銀のト音記号
己の内部の声に注意を向けると次第に感覚が研ぎ澄まされていく。銀色の言葉の列が流れ始める。それは人混みの中ではそれが苦痛となって押し寄せ、閑居の内では心地よく響く。わたしはあるメタファーに気付くと、そのことを考える。内部で対話を続ける。拡散しては収束し、また拡散して収束し……そこへ割り込むように飛び込んでくる声。視線。新たなメタファーの気づき。隠されれば隠される程、現れた時の刷り込み効果は高い。分かりやすいコピーは安価であって、深く隠された複雑に組み合わされたコピーは高価である。作り上げられたブランドのイメージ。希少性という価値がデザインされたジュエリー。これは価値を身に着ければ、その者は価値を+補正されるというコピーだ。あまりに人間臭いその美しさをこそ追及していけば、やがて価値に従うように外見は整えられ、内面的な本来性を語るものはますます少なくなっていく。そうだ。内的な魅力あるデザインを身に着けることで、恰もその者も同じ内的魅力を得るというメタファーだ。そんなことは在り得ないが、ファッションセンスという感性の共通は在り得るだろう。そのセンスは確かに与えられて育つが、模倣より始まるのは全く正常な成長である。少しずつ螺旋状に育っていく銀のト音記号のように。
あるテーマに沿って思索することはやり易い。きっとこれが思索活動というものなのだろう。