第28話 好敵手
「そろそろ、体が温まって来たなぁ。本気で行くぞ。」
ダルマークの気が膨れ上がる。俺は直感であれは受けられないと感じた。あれはまともな攻撃じゃない。
ダルマークが、斧を振り上げ両手を使ってプロペラのように頭の上で回す。強烈な風が戦斧から巻き起こり全てを吹き飛ばし始めた。
「ダルマーク、こんな所でそれを使うつもり!?」
「リン、エレーサさん、防御しろ!」
エレーサさんは驚き、俺は二人に防御の指示をした。そしておれは…、
「武器召喚! 重装盾!! 機神召喚! 腕!!」
「物理障壁!!」
巨大な盾と機神の腕を召喚し、その盾を機神の腕でつかみ、盾のスパイクを地面に打ち付けて固定した。
それと同時にエレーサさんはリンと共に対物理障壁を張った。
その瞬間…、
「殲滅地極戦斧!!」
戦斧が振り下ろされた。戦斧の強大な衝撃波が地面を揺らし、大地を放射状に割ながら広がって行く。それは、数十mの広さの大地をズタズタに引き裂き、有り余る衝撃波は、付近の護衛達全員を吹き飛ばし、門は塀と共に崩壊、屋敷も一部が崩壊した。
そこに立っているのは、俺とダルマーク、エレーサさんにリンの4人だけだった。
「むう、これも凌ぐか。」
俺は、門があった場所の向こう側をチラッと見る。通行人らしき何人かがその場に倒れていた。どうやら、巻き添えを喰らったものがいる様だ。
「チッ、てめえ、やり過ぎだろうが。何考えてやがる。」
「いやぁ、兄さんを倒すのはこれくらいしないとと思ったんだが、ダメージを受けてないとはなぁ…。」
「やかましい、加減を考えろ!!」
巫山戯た様なことを言う奴に、切れた俺は機神の拳を打ち込んだ。奴は斧の腹でそれを受け止めるが、拳の衝撃が奴の体を突き抜け、地面にボロボロの地面にクレータ状の穴を穿つ。
「ちょっ、なんだよその腕はっ!!」
「お前に説明することは何もない。覚悟しろ!」
「4本も腕があるなんて反則だろうが。」
奴は焦り始めた、俺は機神の腕で殴りつけ、偑月刀切りつける、絶え間ない俺の攻撃に次々と穴が増えていった。
「ドゴンッ!」
機神の拳が奴の胴体にヒットし、鎧を砕いて生身の体に衝撃を与える。
「ぐはぁっ!」
奴は崩れ落ちかけるが、なんとか踏ん張り、次の攻撃を防ぐ。
「きさまぁ、許さねぇぞ!!」
「なにっ、機神の拳を受けて立っていられるだと!」
有り得ないことだった。機神の打ち出す拳は人を即死させる威力がある。鎧で衝撃が緩和されたとはいえ、直接届いたはずだ何故立っていられる。
それだけでなく、奴の戦斧のスピードが上った。こちらの攻撃を受けるだけでなく徐々に反撃をしてくる。
「うぉぉぉっ!!!」
奴の戦斧が俺の頭めがけて振り下ろされる。
「うぐぅぉ!!」
俺は機神の両腕を交差させて防ぐが、衝撃波は腕をすり抜け、俺の体にダメージが入り、余波が地面を抉る。
奴もまた、機神の拳を何度となく受け、鎧がボロボロになっていたが、倒れることはない。
機神の拳が、奴の戦斧が、お互いにダメージを与えつつ、地面にも穴をあけ続ける。
「広域完璧障壁!!」
エレーサさんの発動呪文が辺りに響くと、周囲に不透明なドームが展開された。
その間も俺は奴に攻撃を加える。その度に衝撃波で地面が抉れ、破壊的な礫が宙に舞う。エレーサさんの障壁が無ければ、周囲への被害は甚大だっただろう。
「くっ、このう!!」
奴が戦斧を振り下ろす。俺が避け地面が更に砕ける。上空へ逃げた俺を追って、下から上へ戦斧と異常な速さで振り上げる。
「うおぉぉぉ、戦斧衝撃波!!!」
戦斧が音速を越えて振り抜かれ、それが衝撃波となって俺に迫るが、空中では身動きが取れず逃げ場はない。
「たくっ、アリス!!」
(右腕部、 貫爪展開、高速回転!!)
