その足取りは
今回短いです、すいません。
村の中を一人の男が重い足取りで歩いている。
胸くそが悪くなるような人間に会った。しばらくは風に吹かれながら心を落ち着かせて休みたいと思った。
自分の人生に救いをくれたルーク。その家族を苦しめている人間がいるなど看過出来なかった。
結果を見れば圧勝と言えた。しかし、クラウドからすれば今回の一件は背水の陣で挑んでいたこと。
今の時代の魔法使いの実力も知らず、敵の戦力も分からない。もし敗れれば、村中が更なる不幸に見舞われただろう。せいぜいその時は全て自分に敵の目を引き付けて姿を消すしかなかっただろう。
「ふうっ。一度帰るか。」
心が疲れていたのだろう。皆の顔が見たくなる。
自分はルークの力になるために来たというのに・・・
みんなに会うことを考えただけで自分の心がこうまで安らぎを感じるとは・・・
「(わずか数日だぞ?)」
こっちが支えられてどうする。
苦笑いを浮かべながら心の中で自身を戒める。
村の中を歩きながらクラウドは考えていた。今回の一件はまさに村で暮らす人達がギリギリの生活しか送れなかったせいだと。自分達が生きていくことが精一杯だからこそ、村のみんなはルーク達のことまで考えることが出来なかった。これからは馬鹿共が迷惑をかけることはないだろう。だからといって今までルーク達を締め出していた村人達が急に仲良くなれるかというと難しいだろうと。一度こじれた関係の修復は難しいはずだ。
クラウドは村を歩きながら周りを見渡す。見慣れない男が歩いていると村人達から若干視線を集めながら。
「(この村は決定的に生活水準が低い。みんなが日々を過ごすだけで精一杯なんて。
余裕ある生活があって初めて人は他人を思いやる余裕を持つはず。
・・・よし決めた!)」
クラウドはルーク達のために村の人々の生活を今より豊かにしようと考えた。そして、それに自分が一枚かむ。そうすれば、村の中で自分は信頼が得られるだろう。村の中で自分の立場が強くなれば一緒に暮らすルーク達への風当たりも弱くなるはずだ。
「いいんじゃねえか?悪くないんじゃ?
・・・と、言うことは俺は更に・・・
いや、いけるっ!よぉし決めた!!」
皆が笑顔になってくれるかも
そう思っただけで疲れが取れていく。
ついさっきまであんなにも重々しかったのに
その足取りは驚くほど軽やかになっていたのだった。