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前世の記憶を持つ天才薬師  作者: 覡
第1章 幼少期
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日常

チェスターがいない日が続き、アンも俺も気分は落ちていた。

何度も森に行ってはウィルにも協力してもらってチェスターを探した。アンも街を歩いてはチェスターを探したという。


それでも、チェスターが戻ってくることはなかった。


俺は後悔した。あの時チェスターを1人で森の奥へやらなければ。あの時チェスターと一緒に家に帰ってれば。あの時森になんて入らなければ。あの時武具なんて買ってもらわなければ。あの時自分が森に入りたいなんてワガママを言わなければ。

後悔はいくらしても終わらない。一番近くにいたのは俺なのだから。


こうして、第二の人生の実の父親は、5歳の俺の前から突然いなくなった。


チェスターが消えてから家の活気はなくなった。

それでも一年もすればアンも俺も生きる方向へ歩み始めていた。

アンは生活費を稼ぐために修道所へ通い魔術を子供に教えている。

俺はチェスターの薬師を継いで研究を進めながらチェスターのレシピ通りのポーションを薬屋に収めている。勿論お金ももらっている。


この家では7歳から学校に通わせると決めているらしく、つまり俺は来年にはこの家を出て学校の寮に行かなくてはいけない。

この国の学校は寮制が基本だそうだ。

年齢も家によって通わせる歳は違う。学年は学校に入ってから1年、2年と数えていく。年の差じゃない。


そんなわけで、俺とアンがいまこうして必死に働いているのは学費を稼ぐためでもある。

生活費だけなら贅沢をしなければアンの授業料だけで事足りる。

つまり俺のこの薬師の仕事は、俺の学費になるのだ。自分で学費を稼ぐならば、アンの負担も軽減するだろうと考えての行動だった。


チェスターがいない生活にも慣れた。

家の活気はチェスターがいた頃には劣るにせよ、ある程度アンの笑顔も見られる。

二人とも話題を振るのはあまり得意ではなかったが、食事の時は積極的に話をするようにしていた。

そうやって、何も無かったかのように、最初から母子家庭とでも言うようにチェスターが居ない寂しさを埋めた。

時折、部屋で泣いているアンを見掛ける。

俺はそれに声はかけず、いつもドアの外であの日の後悔を思い出すのだ。


何故いなくなったのか、どこへ行ったのか、今生きているのか。

現状が何もわからない俺の父親は、いったい今何をしているのだろうか。

お前の奥さんは寂しがってるぞ。お前の息子は悲しんでるぞ。

誰もお前の代わりになれないんだから、帰ってきてくれ。


そう、天に祈るしかなかった。


アンは寂しさを埋めるように働いた。ヴァンパイアは十字架も嫌いだし日光も嫌いだ。

でも昼間に修道所へ行って働いた。

俺が朝目を覚ますともうアンは出掛けていて、食卓に朝ごはんが置かれている。そこから夕飯まで俺はひとりだった。


一日の大半を森でウィルたちと過ごし、夕飯を食べたらポーションを作ってその日とってきた草を調べる。


そんな毎日を繰り返して、俺は7歳の誕生日を迎えた。

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