霊能力者翠の見えたもの
最後に慌てて仕上げました。
私の名前は、波多野 翠。(はたの みどり)
一応霊能者です。
たまに、テレビに出るように頼まれます。
今の私が、寛げる場所は、学校くらいです。
「おい、波多野、このクラスには幽霊いないのか?」
「あっ、わたし翠から聞いたけど、ほんとに聞きたい?あんた、聞いたら、きっと後悔するよ」
「な、なんだよ、俺はそんなの信じないからな」
「そう、だったら教えてあげる。あんたこの頃、悪い事ばかり続いてない?」
「そういえば、告白してふられたりしたな」
「それは違うと思うけど、あんた、守護霊のほかに悪霊が憑りついてるよ」
「そ、そんなの俺は信じないからな」
走って逃げた男子は、途中で雑巾を踏んでこけた。
「これも、悪霊の仕業だというのか~」
「馬鹿な奴、ありがと絵美」
「わたしは、あんなやつから翠を守るSPだからね」
「うん、これからもよろしく」
「ところで、きょうは仕事はあるの?」
「うん、どこかは知らないけど、たしか「ドリームランド」とかいうところ。
「あっ知ってる。そこ、「裏野ドリームランド」だよ、きっと」
絵美が言うには、心霊スポットになってるらしい。
ほんとかどうか、わからないけど肝試しにきたグループの一人がどこかに消えてしまっただとか。
閉園になる前は、よく子供が行方不明になってたとか。
ほかにも、いろいろと噂は絶えない。
私は、行く前から嫌な感じしかしなかった。
私は、お世話になってるプロデューサーさんに言った。
「嫌な感じがします。やめた方がいいと思います」
「翠ちゃんが、そこまで言うなら辞めたいけど、特番の売りの一つなんだよ。今更は無理だよ」
「それじゃ、私の言う事は絶対に守ってください」
そして、わたしはスタッフの皆さんに、魔よけのお札を渡しました。
お札は、もちろん私が作ったものでは、ありません。
私は、霊感は強いのかもしれません。でも、お祓いなどは出来ません。
あの霊は、どうにかしたほうがいいと、私が判断したら、知り合いの退魔師などにたのむのです。
今日も、私が信用している、退魔師についてきてほしいと連絡したのです。
でも、みんながみんな、今は忙しいと言ってついてきてもらえませんでした。
そして、ドリームランドに着くと、一人の袈裟を着たお坊さんがいました。
「天照さん?」
「あれ、翠。もしかして、お前が言ってたのは、此処だったのか」
「うん、天照さんは?」
「ああ、最近行方不明になる人間がいてな、一人二人じゃないんで、土地の持ち主に頼まれた」
この、天照さんは私が信用している人の一人です。生臭でナンパなお坊さんですが、除霊などをきっちりやってくれます。
「お前が来てくれて、助かった。成仏させようと思ったが、此処はやっぱり広すぎる。頼む、場所を特定してくれ」
「なっ」
勝手な男と翠は思ったが、仕方がないと自分を納得させた。
ドリームランドのゲートに来ただけで。
ここは、やばいと感じたからだ。
「プロデューサーさん、此処は危ないです。絶対に入らないでください。絶対ですよ」
「ああ、わかった。翠ちゃんがそこまで言うなら、約束するよ」
「ありがとうございます」
「それじゃ、翠行くとするか」
「はい」
私は、天照さんにどんな感じか聞かれました。
「人に害をなすほどの力はありません。でも、やけに、子供の霊が多いような気がします」
「そうか、そこまで俺は霊感が強くないからな、お前がいると助かるよ」
だったら、なんで私の話を断ったのと言いたかったが、翠はこらえた。
理由は分かっているからだ。
天照は、TVを毛嫌いしている。
何故なのかは、聞いたことはないが。
「どこか、強く霊を感じるところはどこだ」
「うん、あそこに見えるメリーゴーんっ!」
翠は、手で口をふさいでいた。
「どうした翠!なにがあった!」
「男の子が、なにかに食べられた」
「霊が霊を食べたっていうのか!」
「たぶん」
「嫌な感じがするな。早く除霊したほうがよさそうだな。ほかに、強く感じるのはどこだ」
