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前世の記憶を持つ天才薬師  作者: 覡
第1章 幼少期
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研究

青花弁を摘み、ウィルたちと少しお話をしながら寛ぎ、家に帰宅した。

アンは俺が青花弁を幾つも持っていることに驚いたが、友達がくれたんだと主張すると首を傾げながらも頷いてくれた。


研究に使うのはまずは1本だ。

それ以外の青花弁を水にいけてやり、1本だけを持ってチェスターの研究室へ行く。

チェスターはまだ帰っていない。薬草を摘んだら時期にかえってくるだろう。


青花弁を解熱剤として体に取り入れる場合、多くは花を紅茶のように煎じて飲む。

つまり、花の成分をお湯で滲み出しているのだ。

ということは解熱成分は花にあるとみた。

花弁を2~3枚剥がし顕微鏡で細胞を見る。

チェスターが使っている薬品を勝手に使い反応の確認。

それが終わったら別の花弁を溶液につけてそちらの反応も見る。ついでに茎もつけておこう。

こっちは時間が経ってからでいい。さて次は…


と、研究を進めていると日が落ちてきたことに気付いた。

室内をオレンジ色の光が窓から照らし、影は反対側に濃く長く伸びている。

俺は研究を一度やめ部屋の電気をつけた。

そういえば休憩していなかったから、そのまま椅子に座って天井を見上げる。


研究はなかなか良い感じに進んでる。

むしろなぜこの世界の薬師はこうやって調べていないのか疑問だ。調べたのか?いや、調べているなら図鑑に乗っているはずだからそれは無いか。

この花は解熱作用があるって分かっているのに、その成分を調べていない。

最初の実験台になった人は奴隷かなにかか、死んでもよかったのだろうか。

実際毒草なんかも成分は書かれていなかった。ただ症状と結果しか書かれていないのだ。

つまりこの世界、あるいはこの国の薬に関する研究はだいぶされていない。実験こそされてるから実用性のある草や花だけは分かっている、という具合だ。


薬師の仕事も、チェスターは分量通りに草花を調合してポーションを作っている。

勿論研究もしているが、今ひとつ分かっていない。

例えば核を見ても、そもそも細胞の違いを分かっていない。故に、核は見やすくするための色付けをすると浮かび上がる点とされている。

それに、チェスターは植物細胞しか見ないから当たり前のように細胞壁と液胞が植物にしかないことを知らない。

こういった点で、この国の薬学、あるいは生物学は前世に比べて劣っていると言えるだろう。


まぁそれはいい。僕が大きくなって研究成果を発表できる日が来れば、教科書を最初から最後まで読み上げてやればいいのだ。

ちなみに前世では学生時代、生物と化学だけはいつも偏差値65を超えていた。それ以外は至って平均、それ以下だったかもしれないが。

そしてそれは社会に出てからも研究者として発揮されていた。中学高校時代の愛読書は生物の教科書だ。理科大好きオタクだった。科学は人並み以上程度の度量だったけど。


ふと、アンの俺を呼ぶ声が聞こえる。夕飯の時間だ。


食卓につくと、チェスターがまだ帰ってきていな

いことに気付いた。

どんなに遅くても夕飯の時間にはいつも帰ってきていた。なのに、まだ帰っていない。

今までに無いことなので動揺した。アンも不安がっている。

ちょっと森に探しに行くと席を立つと、夜の森は危ないからダメだと促された。


チェスターのいない食卓は静かだ。

いつもはチェスターが食べながら話題を振り、それを俺とアンが頷きながら、偶に答えながら食事を進める。チェスターはいつも家の会話の中心にいた。


結局その日はチェスターは帰ってこなかった。

不安に思いながらも、少し遠くへ行って日が暮れたからどこかで野営をしているのだとアンは推理していた。

きっとそう。きっとそうなんだけれど、凄く悪い予感がした。

胸が、何故かざわついた。


そして翌日も翌々日も、チェスターは帰ってこなかった。

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