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窮地

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「玄さん!一大事だ!」


簡雍は、大急ぎで外着に着替えると、劉備の部屋に飛び込んだ。


すると、そこには既に武装した劉備がいた。


「憲和も気づいたか。昔、近所で火事があった時のことを覚えてるか?」


「・・・ああ。」


「なら、多分わかってると思うが・・・あれは普通じゃねえ。数棟同時に燃えてなきゃありえねえ明るさだ。」


「同時ってことは、誰かがつけたってことか。」


「わからん。一先ず、様子を見に行くぞ!逃げ遅れた人がいるなら救う!」


幼き劉徳然を護衛に任せ、二人は外に飛び出し、火が立ち上る方へ走った。


「山賊だ!」「早く逃げろ!」「殺されるぞ!」


道中すれ違った人々は、皆口々にそう言っていた。

正確な数はわからなかったが、中身が現代人の簡雍と、まだ15歳の劉備が立ち向かっても、返り討ちにされるのは目に見えていた。


「玄さん!」


簡雍は、咄嗟に劉備を呼び止めた。


「何だ!」


即座に劉備は振り向いて返事をする。簡雍は既に息も絶え絶えだが、劉備は息切れ1つしていない。


「相手は山賊だ!俺達二人だけじゃ勝ち目がない、一度戻って増援を呼ぼう!」


「それはできん!あれを見ろ!」


劉備が指さした方を凝視すると、簡雍の眼に、山賊に蹂躙されつつある、逃げ遅れた人達の姿が写った。


「確かに、増援を呼べば勝てるのかもしれん。確実に生き延びられるのかもしれん。だが、俺は目の前の人々を見捨ててまで、自分の安寧を守るつもりはねえ!」


そう言うと、簡雍が止めるのも聞かず、劉備は飛び出していった。

大急ぎで後を追う簡雍は、何故か高揚感を覚えていた。不思議だ。行けば死ぬとわかっているのに、それも悪くないとすら思える。これが、劉備玄徳という男か。



「てめえら!これ以上好きにできると思うな!」


遠くから劉備の大音声(だいおんじょう)が聞こえる。山賊が一瞬動きを止める。

山賊は十数人はいた。いくら劉備でも、一人ではそう持たないだろう。簡雍は渾身の力を両足に込め、既に限界を迎えつつあった身体を走らせるのであった。


劉備side


「てめえら!これ以上好きにできると思うな!」


「なんだぁ?てめえは」


一瞬の硬直の後、女性に襲いかかっていた山賊がこちらを睨む。お楽しみを邪魔しやがって・・・そんな感情を、顔面にありありと浮かべながら。


「よく見たらガキじゃねえか。殺されたくなけりゃ、おうちに帰りな。俺達はこれからお楽しみの所なんだからよお!」


言い終わるや否や、山賊は地面に置いていた斧を持ち、劉備に飛びかかってきた。劉備は剣を抜き、無我夢中で斬りかかった。


山賊が振り下ろした斧と、劉備が切り上げた剣とが衝突する。次の瞬間、山賊は斧ごと真っ二つになっていた。


「・・・!こいつ、できるぞ!」


先程まで油断し、緩み切っていた山賊達の顔は、劉備を確実に仕留めようと、一切の油断なく狙う猛獣の顔になっていた。


一斉に襲いかかってきた。劉備は襲いかかってくる山賊たちをどうにか捌いているが、後の英雄といえども、今は経験が足りない。構えが崩されるのも時間の問題である。そうなれば終わりだ。


戦っていくうちに、劉備は意識が前に前に行っていた。そこを突かれ、山賊のひとりが自分のの後ろに回り込んでいることに気が付かなかった。殺気に気づき、劉備が振り向いた時、山賊は既に斧を振り上げていた。ここまでか・・・!劉備は死を覚悟し、目を瞑った。だが、斧が振り下ろされることは無かった。簡雍が、山賊に体当たりをしたからである。


「間に、あった・・・!」


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