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前世の記憶を持つ天才薬師  作者: 覡
第2章 学園編
24/32

図書館

「って感じで、Sクラスはササッと終わったよ。

青マントは沢山いて楽しそうだったね。」


やれやれ、とポーズをとって隣にいる赤髪を一つにまとめた男性を見る。

フラン・マッケンジー。耳長族の同い年、Bクラスで青いローブを羽織ったその男はこちらを向いてニカッと笑う。


「いやいや、そんなことも無いさ。多いと多いで統率も取れないしただ騒がしいだけだよ。」


フランは同じようにやれやれとポーズを取り、それを見て2人で笑いあった。

放課後のグラウンド、の周り。俺たち2人は教室棟から出てぐるっと回って図書館を目指し歩いている。

フランと知り合ったのは入学式よりも前、入学試験を受けた日だ。

あの日図書館の目の前でフランと出会った。


「そういや、すごく今更だけれどフランも本好きなの?」

「んーー、勿論好きってのもあるけど、兄さんみたいに強くなりたくて読んでるの方が正しいかも。」

「そっか。お兄さんって、マッケンジー先生?」

「あぁ。」


フィニアン・マッケンジー先生。

俺の担任の赤髪耳長族の先生だ。やはりフランのお兄さんであった。


「兄さんはさ、魔法もばりばり使えるし、めっちゃ勉強しまくって、俺らの街1番の魔術師になったんだ。」


憧れてるんだ、と空を見上げながらフランは言った。

フランの成績はBクラスの上の方。それでもAクラスには届かない、いわゆる平均少し上くらいだ。

本を沢山読んでいるから知識はそこそこ良いが、実技はあまり良くない。


「俺もさ、お母さんが凄い魔術師なんだ。ずっと母さんに魔法を教わっていたし、先生がずっとそばにいたようなもんなんだよ。」


俺の母親、アンは光魔法を除き全ての魔法を使えると言っていた。本を読んで分かったが、それは大変難しいことだ。

魔法とはそもそも特性を持ち、火を出したり操ったりするのを火属性の魔法というように、大きくいくつかの括りになっている。

それは適正があり、適正に順次無いモノはまず理解ができない。人によって異なるが、2~3個ほどの適性があることが多い。

水を出すことも、属性がなければ酸素と水素の理解が出来ないということだ。

アンはそれを、光以外全て理解出来るというのだから、やはりすごい事なのだ。


「シアン、お前の母さんってアン・バークリーじゃないよな?」

「え、いや、そうだけれど…何故知っているんだ…?」

「マジか、成績を聞いてもしかしたらとは思ったけれど、まじか。」


アン・バークリー。

俺の母親は、フラン曰くそれはそれは有名な大魔術師として名を馳せていた。

冒険者としてあらゆるパーティーで魔術師として活躍、固定のパーティーは無かったものの、それ故に知人が多くまた冒険者の中ではいつもアンの取り合いになっていたと言う。

ある日突然引退表明し、その後地方で子供を産んたとされている。それは丁度7年前のことだった。


「時期も名前も、俺のお母さんだろうね。」

「すげぇじゃんシアン!」

「やめてくれ。」


目をらんらんと輝かせるフランに静止の言葉をかける。

確かに聞く限りアンは凄い大魔術師だ。だが、それはアンの話であって息子の俺には関係がない。

フランだって兄こそ凄いものの弟のフラン自体にそれは関係ないことだ。


そう諭すと そうだよな、と少し申し訳なさそうな顔をして俺に謝るフラン。

別に傷ついても無いから謝罪はいらなかったのだけれど、優秀な兄を持つフランにはなにか考えるところがあったのかもしれない。


そうこうしているうちに図書館に着いた。

本日3度目の図書館。扉を開けると毎回同じようにこちらを向いて笑顔をくれるアガットさん。


「いらっしゃい、ゆっくりしていってね。」


優しい初老に挨拶をし、俺とフランは本棚を前に意気揚々とする。


「さて、俺は上の方の書物が読みたいからハシゴをとってくる。シアンは?」

「俺は下から読破していくつもりだからいいや、もう三段目までは読んだんだ。」


少し驚いた顔をして、でもシアンなら、とフランは頷き別れを告げた。

今日は4限までの授業だったから終わったのは正午過ぎである。まだまだ閉館まで時間はあった。

いつもの容量で本を読みまくる。10分で1段を目安に、4段目から順繰りその動作を繰り返した。


1時間ほどが経過し、今の時間で俺の読み切った本は約1200冊。1階にある本の読破が完了した。

1階は歴史にまつわる本やこの国のきまり、王家について、それから少しの上位魔法についてが書かれた本が主に並んでいた。


一区切りついて読書を一次中断し上を見あげると、フランはハシゴに座って本を読んでいた。

空を飛んでフランの高さまで上がる。

だいぶ高いところにいたので普段空を飛ぶ時よりも長く上昇した。


「フラン」


声をかけると小さく うわっ と驚き、フランは本から目を離す。


「あぁ、ごめん。俺の方は一区切りついたのだけれど、それが読み終わったらよかったら昼飯でもどうかな。」

「あ、あぁそうだね。俺ももう少しで読み終わるから少し待っててくれるかな。」

「了解」


俺のようにすぐ次に行ってしまうであろう読書家のフランに、その本が読み終わったら、とご飯の誘いをし俺は1階に降りた。

しばらく背表紙を眺めていると、フランがハシゴを伝って降りてくる。


「お待たせ、行こうか。」


アガットさんに挨拶をして2人で図書館を出る。

そういえば、ご飯を誘ったはいいもののSクラスは基本的にSクラスの教室ラウンジのビュッフェランチとなる。

そこにフランを連れて行ってもいいのだろうか。


「セバスチャン」

「はっ」


名前を呼ぶとどこからともなく現れたセバスチャン。このおじ様は忍者のように人の影に隠れいつでもそばにいると言う。


「Sクラスの教室ラウンジにフランを連れていくことは可能ですか?」

「可能でございます。しかし既に1時間前に用意されたビュッフェ台は片付けられてしまっている可能性も高いでしょう。」

「んぐ、それもそうか…。」


それは読書に夢中になってランチを忘れていた俺の失態だった。

たしかにもうランチの時間ではないし、片付けられていなかったとしても冷めていそうだ。


「寮内、シアン様のお部屋であれば私がご用意致しますがいかがされますか?」


困り顔をしていた俺にセバスチャンが代案を提示してくれた。

なるほど、たしかに寮に他クラスを招いてはいけないなんて決まりはないし、なんなら仲良くするようにって生徒手帳には書いてある。

それを聞いて頷きかけると、フランが焦ってこちらに手を振った。


「え、いやいや、俺の方の教室棟の学食でいいよ!」

「フラン…Sクラス寮に来るのは嫌か?」

「そんなことは無いけれど…」

「じゃあ決まりだな!」


俺の部屋ならキッチンがきちんと有るし、なによりセバスチャンの料理はとても美味しい。

こうして、俺とフランはSクラス寮を目指したのであった。

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