表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六機神合体~異世界で6体のロボットを合体させてみよう~  作者: 八咫のマコト
第三章 剣士と共に戦ってみよう
45/82

第43話 萬請負処

 少し、時は遡る。ゴノジョウ城の大広間に太守カートク・ショーグーンを筆頭に臣下の面々が集まって、月に一度定例の合議が行われていた。

 大広間は二十四帖一間の大きな部屋だった。部屋全体にイグサ畳が敷き詰められ、上座の一段上がった所には同じ畳の座敷があった。そこに敷かれた座布団の上で胡坐をかいているのが太守カートク・ショーグーンである。着ている素襖すおうは、金糸銀糸で彩られながらも派手になり過ぎないよう上品に仕立て上げられた逸品である。

 左右には小姓が控え、各々が大太刀と小太刀を1本づつを掲げていた。その鞘の端に銀糸で刺繍された布をあて、さらに袖布を添えて直接触れないように鞘を持っていた。


 下座には、太守の前、下座の上左側に大老が陣取り、大広間全体に睨みを効かせ、間を明け、左右向かい合わせに武将たちが並んでいた。全員が肩衣袴かたぎぬばかまを着て胡坐すわりだった。


「・・・それでは、この議題について、皆様方、よろしいですな。」


 様々な議題の報告や検討がこの場の目的であり、そのための月に1度の合議であった。そんな合議の最中に一つの急報が入ってきた。


 一人の武将が部屋へ入るなり膝をつき、土下座で平伏していた。


「失礼致します。」


「控えよ! 合議中であるぞ!」


「火急の報告故、お許しください。」


 一般の武将が合議の合間に大広間に入ってくるのは異例である。末席の武将がそれを咎めたが、その者もそれをわかっており、頭を下げたまま急ぎである旨を告げ、許可を請うのであった。


「よい面を上げよ。して何事じゃ、申してみよ!」


 カートクが許しをだすと武将が、顔を上げ報告を始めた。


「はっ! 申し上げます。只今、フノージ山監視隊より、狼煙が上がりました。色は、赤、緑、白。」


「なに! こっちに飛竜が向っているのか!」


 狼煙は、暗号になっており、赤は飛竜を示し、緑は複数、白はゴノジョウを示す。

 つまり、飛竜の群れが山を出てゴノジョウに向かっているということだ。


「殿!!」


 それを聞いた大老が、すかさずカートクに呼びかける。


「全軍、出陣じゃ! 城下の全旗本に火急の知らせをだせ。卯門ぼうもん前に布陣する! ありったけの弓矢、呪符、を集めろ。仕事人と寺社にも応援を出させろ。同時に飛竜の飛来予測をだせ。戦えぬ民草を避難させろ。この場は解散じゃ。各々方、戻って大至急準備せよ。儂も出るぞ。」


「「「「「はっ!!!」」」」」

 

 カートクが指示を出すと居並ぶ武将たちは慌ただしく席を辞し、迎撃の準備に向かった。



◇◇◇◇◇


 一方、萬請負処よろずうけおいどころでも狼煙を見て、頭目のヤギュー・フジカタが慌ただしく指示を出していた。


 萬請負処とは仕事人と呼ばれる者たちの取り纏めを行うところである。無頼の者たちを放っておくと治安の悪化につながるため、仕事人として登録し、溝さらいや荷運びの雑用から、魔獣の討伐や護衛などの様々な仕事を割り振っているのである。他の街では冒険者と呼ばれる職業がここでは仕事人と呼ばれている。


 フジタカは筋骨隆々とした如何にも武士というに相応しい体躯をしている。厳つい顔や脳筋に見える外見からは想像できないが、常に沈着冷静で広い視野を持ち、気配りに長けた人物である。


 太守カートクより、剣術指南役を任せられるほどの剣の腕を持ち、カートク家は勿論のこと旗本を始めとした御家人たちが彼の弟子となっている。


 その顔もあって初見ではまず恐れられるが、その細やかさ故、人望も厚く仕事人達や旗本達の多くから慕われている。


 カートクは、ゴノジョウの軍団長に任命したいと思っているが、フジタカは、あぶれ者の仕事人達を取り纏める者が必要だとして、萬請負処の頭目に納まっていたため、出張で剣術指南を任せる事しかできないでいた。


