第47話 依頼受領
それから、しばらくたつと入口をノックする音が聞こえて目が覚めた。
「開いてるぞ。」
「お邪魔しま~す!」
リンが覗き込むように顔を出してから、部屋に入ってきた。
「よいっしょ!」
そんな声を上げながら靴を脱ぐと、座敷へ上がってきた。そして、そこらにある座布団を引っ張ってきて座布団の上に横座りに座った。
「どうした?」
「う~ん・・・」
リンが困ったような、なんか言いたそうな顔をしていた。
「あのね、レイクが話をしたいって言ってるんだけどいいかな?」
「レイクが?」
その時、リンの腕輪からリンの分霊が実体化して現れた。
「ああ~、やっと出られた~、もう、いつも誰かいたからなかなか出られなかったよ~。」
「何の用だ、レイク!」
なにやらのんきな声が聞こえてきたが、無視してレイクに用件を聞いてみた。
「もう、冷たいなあ~、私とラムルの仲じゃないの優しくしてよ~。」
「どんな仲だ!?」
「ん~とね。」
『マスター!』
俺とレイクが、馬鹿なことを言っているとアリスの呼ぶ声が聞こえた。
「こんどは、アリスか。」
『はい、マスター。様子を見ていましたが、いつまでたっても話が進まないので割り込ませていただきました。』
アリスとレイクはなにやら、用事があるらしい。
『レイクの話では、フノージ火山の麓にある迷宮の奥に火属性の精霊がいるようです。全世界情報で検索したところ、その迷宮の最奥に精霊がいるのは間違いないようですが。精霊の種類までは確認できません。』
「え~、アリスが言っちゃうの~、あたしが言うはずだったのに~。」
『先程も言いましたが、レイクがだれていつまでも本題に入らないからです。』
「え~~。」
レイクがふてくされていたが、気にしない。
「火属性の精霊ということは、仲間にすれば戦力アップになる?」
「たしかにな。レイクがリンについた様に誰かがいればだが、俺は多分対象外だろうな。それに必ずしも仲間にする必要はないか。」
そうリンの疑問に答えたが、リンは薬師であり水属性との相性がよかったのだろう。この世界の薬の殆どが液体の様だしな。一方、俺と火属性との相性がいいのかと言えば・・・。無理だろうな。まあ、物見遊山のつもりで気楽にいってもいいし、帰る手段が見つかるかもわからないし、何がどう転ぶかわからんから行ってみるのも一考か。
「よし、アリス、フノージ火山について判っていることを教えてくれ。」
『はい、フノージ火山はゴノジョウの住民に神の山として敬われています。』
アリスの情報からいくつかの事が判った。もちろん現在進行形のことについてまでは判っていないこともある。
まず、山には炎龍と火竜それに飛竜がすんでいる。
飛竜はさっき討伐した二肢二翼の亜竜である。山の中腹辺りに多く生息しており、時折、麓の森で狩りをしている。
火竜は歴とした竜であり、四肢二翼の所謂ドラゴンと呼ばれるものである。山の中腹と山頂との中間あたりを住処にし、飛竜を主食にしているのだが。まれに森に降りて狩りをすることもあるようだ。
炎龍は長い胴体に四肢をもつ、東洋の龍である。火口付近におり、何百年も眠ったままらしい。そして、姿を見ることはないが、一度、その姿を現せば、周囲の地形が変わるほどの大災害がもたらされるという。
ゴノジョウ地域は比較的温暖ではあるがそれでも冬は寒いのだ。
だが、炎龍のいる山の付近の森は年中温暖で自然の恵みが豊富なフノージ火山はゴノジョウの住民にとっては、無くてはならないものとなっている。
麓には、迷宮化した洞窟があり、精霊がいるのはその最奥だ。
『迷宮のある一帯は一般人が紛れ込まないように管理されていて、ゴノジョウの守備兵が24時間体制で入口を監視しています。中に入れるのは、一定の資格以上の仕事人等、許可された者だけです。』
「それが問題だな。」
