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気まずい2人(冷凍できる納豆炒飯)

「だぁからー!部長は厳しすぎるって言ってるんですよーぉぉ!!」


「井草、飲み過ぎだ...」


「いつも怒ってばっかり!自分が一番仕事できるからって!!ムキーーーッ」



さんざん叫び散らすと、詩織は机に突っ伏した。


「さっきみたいな『よく頑張ったな』の一言だけでも、報われるのに...私、もっと褒めてヨシヨシしてくれる優しい上司がいい...むにゃむにゃ...」


「まいったな...」


眠り込んでしまった詩織を目の前に、部長はため息をついた。






翌朝、目を覚ますと詩織は知らない部屋にいた。


「へ!?あれ??ここどこ??あれ?」


「やーっと起きたー?もう12時よ?」



隣にいたのは香織...と、その肩にのった納豆親父。


「ヨッ、昨日は派手にやらかしよったな」


「コンペ1位のこの花野サマが、スペシャル豆乳スープつくってあげたわよー!1杯500円(税込)!」


「ワレ商売上手やな〜ゲゲゲ〜〜」


「今日はアタシもあんたも、1日休みでいいってさ、両部長も了承済み。」



いつの間にか香織と納豆親父が意気投合している。

香織がスープを注ぎに立ちあがると、納豆親父は机にスプーンを並べ始めた。



「え、えーっと、ツッコミたいところは色々あるんだけど、その前に...麻布でご飯食べてて、それから私......」


「やっぱり、何も覚えてないんやな...」


「昨日の夜中に、白石部長...豆乳部門の部長から電話があって、お願いがあるのって言うから何事かと思ったら、あんたの部門の部長が酔い潰れたアンタをお姫様抱っこして現れたわけ。」


「おひめ。」


「ま、つまり、あのレストランで、詩織は酔い潰れたんや。部長のこと散々なじっとったで。かと思えば、『アタシのこともっと褒めて〜♡』とかも言うてたな」


納豆親父は香織の膝にしなだれかかりながら、「ヨシヨシしてぇぇ〜や♡」と甘える仕草をした。ゲラゲラと爆笑する香織。恥ずかしさで真っ赤になる詩織。


「うそ...嘘でしょ!?」






翌日、出社した詩織はとりあえず部長に頭を下げた。


「申し訳ありませんでした!!!」


「問題ない。昨日を取り返す勢いで働いてくれればな。」



いつも通りの鬼部長...変な空気にならなくて良かった...と、詩織がホッとしたのもつかの間、部長がスッと立ち上がり、詩織の頭に手を置いて囁いた。



「それにしてもあのワンピース、よく似合ってたぞ。ヨシヨシ。」




詩織の顔から火が出た。






コンペで宣言通り1位をとってから、香織は2位の詩織を妹分のように扱っていた。と言っても主従の関係ではなく、ランチに誘ってくれたり、仕事で有益な情報を共有してくれたり、どちらかというと可愛がる対象となっているようだ。


今日はお弁当を持って、会社の屋上に来ていた。ここなら、人が来ないので納豆親父も自由に外の空気を吸える。




「で、今日もヨシヨシされたわけ(笑)」



あの部長が褒めているだけでも面白いのに、からかうと詩織も顔を真っ赤にさせて過剰に反応するものだから、香織も納豆親父も面白がってやめてくれない。



「部長も部長やな、あれ、すごい頑張って褒めてるで、口の端プルプルしよったやん」


ギャーハハハと2人は笑った。



「もうヤダ...何の罰ゲーム...」



詩織も自分で言ってしまった手前、やめてくださいとも言えず、部長の手を受け入れざるを得ないのだった。



「お、詩織、今日の昼飯うまいな」



納豆親父が詩織の弁当に手を出していた。今日の弁当は納豆炒飯だ。

ネギとニンニクと生姜をみじん切りにして、ごま油で炒めて香りをだしたら、ご飯と卵と納豆を加えてパラパラになるまで強火で炒める。

塩胡椒と、鶏ガラスープの素で味を整えれば完成だが、辛党の人は豆板醤を少し加えても美味しい。

冷凍しておけば、朝は電子レンジで温めるだけでお弁当の完成だ。




しばらくの間は、なるべく部長と関わらずに仕事しよう...詩織がそう思った矢先だった。


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