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俺はぼそっと呟く。
「俺達、何の為に働いているんだろな」
「そりゃあ、参汰、夢見る子どもたちの為だろ。それが俺達の仕事じゃないか」
「俺、お前の一般論はあんまり好きじゃないよ」 まあ、そんなもんか。俺は諦めたように溜め息をはいた。
「そ、そんな事を言われても…。それ位しか思いつかないよ。まあ、この一般論は此処では参汰にしかあてはまらないけれどな。」
全く、こいつは。最後の一言はいらないだろ。自分がそうじゃないからって。厳ついのは本当、見た目だけだよなぁ。まあ、それがこいつのいい所なわけだが。
俺の幼なじみである優は見た目の厳つさだけをかわれてクランプ課に入ったらしいが、やっぱり、こいつにはサンタクロースの反面であり、子ども達に恐れられるクランプは合わないんじゃないかとも思う。(因みに俺も優も日本サンタクロース支部勤務だが、俺はサンタクロース課である)気弱だし、名前の通りに優しいし。でも、本人は案外乗り気でやっているみたいだから、まあ、いいか。
苦笑する優を見ながら、俺も内心苦笑する。
実はこの状況にも、一応、いきさつがあるわけだが。
俺は仕事が終わって、帰ろうと会社の廊下に出たところで、こいつに呼び止められた。
「よお。良かったら今日、飲みに行かね?」
俺はにこやかに返す。
「嫌だ☆」
語尾に星が付いたような気がする。
颯爽と去ろうとすると、肩を掴まれた。
「えええ!?何その反応!?頼むよ、今日だけでもいいから、付き合ってくれよ!独りで飲むとか、寂しいだろ!?」
いやいや、そんな事言われても。付き合ってくれって、告白かよ。男同士は勘弁かな。まあ、それは無いか。有っても困る。
俺は渋々、といった感じで振り向く。
「いいよ。まあ、俺も丁度、相談したいことが無いわけじゃないからな」
「なら、最初からそうしろよ~!!」
俺は優の嘆く声を聞きながら笑った。
と、まあ、そんな訳で今に至る。
「……てな訳で、ゆきとはちょっと険悪になっちゃってる」
せっかくなので、そんな優に昨晩の事を話してみた。軽い相談程度だ、簡単に状況を説明した。
「ええ……。それは参汰が悪いよ……」
優は呆れ気味で俺を見る。えっ、そんなに俺が悪いのか?
優が俺の様子を見ながら、
「……どうやら、その様子だと、全く自覚していないようだね」
「まあ、うん」
俺は頭を掻きながら優から目を背けながら言う。
「はぁ……。全く。女心が解ってないねぇ」
なんか、癪に障ったので、俺はすかさず言い返す。ていうか、お前も男だろうが。それに、
「いやいや、彼女が居ないお前に言われたかねえよ!!」
「ま、まあ、そうかもしれないけれど、悪いのは参汰だよ」
俺の言葉に怖じ気づきながらも、ちゃんと言い返してきた。
「そ、そっか。何でそう思うんだよ?」
じゃあ教えてあげるよ、と優は説明を始めたのだった。
あれから酒も進み、随分と話込んでしまった。
家に帰った時、既にゆきは寝てしまっていた。まあ、無理もない。夜遅く帰った俺が悪いのだ。優の見解を聞いて、ゆきには直ぐにでも謝りたい気分なのだが、寝てしまっているのだから仕方がない。なにせ、明日はクリスマスの前日だ。言い換えれば、俺達サンタクロースの勝負の日。謝るのはその後からでもいいかもしれない。いや、良くないのかもしれないが、取りあえず俺も明日に備えて寝るとしよう。
クリスマスまで、あと2日。
前回の連載からかなり経ってしまいました。クリスマスはもうとっくに済んでいるというのに。予定では、あと1話で完結です。
長らくお待たせしました。