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連載第二回です!良かったら、読んでみて下さい!
色々あった日の翌日だとしても俺は会社に来なくてはならない。いや、だって、給料を貰わないと食べていけない訳で。
うーん、そもそもなんであんなに怒っていたんだろう。俺、なんかしたっけか。いや、していない。(反語)あれって、お互いが社会人になった男女間でよくあるという、「私と仕事、どっちが大切なの!?」現象だよな。いや、なんだそれ。
と、そんな事を考えていると上司が、
「おーい。そこ、手ぇ止まっとるぞー」
なんて、こっちを見ながら言っている。
「……」
「おい、お前のことだよ。どうした、今日はなんか元気ないな」
と、俺の肩を叩いた。
「あ、すみません!いや、たいしたことじゃないんで……」
「ふーん?そっか、ならいいんだが。あ、そう言えば、昼休みが終わったら、管理室に来てくれ。お前に伝えたいことがある」
……?俺、なんかしただろうか。一応、人並みにはやっているつもりなんだけれどもな。
「あ、はい。解りました」
兎に角、作業を再開する。俺としたことが。本当に不覚だ。
俺が働いているこの会社は、サンタクロース日本支部。そう、かの有名なクリスマスの日の子ども達の憧れ、サンタクロース達が勤める会社である。かく言う俺もこの会社のサンタクロース課に勤務しているので、サンタクロースである。しかも、国に認められた合法な会社だ。というか、聖夜に人の家に不法侵入するのは毎回気が引けるが、実は国に認められているため、変なことさえしなければ、大丈夫なのである。
そして今は、子ども達の元に届けるプレゼントのチェックとその荷造りをしている。かなり大変な仕事である。でも、もう慣れてしまった事だ。
「本当に済まないな、黒須。俺のせいで、お前の仕事が増えちまって……」
突然、先輩が話しかけてきた。どうやら、俺の仕事が増えてしまったことを気に病んでいるらしい。
「何言ってるんですか、先輩。俺が好きでやってることなんで、いいんですよ」
俺が笑顔で返すと、先輩は頭を掻きながら、
「そ、そうか。本当に済まないな」
と、言葉を残して去っていった。まあ、増えた仕事というのは、一晩で届けなければならない世帯数だ。と言っても、流石に俺ひとりではやり遂げられない数である為、他の同僚と分配して行う事になっている。だから、大して無理はしていないはずだ。うん。そもそも、ことの発端は、件の先輩が骨折をしてしまい、クリスマスイブの配達が困難になったことにある。ここで先輩を憎むのはどうかと思うので、これ以上は考えないことにしておこう。
あ、そういえば。ユキが言っていた「貧乏くじ」って、もしかしてこのことを言っていたんじゃ…。
と、そんな事を考えつつも、プレゼントのチェックが大体終わった。後は荷造りだ。そこで、昼休みの放送が鳴った。
昼休み。昨夜、あんな喧嘩をしたせいで、勿論、昼飯が用意されるはずもなく。仕方なく、俺は仕事場の近くにある惣菜屋で弁当を買って食べることにした。
その弁当を食べ終え、伸びをしていると、その場にいた同僚の一人が顔をしかめながら言う。
「そういえばさ、黒須、知ってるか?ここ最近、課長達が異動させる奴を決めようとしているらしいぞ」
「へぇ、そうなのか。まあ、俺達には関係ないことだろうよ。異動させられるようなことはしてないし」
と、俺は素っ気なく答える。
「まあ、噂だからな。気にすることはないだろうよ」
同僚もまた、興味がなさそうに言った。
異動はかなりのリスクが伴う。慣れない土地で仕事をしなければならなくなる。そもそも、この仕事は異動となると、海外の支部に行かねばならない。それに、せっかく作り上げた人間関係を諦め、異動先でまた作り直さなればならなくなる。そういうのはちょっときつい。でも、南の島とかなら、いいかもしれない。なーんてな。
すると、同僚が急に怪訝そうな顔をして俺に言う。
「あれ、そう言えば黒須。さっきさ、上司に呼ばれてるって言ってなかったか?」
俺はキョトンとした顔で同僚の顔を見ていたが、ふと、事の重大さに気づくと、何も言わずに慌てて休憩所を飛び出した。多分、俺の顔は今、かなり青ざめていると思う。
「おお、急いだ方が良いぞ~。なんか知らんが、頑張れ~」
なんて、依然、顔が青ざめたまま駆け出した俺の元に、そんな呑気な掛け声が届いた。
管理室に着くと、俺は扉の前で上がった息を整える為に深呼吸をする。いつだって、管理室に入る時は緊張するのだ。
俺は意を決して扉のドアノブに手をかける。
「失礼します」
すると、中で待っていたのは、課長だった。
課長は笑顔で俺に入室を促す。
「おお、入れ」
「はい。えっと、ご用件は何でしょうか」
俺はその先を促す。
「ああ、君を呼んだのは他でもない。伝えないといけない事があってな____」
やっぱり、クリスマスには間に合いません。それでも、完結はさせたいと思います。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます!次回も読んで頂けると嬉しいです!