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六機神合体~異世界で6体のロボットを合体させてみよう~  作者: 八咫のマコト
第三章 剣士と共に戦ってみよう
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第54話 火炎竜

 ホノカが最下層奥の扉を押すと石が擦る様な音を立ててゆっくり開いていく。大きさの割に力を入れずとも開くことができるようだ。


 中は他の階層主の部屋と同様に真っ暗な広間らしき空間が現れた。そこへホノカがゆっくりと入っていく。俺たちもホノカの後に続いて部屋に入る。全員が部屋に入ったところで入り口の扉がゆっくりと閉まり始めた。扉が閉まりきると壁にあるすべての灯火台に火が灯り、部屋全体を照らし出した。


 明るくなった部屋は階層主のそれの倍ほどの広さだ。その部屋の中央には、台座があり、その上に朱色の水晶球の様なものが置かれていた。


 その台座に向けて、ホノカが一人で前に出た。『先頭を行く』と言ってたので俺たちは2m程の間をあけてそれについて行った。


 その扉と台座の中間点ほどに達したとき突如、俺たちとホノカとの間に見えない壁が現れた。


「!?」


 俺たちは一瞬何が起こったのかわからなかった。見えない壁に遮られてこれ以上進むことができない。ホノカと分断されてしまったのだ。


「ホノカ!!」

「障壁!!」

「分断された!」

「壁が!」


 コンゴウ、スズカ、俺、リンの順で声を上げた。


「ホノカ、戻れ。一人じゃ危ない!」


 コンゴウがホノカに声をかける。


「大丈夫だ。皆はそこで見ていてくれ。」


「なにを・・・!?」


 ホノカの言葉に『なにを言っている』とコンゴウは思ったが、それを言い切る前に不思議な威厳のある声が聞こえてきた。


『力を示せ!! 我が力を受け取るに相応しい力を示せ!!』


 言葉が終ると台座の球が光り、炎が噴き出だすと、それは空中で巨大な渦を巻き、周囲を照らしていた。炎の熱が部屋全体を覆い、一気に室温が上がったような感覚だ。


 渦を巻く炎が収束し、何らかの形を取り始めた。渦が消え去るとそこにいたのは・・・、竜の形をした炎だった。


 ゆらゆらと炎が揺らめいているが、不規則に形を変える炎ではなく、竜の形を維持したままその場に立っていた。


「あれはなんだ!? 魔物ではないようだが!」


「ものすごい炎の霊力が竜を形作っています。実体はないように見えますが・・・。」


「ダメだ、ホノカ! あれは尋常じゃない。」


 コンゴウとスズカも炎の竜が、とんでもない存在だと感じている。コンゴウはホノカを止めようとするが、聞こえていないように反応がない。


 あれは、魔狼王シェンラン白虎牙コーガに匹敵する存在だ。その圧倒的なオーラがその全身から溢れ出している。だが、その割に殺気は全く感じない。どうやら、殺すつもりはないらしい。


◇◇◇◇◇


(炎の竜。まさか、火炎竜なのか!?)


(コンゴウたちから、隔離された、今、一人であれと戦うしかないのか?)


(あれに勝てるのか?)


 ホノカの頭の中で瞬きのうちにいくつもの疑問が駆け巡る。答えの返らない疑問。


(考えるな! 一瞬でも気を抜けば、あっという間に倒される。)


 ホノカの表情が変わる。目は半眼となり、大太刀を中段に構える。右足をやや前に後ろに僅かに重心をかけ、どのような挙動にも対応できるように最も基本的な構えを取る。


 それと同時にホノカの体に覇気を纏う。ホノカが「火炎竜」と呼んだそれには見劣りするが、それでも普段のホノカの覇気とは比べ物にならないくらいだった。


『力を示せ!』


 火炎竜はそういうが、双方ともに動かない。


 ホノカの額から汗が流れ、頬を伝って、顎から滴り落ちる。


 その時、火炎竜が飛び出した。あっという間に間合いを詰め、目にもとまらぬ速さで両手の手刀を連続して突き出した。


 キン、キン、キン、キン、キン、キン、キン!!


 立て続けに繰り出された手刀をホノカは大太刀で弾き、流し、そして躱す。


 炎のはずなのに金属が撃ち合うような音が響く。炎の中に硬質な何かが生成されているようだ。


 火炎竜の手の先をよく見るとそこには真紅の爪があった。霊力を集中させると実体はなくとも障壁を発生させることができる。それの変形版なのだろう。


 火炎竜の攻撃がホノカの顔、肩、腕、脚をかすめ、その度に着物が裂け、血が舞い散った。


 一呼吸の間に数十の攻防が繰り返され、火炎竜は元の位置へ飛びのく。


 火炎竜を見るといつの間にか、右腕が消えていた。先程の攻防の最中に切り落としたのだ。

 火炎竜が飛びのく直前、右腕が伸び切ったところにホノカの太刀が滑り込んだ。斬り飛ばす程の威力はなかったはずだが、それに斬りつけると手ごたえもなく斬り飛ばしてしまった。


 ホノカは火炎竜との間合いを開けられないように追撃し、火炎竜の動きが止まった瞬間、袈裟懸け、横なぎ、切り上げ、逆袈裟懸け、と流れるような動作で火炎竜を攻める。


 斬撃が火炎竜の炎の体を斬り裂いて分断するが、空を斬る音だけが響く、素振りでもしているかのごとく異様な手ごたえだった。


 火炎竜の体は分断されたまま宙に浮いていた。その後、火炎竜の体が燃え上がり炎に覆われ元通りに復活してしまう。


「くっ!」

 ホノカはそれを見て苦虫を嚙み潰したような顔をして後退した。


 ホノカは既に満身創痍だった。致命傷こそ受けていないが、こちらの攻撃はまるで効かず、火炎竜の攻撃は確実にこちらを削ってくる。持久戦に持ち込むのも難しい。あれは余裕をもって攻撃しているように思える。恐らくあれの方が持久力があるのだろう。ならば、攻めるしかないが、通らない攻撃では意味がない。