「う~ん、あっ、あのミラーハウス」
天照は、ミラーハウス前に近づくと、お経を読み始めた。
翠の耳には、助けてという言葉や、殺してやるといった恨みの言葉が聞こえる。
そして、あたまのなかには、ある情景が見えた。
それは、バラバラにされた女の人が見えた。
そして、女が見たもの聞いたものが、翠に流れ込んでくる。
死後のことも、その以前も・・・
うぷっ
吐きそうになるのを、なんとか翠は堪えた。
1時間ほどすると、お経は終わった。
天照の顔からは大粒の汗が、流れ落ちていた。
「ふ~う、どうだ、こんなものでいいだろ」
天照が、翠に尋ねるとそこには青ざめた翠がいた。
「おい、何か見えたんだな。何が見えた」
「それは、言いたくない。でも、此処の下に女の人がいた」
「いたという事は、除霊は成功したんだな」
「うん、たぶん」
それ以上は、天照は追及しなかった。
ただの、死体なら翠は見たことがあるはずだ。
それが、こんなになるなんて、よほどのものが見えてしまったのだろう。
「つかれた。少し、休憩だ」
そう言うと、天照は自分のカバンから、水筒を取り出した。
そして、翠に紙コップを差し出した。
「飲むか?」
「うん、こくっ、あまい」
「ああ、スポーツドリンクだからな。水分補給にはちょうどいいからな」
「そうだね」
翠は、少し落ち着いたようだった。
「それにしても、霊が霊を食うとはな」
「ねえ、もしかしたら、行方不明の人たちって、それに巻き込まれたんじゃない」
「そうか、霊が霊を食って力をつけたってことか」
「はじめは、人をどうにかできるほどの力はなかった。でも、力を取り込んでゆくうちに、人間にもその力が及ぶようになったとしたら」
「そうだとしたら、早く除霊しないとな。強く感じるところから行くか」
「わかった」
翠は、目を瞑って集中する。
「このまま歩くから、つまづかないように見てて」
「わかった」
翠は、まるで見えているのかと思うほど、ゆっくりとだが曲がった道でも平然と歩いてゆく。
「この先だよ」
翠は、観覧車の方を指さす。
「観覧車か」
「ううん、ちょっと違うかも」
そういうと、翠は天照を観覧車の横にある地下に降りる階段まで連れて行った。
「この下だよ」
青ざめることもなく、指さす翠に天照は聞いてみた。
「どんな死に方をしたか、聞いてもいいか」
「火事があって、ここで女の子が焼け死んだみたい」
そういうと、翠は手を合わせた。
強い怨念はなかったのか、ここは30分ほどで終わった。
「つぎは、どこだ。」
「あとは、そこのレストラン」
そのとき、二人は聞いた。「だして」と。
「やめて、私にそんなものを見せないで」
「どうした。お前ほど俺は、霊感はない。どうしたらいい」
「な、中に入ったら、業務用の冷蔵庫があるから、開けてやって」
「わかった。冷蔵庫だな」
翠は、手で耳を抑え、しゃがみ込みながら頷いた。
中に入って、天照が経を読み始めると、何人いるのか分からないほどの、子供の泣き声が聞こえてきた。
2時間ほどして、天照が出てきた。
「大丈夫?」
「ああ、それで子供たちはどうなった」
「うん、笑って成仏したよ」
「そりゃよかった」
がくっ
天照は、足に力が入らないほど憔悴していた。
「あとは、どこだ」
「もう大丈夫。子供の霊はいなくなったよ。あとは、浮遊霊くらい」
「そうか」
翠は、天照をベンチまで連れて行き、休憩することにしたのだった。
翌日、ミラーハウスのコンクリートの床を壊すと、女性のものとみられる白骨が見つかった。
翠が見たものは、死後に女の体を切り刻む、女の彼氏と思われる男の姿だった。
そして、焼け死んだ女の子。この子は、友達が欲しくて、子供を引きずり込んだらしい。
その子供たちは、階段の下の壁の向こうから見つかった。
白骨化していたが。
そして、レストランで見たものは、子供を連れ込み、冷蔵庫の中に閉じ込め、そのあとに、切り刻みその子供の肉を、カレーの具とした料理人の姿だった。
これは今までに書いたやつとの、混合話みたいなものです。