第68話 中級料理店
どうしてこうなった・・・。
俺たちは今、レストランにいる。
姫騎士の二つ名を持つ、レイラ・ミースとその姉、エレン・ミースと俺たち、リン、ホノカ、俺の3人は一緒に食事をしていた。
別に高級店というわけではない。ある程度の収入があれば月一くらい、余裕のある高ランクなら、週一で、利用できる中級の料理店だ。
だが、安すぎない気持ち高めの値段設定ゆえ、駆け出しの冒険者など、生活ギリギリでは入ることすら敬遠してしまいそうになる。
高級店ではないので貴族など裕福な連中がやってくることはめったにない。庶民のプチ贅沢程度の客が多くいるようだ。
俺たちは贅沢したいわけではないので、通常ならパスするはずの店だ。
なら、何故俺たちはここにいるのか?
その答えは、目の前にいる二人の美少女だ。
デュアルソロと呼ばれる美少女二人に誘われたのだ。
それだけ聞くと、下心がありそうに思うが、そんなことはない。
断じて、そんなことはないのだ(←ここ大事)
ちょっと、冷たい視線を感じるが、それは気にしてはいけない。
まあ、誘ってきたのは、妹の方の美少女で、冒険者界隈では姫騎士の二つ名を持つほど強いらしい。尊敬の意味も込めて「姫騎士レイラ」と呼ばれているそうだが、本人はあまりうれしくないようだ。
あ~あ、話が脱線してきたな。
まあ、そこらへんは置いて本題に戻ろう。
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強盗退治が終わった後、強盗達は手首をしばられ、レイラたちよって、冒険者協会総本部まで連行された。俺たちもそれに同行して総本部で証言して現在に至る。
レイラたちは以前から、冒険者を狙った強盗の内定を進めていたらしい。
常連の冒険者たちにあまり被害がなく、一見の冒険者や稼ぎ始めた新人などがよく狙われていた。
そこへ俺たちが現れ、襲われたというわけだ。
「まずは、あなた方にご迷惑をかけたことを謝ります。」
レイラは席に座ると開口一番、謝罪をしてきた。
「申し訳ありませんでした!」
レイラが優雅に丁寧に頭をさげた。エレンの方もそのタイミングに合わせて同じように頭を下げた。
「大丈夫だ。別に俺達に被害があったわけじゃないから、気にするな!」
「そうです。私たちが役に立ったのなら良かったじゃないですか!」
「どこにでも、小悪党はいるからな。我々なら十分対処できる。」
頭を下げた二人を見ながら俺達は口々にそう言った。
「そう言ってもらえると、助かります!」
あまり表情には出ていないが、レイラたちはほっとしたような印象を受けた。
「礼と詫びを兼ねてここの代金は私たちが支払わせてもらいますね。」
「いや、べつに俺たちも金がないわけではないから気遣いは無用だ。」
「実はですね。総本部から謝罪費用として金を預かっているので、遠慮する必要はないですよ。」
俺はレイラたちから視線を外しリンとホノカを見たが、二人とも軽く頷いてレイラの言葉に同意したようだ。
「わかった。じゃあ、奢ってもらおうか。」
こうして俺たちは料理を食べ始めた。
帝都での基準はわからないが、値段が高いだけあって、かなり美味しい方だと思う。
俺が異世界に来てから食べた中では一番美味しかった。
リンやホノカも文句も無く食べるのに夢中になっているようだ。
食事の間、強盗の捕獲についてレイラたちから説明があった。
それによれば、レイラたちは、総本部からの依頼で以前から頻発していた冒険者を狙った強盗事件を内定していたそうだ。
ある程度、目星はついていたが明確な証拠がなく、捕縛できなかった。
そんな時、俺たちが総本部で大金を現金で受け取ったが、それをある程度の冒険者たちがわかるようにわざとやったそうだ。
その冒険者たちの中に強盗の手引きをしている奴がいて、強盗達に情報を流して襲わせた。