 あの体は火炎そのものだ。斬ることもできなければ、触ることもできない。水や氷系統の攻撃なら多少は効くかもしれないが、生半可な威力では、一瞬にして蒸発してしまう。それ以上に強大な火炎に強力な水攻撃をすれば水蒸気爆発を起こし、辺り一帯を破壊しかねない。


(あれを倒すための道筋が見えない。)


(だが、あせるな!)


 一つだけ方法がある。だが、その技を使えば、私は致命的な障害を負うだろう。程度によっては死ぬかもしれない。


『力を示せ! 力あるもののみが、この先に進むことができる。力なき者は今この場で朽ち果てるがよい!』


 火炎竜の炎が膨れ上がり、離れていても熱波が襲い掛かってきた。


「くっ!」


 火炎竜からの熱波に思わず後ずさりしそうになったが、なんとか踏みとどまり、太刀を構える。


 あれは、普通では倒せない。そう感じさせるほどの力の差があった。威圧感もすごいのだが、何故か殺気は感じられない。


 火炎竜の周囲に火の玉が幾つも現れ、大きく開けられた口蓋に火の力が収束する。


 ホノカは身構え、いつでも動けるように腰を落とした。


 火炎竜の口蓋から火炎放射の様な炎が発射された。


 ホノカはそれを避けるが、その瞬間、周囲の火の玉が襲い掛かった。


「なっ!」


 数十という炎が飽和攻撃と化して全方位からホノカに迫る。火炎放射の直後、数十の火の玉がホノカの周りに半球形状に広がり、それが全て着弾し、轟音と爆炎を上げた。


「ぐわぁぁぁぁ!」


 爆炎が収まり煙が晴れると、そこには服のあちこちが焼け焦げ、素肌の見えているホノカが倒れていた。


 しばらくして、ホノカがゆっくりと起き上がった。


 ホノカは理解した。あれは殺気を出すまでもなく、殺す気がなくても、子供が遊びで虫の脚を捥ぐ様に、簡単に人を殺せるということを。


(このままでは死ぬ!)


 そんな思いがホノカの頭をかすめた。


 なら、もはや、考えるまでもない。私の全身全霊、全力全開をもって相手をするしかない。


 ホノカは覚悟を決めた。


 あれは『力を示せ』と言った。なら、私が出せる最強の攻撃で、炎を焼き尽くす炎で攻める。


「求めるは火! 神々ですら焼き尽くす炎を司りし炎神よ! 我が御霊を糧に願い奉る

! 我に力を! 招来! 火之迦具土命ホノカグツチ!」


 ホノカが、祝詞を挙げる。ホノカの体から覇気とは違う黄金色の霊気が溢れ、全身を覆った後、ホノカの大太刀に纏わりつく。


 大太刀が黄金色に染まり、やがて、その黄金色の霊気が青白い炎を上げ、同時に大太刀が赤く染まる。


「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 ホノカが悲鳴のような声を上げ、大太刀の柄を持つホノカの手から煙が立ち上る。


 ホノカは叫び終わると、奥歯を噛みしめ、苦悶の表情を浮かべながら、火炎竜をに睨んだ。


 この技は人の身で繰り出してよい技ではない。それは代償が必要だからだ。魂を食わせ、身を焦がし、心を削る。大太刀から立ち上がる青い炎がホノカの手のひらを焼き続ける。その痛みに耐えながら、冷静さを維持しなければ意味がない。この状態を維持できるのは精々5分。使用後の反動で意識を失うか、あっても身動きが取れなくなる。実戦で使うような技ではない。戦場で使ったら死ぬしかない。


 それでも、この場ではこれしかない。他のみんなは私がいなくても大丈夫だ。コンゴウとスズカは何度もこの迷宮の深部に潜っているし、ラムル殿とリン殿も十分な強さを持っている。ならば、ここで全身全霊を持って全力全開で戦って、たとえ倒れたことになったとしても問題はない。故に、全ての力を出し切る。


「さあ、私の力の全てを受けてみるがいい!」


 ホノカは中段に構えていた太刀を右腰の位置に、引き切っ先を火炎竜の胸の中央に向けると、床を蹴って飛び出した。


 火炎竜は、それを避けようとせず両腕を胸で交差させて迎え撃つ。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 ホノカはその加速に併せて、全体重をのせて青白く輝く大太刀を突き出す。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 太刀の切っ先が火炎竜の交差した腕で止まった。見えない壁に阻まれて止まったように見えたが、それも、一瞬のことで次の瞬間、「パリンッ!」何かが割れたような音が聞こえた。


「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 太刀はそのまま火炎竜の腕もろとも胸を貫いた。


「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 火炎竜を突き刺したまま、ホノカが雄叫びの様な声を上げた。


 大太刀の青白い炎が、火炎竜の赤い炎を飲み込み、やがて、全身が青白い炎に包まれた。


 青白い炎が燃え尽きたようにその場から消え去り、大太刀の炎も同じように消えていた。 

 後には太刀を構えたホノカだけが残され、

「カツンッ!」

 と太刀を杖のようにして床につくと、そのまま意識を失ってその場に倒れこんでしまった。


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