無理やりなら、入れないことはないが、トラブルになるのは必須だし、ゴノジョウの街の連中と揉めたくないからな。
「!」
そこへ、再び入口をノックする音が聞こえた。レイクが慌てて腕輪に戻ると、リンがこちらを見つめてきたので軽く頷いた。
「開いているぞ。」
「どうぞ!」
俺とリンがほぼ同時に入室の許可を出す。リンはそのまま立ち上がり、入口の戸を開けると、そこにホノカが立っていた。
「あっ、いらっしゃい。ホノカさん!」
「おじゃまする。」
そういうとホノカが入ってきた。
俺とリンが並んで座卓につくと、ホノカはその向かい側に座った。俺は胡坐をかいて座り、リンは正座ができないのか、横座りをしていた。一方、ホノカは、正座をしており、背筋をピンと伸ばしたその姿は、ほれぼれとする綺麗な正座だった。
「急に押しかけてきてすまない。」
「それで、何か急用か?」
「ああ、だが、本題の前にこれを渡しておこう。」
ホノカはそう言って、懐から小さめの風呂敷に包んだものを2つ座卓の上に置いた。
ジャラという音を立てて置かれたそれをゆっくり開くと片方には大金貨10枚が入っており、もう一方には5枚の大金貨が置かれていた。
「これは今回の討伐の報酬だ。参加報酬が10両、大金貨1枚だな。ラムル殿はそれに加えて活躍に応じた金額と素材の売りさばき代金だ。内訳としては前線で命を懸けたものは30両加算、討伐1頭当たり10両、4頭の討伐に参加したから40両、素材山分け分が20両。合計で100両だ。
リン殿の方は、大勢の怪我人を治療してくれたとの報酬として30両、回復薬とそれ以外も含めた代金として10両。計50両だ。」
「なかなかの大金だ。請負処もかなり奮発したな。」
「太守様のお陰だな。お上からの緊急依頼だったからな。ある程度の金額を出さないと仕事人にそっぽを向かれるのだ。」
「なかなか、世知辛いな。」
「仕方あるまい、仕事人も食っていかなければならんからな。」
「すごいね、ラムル! 大金貨なんて見たことないよ。」
「そうだな、俺も見たことがない。」
(こっちへ来て、初めての街がパルミエルで、あそこでは大金貨をもらうような仕事はしてなかったからな。)
「大金貨を見るのが初めてなら、興奮するのもわかるが、まずはこれを見てくれ。」
俺達(?)が大金貨の話題で盛り上がっていたら、それを打ち切るようにホノカが折りたたんだ1枚の紙を座卓の上に広げた。
それには、
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依頼書
内容 フノージ火山、麓の迷宮内の魔獣の討伐及び調査
詳細 迷宮内にいる魔獣の間引きをし、迷宮内に異常がないか確認する。
異常があった場合はその原因も合わせて調査。
報酬 10両
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と書かれていた。
「えらい、大雑把だな。」
「そうだな。これをラムル殿たちに受けてもらいたい。」
「受けるのは構わないが、異常と言われても通常の状態が判らないから、異常かどうか判断できないぞ。」
「ああ、それは問題ない。私達も一緒に同行する。問題は中で何が起きるか判らないことだ。中に魔獣が住みついているはずだが、その調査が主になる。今のところ、私とスズカ、コンゴウの3人なんだ。私たちだけでも大丈夫だと思うが、保険をかけておきたい。」
「他の仕事人はどうなんだ?」
「それも考えたんだが、山頂遠征組と、討伐した飛竜の片付けや飛竜の死骸につられてくる森の魔獣達への対処するのに手一杯でこちらに来れる連中がいないんだ。そこでラムル殿達が協力してくれればと思ってな。」
「俺達なら、手も空いているし、丁度良かったという訳か。」
「まあ、そうだな。」
「俺達も一度、迷宮には行ってみたいと思っていたんだ。」