 そんなフジタカが慌てているのが事態の深刻さを表していた。


「狼煙が上がった、飛竜が来るぞ。おかみからの緊急依頼だ。戦える仕事人をすぐに卯門へ向わせろ。ここにいない仕事人もだ。戦えねえ奴は街の者の避難誘導だ。」


 フジタカの指示で、番頭や奉公人がテキパキと動いている。ある者は中にいる仕事人に伝達し、ある者はここを出て仕事人を探しに、卯門の受付の準備をしたりとしていた。


 萬請負処の中は騒然としながらも、着実に準備を整えていた。そこへ3人の男女が入ってきた。


「父上!」


「ホノカか! ここでは頭目と言えと言っているだろうが!」


 ホノカとラムル、リンだった。フジタカは、ホノカの父になるが、この萬請負処の中でホノカに『父』と呼ばせるわけにはいかなかった。仕事と私情を一緒にしない真面目な男である。

 ホノカはそのフジタカの言葉に眉をしかめながらも彼に問いかけるのだった。


「そのようなことを言っている場合ですか。この騒ぎはどうしたのですか?」


「飛竜だ。お前もすぐに卯門へ向え。私も後を追う。スズカもコンゴウも向うにいるはずだ。」


「何で飛竜が? 100年以上山を出たことがないはずでは?」


 飛竜が出たと言うフジタカに疑問を挟むホノカ。飛竜が山を出たのは。記録に残っているか限りでは100年以上前に一度だけのはずだ。普段は山の全域を狩場にして山から出てくることはなかった。100年前は、火山の噴火によって山の生態系に異常がでて餌となる魔獣が激減したため、森の獣や魔獣を襲っていたらしいのだ。だが、今はそんな状態でもなく、飛竜が山から出てくる理由がわからない。


「そんなことは知らん。あれを街へ入れたら、壊滅的な被害が出る。そんな時の為の仕事人でもある。今更、言うまでもないぞ。」


「わかった。だが、その前にこの方々を臨時仕事人として登録してください。ただ働きをさせるわけにはいきませんので。」 


 フジタカはその時、初めてホノカの後ろにいる二人に気が付いた。


「そやつらは?」


「ラムル殿とリン殿です。飛竜討伐に参加してくれます。」


「ラムルだ。よろしく頼む。」「リンです。お願いします。」


 ラムルとリンが頼むと、二人の実力を測るように睨み付けているフジタカは数秒後に口を開いた。


「よかろう。だが、今は時間が惜しい。ホノカが卯門まで連れていくがよい。正式な手続きは落ち着いてからにしろ。」


「判りました。では参ろうか、ラムル殿、リン殿。」


「ああ。」「うん。」


 眉を顰めたホノカを先頭にラムルが憮然として、リンが軽く会釈をしながら、萬請負処から出て行った。


 フジタカはそれを見届けると


「なんだ。あの者達は、特にあの男には強者つわものの気配が全く感じられないにも拘らず、一分の隙もなかった。

 それに娘の方も只者じゃないな。霊気か、精気か、判らんが、独特の気を纏っていたようだが・・・。」


そう独り言ちた。


 フジタカは、あのラムルと呼ばれた男が隠密の類かと一瞬思った。野生の獣が気配を消すように、強者が強者に見えないように、だが、剣を向けた瞬間に斬り伏せられる。そんな予感がしていた。表情は取り繕いつつも、背中一面にいやな汗をかいていた。

 どういう経緯でホノカと会ったのか気になるところはある。娘の方とホノカはほぼ互角かややホノカが有利だろう。男の方なら確実に瞬殺されると見て良いだろう。歴戦の仕事人どもと比べても勝てるかどうか。まるで羊の皮をかぶった狼だな。いや、狼など生ぬるいか、神獣とかか・・・。 


 ラムルもリンもパルミの森での特訓の成果で身体能力が大幅に上がっていた。

 ラムルはA等級ランクの魔物なら、1対1で負けることはない。S等級である魔狼王フェンリルロードのシェンランや白虎牙ホワイトファングのコーガとの模擬戦の勝率も3割前後である。

 一方のリンもB等級の魔獣ならなんとか勝てるレベルまでに達していた。パルミの森の深奥には回復薬や解毒剤の材料の群生地もあり、そういった物の作成にも不自由しなかったので怪我をする度に回復薬を使い、毒を受けてもすぐに解毒ができて体力が続く限り訓練を繰り返した。おかげで戦闘力だけでなく、調剤の技術も上がり、補助していたレイクとの連携もスムーズに行えるようになっていた。水精霊レイクの分霊もそれに比例して力をつけていた。


「今はあの者たちの事より、飛竜の対処に集中せねばな!」


 フジタカは気持ちを切り替えてそう言った。今は力強い助っ人が現れたことに感謝しよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