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前世の記憶を持つ天才薬師  作者: 覡
第2章 学園編
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入学試験 筆記

7際になり、僕は学校へ通う準備を始めた。

うちの家では7歳から学校へ行かせると決めていたらしいが、学校が始まるのは9月から。

つまるところ、前世でいう4月の年度始まりがこちらでは9月なのだ。

僕の誕生日は3月。準備には7歳になってからでも充分時間があった。


まずはテストだ。自分でする準備はクラスによって異なるらしい。

クラスは能力順、テストの結果次第で学園生活の潤いも違うっていうわけだ。


家は貧しいとまでは言わなくても、チェスターが消えてからはアンがひとり手で育ててくれている。

俺も稼いではいるけれどそれでも生活はいっぱいだ。

だから、なるべく上のクラスを目指す。

素晴らしいことに上位クラスであれば食事や備品にお金が掛からないらしい。

詳しくは後で貰える生徒手帳を読むとしよう。

なにせこれらは全てアンに聞いたことだった。


テストは筆記と実技。

魔法と武術、動物学、薬学、音楽の実技に、筆記はそれに加えて歴史と生物学、数学、語学、精霊学がある。


実技に関しては、魔法はアンに、武術はウィルと実戦をしながら自己流、薬学は毎日研究しているから音楽だけがどうにか対策を打たなければならない。

筆記は簡単だ。本を丸覚えしているから。

スキルをもらったのが5歳、今は7歳。

この2年間でこの町にある本は全て読んだ。

図書館の端から端まで、絵本から図鑑、歴史からエッセイ、物語、教科書や研究レポートまで全てを覚えている。

この街にある知識で分かる範囲ならば満点が取れると言っても過言ではない。


テストが行われるのは4月。つまり1ヶ月後だ。

僕はテストが行われるその日まで、欠かさず魔法と武術を学び、アンの職場である修道所に通っては聖歌を聞いて歌った。


テスト対策と言っても過去問がないんじゃこれ以上の対策はできなかった。


そしてテスト当日。4月に入って最初の週末。

この街の東側にある城壁で囲まれた大都市、アスラ王国の宮殿のある都へと俺は足を運んだ。

アンとウィルも着いてきてくれた。今日はテストだけだから一人でもいいと言ったのに。



学校は国立学校のようで、国の運営だ。

入学金と寮費と食費以外はすべて国が出してくれる。

制服は無いようだけれど、ローブがクラスごとに有るらしい。そちらは有料。入学金に含まれてるらしい。


アンは待合室となっているロビーで待たされることになった。テスト会場までは流石に一緒には来れない。

ウィルはというと、イタチのような姿になり俺の首に巻きついている。ファーみたいだ。

筆記テストでは動物の持ち込みも禁止されているが、実技テストでは従魔として持ち込みOKだという。


でもまずは筆記テストだ。イタチの姿のウィルを優しくポンポンとたたき、肩から降りてもらう。

動物の待合室もあるようで、数匹の猫や梟、馬や蛇、羊、犬などの動物がお利口に座って待っていた。


「ウィル、すぐ終わると思うから此処で待っててね。悪さしちゃダメだよ。」

「わかってる、シアンがんばってね。」

「いってきます」


ウィルの言葉は僕にしかわからない。そのため、こんなふうに話しても動物と触れ合ってるだけに見えるのだ。

ウィルに挨拶して筆記テストの会場へと向かう。


魔法学、武術学、動物学、薬学、音学、歴史、生物学、数学、語学、精霊学と順にテストを行う。

各教科終わった人は席を立ち、前の教壇に提出した後次のテストの用紙をもらいまた席に戻ってテストを受ける。

10の科目全てを合わせて制限時間は300分。

終わり次第退室可能だ。

一科目30分平均で解かなければ終わらない。しかし問題数はそれなりにあった。

俺は一科目につき10~15分程度で回答を記入し、5分で見直し、というのを繰り返した。


100分と少しの時間を残し教室を出た。

MAX5時間、俺の速さで解いても3時間弱だ。

休憩なしのぶっ通しでこのテストは応えるものがあった。


実技テストは別会場で行われる。

全員が筆記テストを終えた後、1時間の休憩の後に移動し開始だ。

あと3時間、その3時間を僕はウィルと学校巡りをして過ごした。


まず学食。ほとんどの生徒は昼ご飯をここで取るらしい。

メニュー数はどこかファミレスを思い出す。種類も量も豊富で、どの種族でも楽しめるようなラインナップになっているらしい。

1時間ほど学食でのんびりとして、まだ時間があることに気づく。外に出て更に散策を開始した。

しばらく進むと図書館があった。

図書室ではなく図書館。今いる校舎からグラウンドを挟んで反対側にある塔のような建物だ。

今は閉館中のようだから今度行ってみたいと思う。


「あ、今は入れないのか…」


俺の横でふと声が聞こえた。横を見ると耳の長い男性がたっている。

綺麗な赤髪を後ろで小さく結び、茶色いベストに紺色のシャツを着た男性。外見年齢は14~15歳くらいだろうか。


「えっと、休館日みたいですね。」

「そうですね。」


俺の隣に立ってたからとりあえず話しかけてみる。

ウィルが何も反応しないところを見ると害をなすような人でもないのだろう。


「失礼。新入生の方ですか…?」

「えぇ。貴方も?」


ローブを着ていないからまだここの生徒ではないだろう。

ということは今日テストを受けに着た同級生という事だ。俺は質問に応え同じ質問を送った。

するとやはり同級生だったらしく、自己紹介をする流れになる。


「僕はシアン・バークリー。人族とヴァンパイアのハーフの7歳です。西の街から来ました。こっちはウィル。」

「どもです〜(ウィル)」


ウィルは俺の肩で小さくお辞儀をする。

それを見て彼は「おぉ」と小さく声を漏らした。


「僕はフラン・マッケンジー。耳長族の561歳。故郷は北の街の外れにあるよ。それから、敬語はやめないか。是非仲良くしたい。」

「それでしたら、是非。僕も友達を作りたいと思っていた所なので。マッケンジー、よろしく。」

「あぁ。フランでいい。」

「ではこちらもシアンで。よろしくねフラン。」


お互い握手をし、しばらく喋っているとチャイムが鳴った。


「さ、実技テストだ。行こう!」


フランに手を引かれ実技テストの会場へと向かう。

まだ入学していないというのに、俺はこの世界で初めての人型の友達が出来た。

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