土人形
グラウンドについてフランと向かい合う。
今日の目標はフランが先程読んでいた魔法書に書かれた魔法を理解することだ。
「どんな感じのことが書かれていたんだ?」
といっても、俺は読んでいない本なのでなんの魔法をするのかはわからない。
なんなら、俺も理解が出来ないかもしれないから、その場合図書館に1度戻って俺もそれを読む必要がある。
「土魔法の本なんだ。土人形を作り出して動かす魔法。シアンはやった事がある?」
「土魔法か、んーー、木とかでなら作ったことがあるからその応用かな…。」
ウィルとともに森で遊んでいた頃に落ち葉や木の枝などを使って動く人形を作ったことがある。
それの土版だと思えばいいのかな。
「んー、あれ。上手くいかない。」
森で作った時にはそれぞれをくっつけてひとつひとつに意思を通すことで思い通りに動いた。
しかし、土魔法でそれらしい形はできても動かない。
「シアンもか、こっちも形を作るところまでは出来るんだけれど動かないんだよ…。」
フランがはぁと大きなため息をついた。
本を読めばこの仕組みは分かるだろうけれど図書館まで行くのも億劫だ。
1回目はダメでも何度かやれば出来るかもしれない。
俺は再び指先に魔力を込め土を操っていく。
「だめだめ、全体に魔法をかけたって動かないよ。」
ふと、足元から声がする。テンに化けたウィルだった。
いつの間に首元から降りていたのだろう。
「こうやって、部品ごとに作っていくんだ。手、足、体、顔。それぞれで作ったあとに合体させる。」
ちょいちょいとテンが指を起用に動かし土でいくつかの大小の塊を作る。
「で、最後に接着してあげれば完成。」
そうして、さも簡単にテンは土人形を作り出した。俺達が作ったものとは違い、各部分が動く人形だ。
「なるほど、テンありがと。」
やはり魔法でウィルには叶わない。お礼を言って頭を撫でてやると、嬉しそうに目を細めテンは俺の首元に戻った。
テンに教わったようにもう一度土人形を作る。ひとつひとつの部品を作って、くっつけ、魔法をかける。
「なるほど、できた。」
1度教わってしまえば簡単に理解出来る、単純な仕組みとなっていた。
ようやく俺も理解したところで、フランに教えてやろうと向き直るとフランは口を開けてほうけていた。
「フラン?」
「え、あ、ごめん。」
声をかけるとハッと我に返り、練習に戻る。
テンが教えてくれたようにフランに教え、ひとつずつの工程で理解してもらう。
フランは土魔法と炎魔法のセンスが良いようで理解するのにはあまり時間はかからなかった。
「できた!!」
ものの1時間程度でフランも土人形を作れるようになり、そのあとは2人で協力して俺と同じくらいの身長の人形を作り上げた。
勿論最後には作った人形全てを壊しグラウンドの土に戻して終了だ。
日が暮れて空が赤くなり、俺たちは帰ることを決めた。
両それぞれ違うのでグラウンドで解散だ。
「今日はありがとう、凄く助かったよ!」
「こちらこそ、楽しい時間をありがとう。」
笑顔でお礼を言うフランに、俺も笑顔で返す。
フランの魔法の練習はこうして放課後暇さえあれば一緒にグラウンドでやることになった。
「そういえば、お前の動物は魔法が使えるんだな。言う事聞かせるの大変じゃないか?従魔?」
「え?」
魔法を使える動物。いないことは無いけれど、知性が他より強いため手懐けるのは難しいとされている。
従魔。こちらは特殊な儀式を行うことにより魔族を自分の手に収めるのだ。
「テンは友達なだけさ。」
テンは、ウィルはたしかに魔族であり、しかも低級魔族に分類される人間族よりも上位に君臨している。
しかし従魔なんてものではなく、ただの友達だ。
1人で寂しいから着いてきてもらった昔からの友達だ。
「シアンは1人じゃ何も出来ないからね!」
「そっかそっか、シアンをよろしくな。」
えっへんと顔を上げドヤ顔のテン。
勿論テンの声は俺にしか聞こえないわけだけれど、フランにも何が言いたいのかは伝わったようでテンの頭を撫でてくれた。
「じゃ、シアンまた明日ね!」
「うん、あ、でも明日は生徒会があるんだ。時間が空いたら図書館には行くと思う。」
「了解、まぁまだまだ長い学校生活だはまたあったら色々教えてくれよな!」
手を振りフランと別れ、それぞれ寮の方向へ歩き出す。
図書館と生徒会庭園を挟んで、教室棟を背にし右側がSクラス寮、左側がBクラス寮だ。
反対側に向かい出すからお互いの姿が見えなくなるのはすぐだった。




