入学試験 実技
実技テストは魔法学、武術学、動物学、薬学、音学の5つ。
それぞれ筆記テストで点は取れているはずなので多少の失敗ならば許されるはずだ。しかし上のクラスを目指す以上実技もしっかりと点を稼がなくては。
あぁ、そうだ。筆記テストは楽勝だった。
問題数は多くぶっ通しでやった為疲れこそしたが、問題ないようとしてはまずまずだった。
9割は全部取れてるだろう。ケアレスミスとかが無ければ満点も夢ではない。
先に筆記テストをやったお陰で実技テストは気が楽だった。どんなに出来なくても入学はまず出来るだろう。
さて、実技テストは全員同時に行われる。
いくつかのグループに分かれ、それぞれに担当教師がつき、各科目ごとに合図を待ち行う。
最初は魔法学。
魔法の実技と聞いて何をするのかと思ったら、魔法を用いて塔の上にある珠を取れ、というものだった。
1人ずつ合図を待ち珠をとる。どうやらその珠はバリアのようなもので囲まれているらしく、その中から取るというのが最終目標らしい。
俺の班のひとり目はピンクの髪の女の子。
開始の合図で雷を塔に落とし、ポロッと落ちてきた珠をキャッチ。しかしバリアは壊せなかった。
次の男の子は魔法で手足を強化。塔を登り珠を捕まえ、殴りまくって何とかバリアを壊した。
その他の人も何かしらして珠をとった。バリアを壊せるか壊せないかはその人の魔力によるそうだ。
そして最後が俺だった。開始の合図は準備をする間もなく鳴る。
俺は今までの人たちを見て、不思議で仕方がなかった。
「先生、質問いいですか?」
「はい、なんでしょう。ミスターバークリー。」
おぉ、名前覚えてくれてのか。
いやそれもそうか、名前わからなきゃ点数付けられないもんな。
「あの、空って飛んじゃダメなんですか?」
「………は?」
誰も空を飛んで珠を取りに行かなかった。
術で落としたり、どうにか塔を登ったり。
先生の反応を見るに、飛んではいけないのは当たり前だったのだろうか…。しかし説明では何をしてもいいって言ってたし。
「あ、ええと、ミスターバークリー。飛べるものならば全然、飛んでいただいて大丈夫ですよ。飛べるならば、ね。」
慌てた様子で先生は答える。いやいや、飛ぶでしょ。
むしろ登る方が難しい。土魔法であの高さまで足元の土を上げるとかなら出来るけど、それ塔二つできちゃうし余計な魔力を使う。
「えっと、じゃあ…。」
取り敢えず許可がもらえたので飛んで塔のてっぺんにきた。
別に何か悪い魔法が飛び交ってるわけでもない。
なぜ飛べるなら、なんて言ったのだろうか。
取り敢えず珠を手にする。バリアの中にまだ入っていた。
んーー、どうやって取り出そうか。手突っ込めないのかな。
試しに手を突っ込んだら、入った。
え?こんな簡単なもの???取り敢えず中の珠を取ってそのまま先生の横に降りた。
「あれ?えっと、取れました…??」
あまりに呆気なくて自分で疑問系にしてしまった。取れた、取れたよ。うん。
先生も驚きながら頷くだけ。なんなんだ。
しかし派手な魔法を使った方が良かったのだろうか、雷落とした子の方が派手だったし、バリアは壊せなかったけど点数は高そう。
何はともあれ、魔法学は終わり。次は武術学だ。
こちらは2人1組になってただ戦う。俺のペアは虎の顔をした魔獣族の男の子。
ウィルと毎日模擬戦を行っていたから余裕だった。
虎ってことでちょっと怖かったけど、タックルしてきたり殴ってきたりだけだったから、足を掛けて転ばせて魔法を放とうとその子を踏んだところで向こうの降参。戦いは終わり。何とも呆気ない。
動物学にはウィルに手伝ってもらった。
いうことを聞かせるっていうテスト。みんな芸を見せたり魔法を駆使して演じたり。
んんん、いうことを聞かせるって言っても何をすればいいのか。悩んでるうちに自分の番になった。
首に巻きついて寝ているウィルをぽんぽんと起こし、テストに望む。
「先生、すみません…また質問いいですか。」
「はい、どうぞミスターバークリー。」
「あの…何をすればいいかわからないので、何をすればいいか、言っていただけませんか。多分大体のことは出来るので。」
図々しいことを言ってるのは分かるけれど、芸とかこれやってって言えばウィルはしてくれるし、てか普通にいつも話してるから意思の疎通とか余裕だし。
そうなると何をすればいいのか分からない。
「えぇ…では、手始めにおすわりをさせてください。」
「へ?あ、はい。ウィル座って。」
はーいと返事をしてイタチの姿のウィルは腰を下ろした。
「では次に二本足でたって貰えますか。可能であればそのまま歩行を。」
「はい。ウィル立って。こっちまでそのまま歩いてきて。」
こう?と言いながら器用に後ろ足で立ち上がって俺の所までやってくる。
「……では、魔法を使ってください。」
「へ?魔法?ええと、ウィルなにか出して。」
え、いいの?という顔でウィルは水の玉を作り出し手で持って先生に渡す。ウィルの固まれという声で先生の手の上にある水のたまは氷になった。
「魔法が、使えるのですか?」
「え、いや先生が使えって…。」
「私は貴方に使えと言ったのですが、なるほど。わかりました。」
よく分からないがテストは終了。ウィルはまた俺の首に巻き付きファーみたいになって静か眠った。
次のテストは薬学。簡易ポーションを作るというものだった。
必要なものから関係ない薬草まで、様々な草が並べられた机。そこから必要なものを持って作って提出。というものだ。
いつもやってる作業を何ら変わらずやり、提出。
なんの問題もなくテストは終了した。
最後のテストは音楽。魔法は、魔法の詠唱に複雑なリズムを刻む場合がある。そのため、音楽という教科は根深いようだ。
ちなみに音楽の筆記では歴史や人物等の問題と、譜面を読む問題が多かった。
さてここで問題だが、俺は修道所で聞くようなものしか歌えない。テスト内容によるが…。
テストの内容は楽器の演奏だった。俺前世でもリコーダーくらいしか吹けないぞ。終わった、と思ったが、リコーダーに似た楽器を発見。
小学生の音楽の授業中に習った曲をうろ覚えで披露。勿論その曲はこの世界にはない。
取り敢えず、そうして実技科目は全て終わったのだった。
テストの結果は後日家に届くそうだ。
待合室で眠っていたアンを起こし、街の中で少し買い物をしてそのまま家に帰った。
その日の夕飯は少し豪華で、カボチャのスープに街で買った鶏肉のソテーと野菜のたくさん入ったサラダを食べた。