無論、俺たちがそんなことを知るはずもなく、強盗が俺たちを襲ったのだが、見事返り討ちにしてやった。
「しかし、妙だな。」
「なにか?」
「だって、そうだろ。いくら流れの冒険者だからと言って、というか、普通、流れの冒険者の時点である程度の腕を持っているというべきでないのか?」
流れの冒険者とは拠点を持たずにあっちこっち転々としている冒険者たちの事である。拠点の登録自体は必ずあるが、そこで活動しなければならない義務はない。リンも拠点はパルミエルになっているしホノカに至っては言わずもがなだ。
拠点以外で活動するためには魔獣等に負けない実力、他人にだまされない知識、円滑なコミュニケーション能力、等々が必要となる。
「ああ、そうですね。あの者たちは、相手の強さの基準を等級で判断しているからです。」
冒険者の等級は強さの指標でもあるが、それは絶対的なものではない。強くても依頼を受けて達成しなければ等級は上がらない、急に強くなることもある。そもそも、登録をしていなければその指標すらない。
「それなら、金将級のホノカがいる時点でもっと強い奴を用意するべきでは?」
「7対1なら勝てると見込んだんでしょうね。ホノカさんはともかく、冒険者でない収納術師のアナタやD級の薬師のリンさんにやられるとは想像もしていなかったのではないでしょうから。」
金将級の仕事人というのは、冒険者等級でA級相当だが、薬師と収納術師に手も足も出ないなど思いもよらなかったのだろう。
「なるほど、本質を見ずに肩書だけで判断したわけだな。」
「冒険者等級は強さの基準ですから、普通ならそれで問題ないはずですが、アナタたちに相対したのが間違いでしたね。」
「まあ、そう言えないこともないが・・・。」
俺とリンはある意味、詐欺的な強さを持つ。二人ともS級魔獣のシェンラン達に鍛えられているから、A級以上の実力はあるはずだ。
冒険者にもなれない連中が束になってきても俺たちに勝てるはずもない。
「でだ、そちらのリンさんもそうですが、アナタもB級相当の実力を持っていると見ましたがどうでしょう?」
「ノーコメントだ。おれは冒険者ではないのでな。」
「そうですか、でも、アナタはかなりの修羅場を潜ってきていますよね。」
「さあな。どうだろう。」
俺は、レイラの質問にとぼけ続けた。変に目を付けられたくはないのだが、そう都合よくはいかないらしい。
「リンさんはどうですか?」
「私なんて、まだまだですよ。単純な剣の勝負なら、ラムルとホノカには勝てません。」
「ということは、何でもありの勝負なら、勝機はあると?」
リンと俺ならば9割方俺が勝つが、本気の勝負で回復や毒を使われたら、勝率は一気に下がる。だが、そんなことをわざわざ言う必要はない。
このレイラという少女は、見た目と違ってかなりしたたかな奴だと思う。頭の回転も速いため、変に会話を続けると墓穴を掘る恐れがあった。
「それは・・・」
「リン!」
俺はリンの言葉を遮って止めると、それに続いてホノカが俺の言いたいことを言ってくれた。
「それ以上の詮索は無用に願いたい、レイラ殿。帝都の冒険者は、礼儀がなっていないのではないか。その実力も含め、公開されている情報以外は、詮索しないのが規則だったと記憶しているが。ましてや、ラムルは冒険者ではない。」
「申し訳ありません、十分つよいのに冒険者登録をしていないのが、気になりましたので!」
ホノカが思いのほか強い物言いでレイラに言った。
冒険者同士は仲間ではない、時に敵対関係とまではいかなくても競争関係になることがある。その為、己の手の内をさらすような真似をすることはしない。又、冒険者のマナーとしてパーティ内以外でその能力や出自などの個人情報を聞き出すことは、厳禁とされている。
「人にはいろいろと事情があるのだよ。」




