友達
翌朝。
チェスターにウィル・オー・ウィスプのことを話すと、チェスターは顔を青くさせ俺を触りまくった。
「怪我は、ないんだな?」
「はい、話した通り快く迎えてくれました。」
俺の言葉に胸を撫で下ろしながらも、チェスターはまだ俺の顔をテチテチと触っている。
それほど異族は危険な存在だとされているという再確認になった。
あまり人には話さないようにしよう。
まぁ話す相手なんて両親くらいしかいないんだけれど。
「んー、でも念の為武具を持っておいた方がいいかもな。これからは森に1人で入ることも有るだろう。」
「え、入っていいんですか!?」
「そうだな、昨日がその第1歩だ。」
なんと、昨日の1件でチェスターは俺を認めてくれたのか、森に入ることが可能となった。
それと同時に、簡単な防具や武器も買ってくれるらしい。護身程度にだが。
家を出て西に進むと角に武具屋がある。
そこでチェスターが俺の身丈に合うものをいくつか選んでくれた。
鏡に映る姿はRPGゲームの見習い冒険者のような服に身を包んだ銀髪癖毛の俺だ。
護身用の短剣を腰にのベルトにさせるようになっている。
子供の俺でも持てるような小さい奴だ。
と言っても、きちんと切れるし刺せる。
この街はどうやら冒険者と旅人の街と呼ばれているようで、こういった武具屋を初めとした冒険、旅に役立つものが街中に揃っているらしい。
俺ももし冒険者になるようだったら揃えてから旅立てるというわけだ。
「まいどあり〜」
店主の声を背中に、俺はチェスターと店を出た。
そして、目の前の北西の森に入る。
いつもとは入口は少しずれていても、歩き慣れた森だ。
少しずつ薬草を採取しながら歩き、開けた場所に出る。昨日あの火の玉と出会ったところだ。
火の玉…んーー。ウィル・オー・ウィスプは長いのでウィルと呼ぶようにしよう。
して、ここでウィルと出会ったが故に昨日はここにある薬草を持って帰らなかった。
今日はここでその薬草を取ろうという意気込みだ。
「シアン、父さんは森のもう少し先に行ってくる。採取が終わったら家に帰るから、シアンも欲しいものが見つかったら先に帰ってなさい。」
「はいお父さん。いってらっしゃい。」
チェスターを送り出し、昨日同様草を漁る。
すると、こちらも昨日同様視界に動くものが見えた。
「ウィル…?」
「シアン!」
昨日ここで迷子になっていたウィルが、そこにいた。
「どうして…、また迷子ですか?」
「ううん!シアンに会いに来たんだよ!
あぁ敬語はよしてよ、僕達友達でしょ!」
そう言ってウィルは戸惑う俺の頭に乗っかった。
友達。この生を受けて初めての友達。
同じ種族ではないけれど、友達。
「友達……嬉しい、えへへ。」
気付いたら俺は笑っていて、声が出ていた。
ウィルもそれに気づきコロコロと笑う。
「あのね、あのね、シアン。友達はね、沢山の方が楽しいの、だからね。連れてきたの。」
笑いながら、ウィルは言う。
連れてきた?何を?
キョトンとする俺だったが、答えはすぐにわかった。
奥の森から、1、2、……10数匹のウィルがでてきた。
「仲良くしてね、シアン!」
「人間の友達、シアン、嬉しい」
「シアンよろしくね、楽しいね!」
「よろしく、シアン」
同時にたくさんの挨拶が聞こえる。みんな、友達になってくれるようだ。
「シアンです、よろしく。」
そうして、俺は初めての友達たちが出来た。
全員ウィル・オー・ウィスプだけど。