦を。)」
ちらっと奥のほうを見ると、一番奥に小さい個体がいた。あれが子供なのだろう。
「ラムル、許してあげようよ。それにその何とかってやつを置くんでしょ。それを守ってもらえれば、いいんじゃない?」
「この獣たちを信用しろというのか、レイク?」
「ちがうよ、この子たちがいるだけで、何も近づかないよ。魔虎は、この森で食物連鎖の頂点に立つ魔獣なんだよ。」
「利用価値はあるということか。お前達が降伏するというのなら、俺がここに設置するものを守れ。いいな。」
「ガウ、ガウ(わかりました、我等は貴方に従います)」
「もし、今度敵対することがあれば、その時は…」
「ガウ(はい、わかっております)」
と言うような会話をレイクの通訳付きでした後、死んだ魔虎から魔石を取り出し、魔石と死骸を倉庫に収納した。重傷だった方は仲間に引き摺られ何処かへ行った。明日の朝まで息があれば、数日で回復する様だった。
また、ボスが使っていたという洞窟が、広くて深いということなので、そこに移送装置を設置する事にして、魔虎の案内で洞窟に向った。俺は警戒を緩めず光銃を何時でも撃てる様にしてその後についていった。他の魔虎達も降伏を受け入れたようで、その場を動かずおとなしくしていた。
「ガウ、ガウ(ここがボスの使っていた穴です。)!」
丘を越えた辺りに幾つかの洞窟があり、その中で一番大きい洞窟へ入った。幅も高さも2m以上、奥行きが10m程で、思ったより広かった
「これはいいな。外では魔虎が群れていて、外からも見えないし、何かが紛れ込むようなこともないだろう。」
「う~ん、良いんだけどちょっと魔力が濃いかな。」
「それに何の問題がある?」
「魔物が湧くかもしれない。」
「それは、まずいぞ。」
「ん、だから、入口に結界を張るよ! そうすれば、何もここに入れないし、ここの魔力を使えるから、半永久的に結界が張れるよ。」
「それって俺も入れないのか?」
「ラムルとラムルの連れは、入れるようにしておくよ!」
「なら、問題ないな。」
レイクは、入口の方に行くとぶつぶつと何やら唱えるた。一瞬水色の光を発し、直ぐ消えた。
「結界を張ったよ!」
「何も変わってないようだな。」
「外に出て見てよ。」
「?」
俺はレイクに言われるまま外に出て見た。
「これは!?」
洞窟が消えていた。そこは岩の壁にしか見えない。いま通って来た辺りに手を伸ばすとスーッと突き抜けた。
「お前が入ってみろ。」
近くにいた魔虎に言う。
「ガウ。」
魔虎は、壁に見える所から、前に進めないようだ。俺はその横から壁を通り抜けて入った。
「今度は、一緒に入るぞ。」
もう一度出ると、意思表示をして壁に入った。今度は、魔虎も入れた。
「なるほど。」
俺は確認を終わると魔虎を入口において奥に戻った。
「それじゃ、チャチャっと移送装置を設置しますか。」
俺は、倉庫から瞬間物質移送装置を取り出すと、地面に置き、起動スイッチを入れるとグリーンとイエローのパイロットランプが点灯した。。起動音が鳴って、脚のような3本のアンカーが自動的に出て立ち上がり、アンカーが地面にめり込んでいく。地面にアンカーが埋まり、パイロットランプが、二つともグリーンになると動作を停止した。
「よし、これでOK。アリス、聞こえるか?」
『はい、マスター!』
「移送装置の設置を完了した。」
『こちらでも確認しました。』
「それじゃ、テストしてみるぞ!」
俺が移送装置のボタンを押すと上面が迫り上がり、中からパネルの付いた一本のアームが出てきて、立ち上がり、俺の腰の高さになった。それを操作すると更に3本のアームが出てそのまま三方に伸びて中心から1.5m程のところで止まった。そして、倉庫から、魔虎を出すと移送装置の上に置いた。
「よし、これで準備OKだ! アリス、今から転送テストで魔虎を移送する。」
『ラジャー!』
移送エリア外からパネルを操作し、移送ボタンを押すと、アームの先端から光が照射させる。魔虎の輪郭が暈けいき、その場から完全に消えた。
「アリス、移送が完了した。そっちはどうだ?」
『はい、問題はありません。無事にこちらへ移送されました。』
「よし、成功だな。今度は俺が行く。」
再度、移送装置を操作する。今度は、アームが縮み中心から1m程になっら、パネルの方向を変えた。
「レイク、行くぞ。こっちへ来い。」
「はあ~い。」
レイクが飛んできて、肩のあたりに止まったのを確認し、移送スイッチを入れると視界が、白に染まった。
視界が、元に戻ると元の洞窟だった。
やっと異世界らしくなって来ました。