機神の右腕から、手首を覆うように4本の爪が延び、それが高速回転を始める。
「旋風破壊拳!!!」
回転する右腕を思いっきり振り下ろす。右腕から竜巻が発生し、衝撃波を迎え撃つ。
「ぐおぉぉぉっ!!!!」
「「きゃぁぁぁぁ!!!」」
竜巻と衝撃波が激突し、爆音が辺りに響き渡った。
エレーサさんとリンの結界の中まで爆音が響き、あわてて両耳を塞いで蹲った。
竜巻はしばし衝撃波と拮抗していたが、やがて、衝撃波が霧散し、竜巻がダルマークに直撃した。
砂煙に覆われた、地面に着地した。
「ははは、楽しいねぇ。これだから戦いはやめられない。」
砂煙が晴れると、ほぼ上半身が裸のダルマークが戦斧を構えて立っていた。
「まったく、どんだけ頑丈なんだよ。」
と俺が言ったとき、エレーサさんの声が響き渡った。
「いい加減にしないさい!!!」
俺と奴は、動きを止め、お互い視線を合わせるとエレーサさんの方へ視線を向けた。
「呪縛結界!!」
エレーサさんが再度呪文を唱えると、俺と奴の足元に魔法陣が現れ俺達は透明な円柱に
閉じ込められる。
「エレーサさん!?」
「姉さん!?」
「あなた達、ちょっと調子に乗り過ぎじゃないの。」
「「!!!!」」
「お母さん!?」
エレーサんから魔力はあまり感じないが、体がスパークを発し、やばいオーラを放っている。
「ねえ、お仕置きが必要だと思うのだけど、どう? どう思うリン?」
「えーっと…、さすがにこれはやり過ぎじゃないかと…」
周りを見ながらリンが言う。
「あのぅ、エレーサさん!? キャラ変わってませんか…?」
「あら、わたしは、いつも通りよ、ラムル!」
「姉さん、すんません。お仕置きだけは勘弁してください。」
「あらあら、でも、もう決めちゃったのよ。ダルマーク。」
「こそをなんとか。私が悪うございました。調子に乗ってやり過ぎました。今後は己を律し無闇に技を発動いたしません。」
奴が、大きな体を小さくして円柱結界のなかで素早く土下座をして、頭を地面に擦り付けている。見事な土下座だ。しかし、なぜそこまで必死になってエレーサさんに謝る。確かにエレーサさんの魔法は、殲滅魔法がメインで威力も桁外れで、魔力の量も半端ない。だが、こんなところで殲滅魔法を使うとは思えない。
「おい、ラムルだったか。お前も謝るんだ姉さんのあれを喰らったら、お前もただでは済まないぞ。」
「なんで、俺が謝らないといけない。俺はエレーサさんを助けに来ただけだぞ。」
「状況をよく見ろ。これは、俺だけが原因じゃないぞ。」
「そりゃあ、俺のせいじゃなく、あんたが攻撃してきたから反撃しただけじゃないか。」
「おまっ、そんなことを言ってると…、」
「言い訳はもういいのかしら?」
「姉さん…、げっ!」
エレーサさんは、右腕を上げ、人差し指をたて空を指差した。そして、ニコッとこの上無い笑顔を俺達に向けが、その目は笑っていなかった。
「先に言っておくとね、これを受けたら、一般人は死ぬわ。あなた達なら大丈夫だろうけど、結界で動きを止めてるから避けられないし、雷無効の装備でもない限り確実にダメージは通るわよ。」
「待ってくれ、エレーサさん。俺はあんたを助けに来たんだぞ。」
「そうね、それは感謝しているわ、ラムル!」
「なら…。」
「でもね、そのダルマークと2人でこの屋敷の庭を無茶苦茶にしたのは事実でしょ。貴方が全力を出せば、もっと簡単にダルマークを倒せたはずよ。違う?」
「まあ、出来んこともないだろうが、そんな簡単でもないぞ。」
「でも、出来たのよね?」
「ああ、まあ…。」
「なら、半分はラムルさんの責任だわ。無関係な何人かが倒れたのよ。あわてて、障壁を張ったけど、間に合わなかったわね。」
「うっ!」
「さあ、いくわよ、覚悟はいい?」
「「!?」」
掲げた指を中心にドーム状の障壁の内側に雷雲が広がっていく、それと共に指先に魔力が集中し、体に纏っていたスパークが指先に移動する。ドームの上部を覆う雷雲の中で稲妻が走り、今にも落雷が来そうな感じだ。そして、指が振り下ろされた。
「雷爆!!!!」
指が振り下ろされると同時に呪文が発動し、数十の雷が俺と奴の円筒形の結界の中を駆ける。結界で身動きの取れない俺達にはそれを唯見ているだけしか出来なかった。雷は結界に何度も反射する為、その威力が減衰することなく、むしろ数倍に高められる。それを俺は、スローモーションの様に感じながら見ていた。
「「ぐわぁぁぁっっ!!!!」」
そして、悲鳴を上げ、俺達は意識を手放した。




