誓いの代償
ちょいグロです。苦手な方読み飛ばして下さってOKです。
貴族がお仕置き食らったとだけ思って下さい。
「一体何が・・・」
「き、貴様わし等の身体に一体何をした!」
まるで被害者とでもいうかのように、貴族達は声を荒げる。
「この魔法は悪魔の繋がりと言ってな。約束を交わした者にその遵守を強いる魔法だ。」
クラウドはそう説明した。
「な、何を馬鹿な事を。」
「全くだ、今後村人どもへは配慮すると言うたであろう。」
2人はそう言うが、顎を割られた貴族は無言で頷くのみである。ただし恨みに満ちた目でクラウドを見ながら。
「・・・言いたいことがあるなら言ったらどうだ?」
「・・・ひや(いや)・・
おまれ(お前)に顎をはられて(割られて)しゃれれなかっら(喋れなかった)だけだ・・・」
そう言った時、男の身体が震えだした。
「う、うぐっ?
な、何らこえ(何だこれ)は?からら(身体)がはふい(熱い)!
は、はひへあ(吐き気が)おまらん(止まらん)・・。」
「どうしたのだ、エイハブ殿?」
何が起こったか分からない小太りの貴族が苦しみだしたエイハブと呼ばれた貴族へ声をかける。
「馬鹿が、早くも誓いを破ったか。」
「何だと!?破るも何も、まだ何もしとらんではないかっ!」
「その通りじゃ!変な言いがかりをつけるなど恥を知れい!」
「言いがかりなんかじゃないさ。
教えておいてやろう、悪魔の繋がりの魔法判定は厳しいぜ。
なにせ判定は対象者自身が行うんだからな。
むろん冗談で口にした程度じゃ問題ないが、もし本気なら心の中で考えただけでも反応するぜ。
村人を害する気など無かったと弁解しても無駄だ。
悪魔の繋がりが発動したってことは、こいつが誓いを破って誰かを傷つけようとしたってことだ。
・・・まぁ、誰かをっていうか、俺をだろうけど(笑)」
この時代にも奴隷は居るんだろう?と続けたクラウドの言葉によると、奴隷契約を結ぶときに主人に忠誠を誓うための隷属魔法。悪魔の繋がりはそれを強化したものだということであった。
『強制的に誓いを守らせる』
クラウドはそう説明したが、それは正確ではない。
結果としては確かに間違ってはいない。
が、しかしそれはあくまでも『結果』の話であった。
悪魔の繋がりとは約束を強制的に守らすものでは無い。交わした約束を守らなかった者を罰する魔法である。
結果、それを見た他の者達が恐怖に震え上がり命に代えても必ず守ることになるのだ。古代に暮らしていた者達をして、罪人以外への使用を避けられたほどの魔法でありその魔法効果は凶悪の一言である。
その効果とは
「ひ、ひぃいいっ!!!」
一人の男が声を上げる。
「い、いあい(痛い)ぃぃっ!からあううああかえる(身体中が裂かれる)ようは(ようだ)あぁ!」
部屋を転げまわるエイハブ。その時、ルーカスが違和感に気づいた。
「エイハブ殿?一体その手は?」
エイハブの手から細い毛のようなものが生えていた。しかも手は指同士がくっついて伸びだしている。足もまた同様に変化している。
「あ・・・あががが・・おぅ・」
呻き声をあげるエイブルの頭からは角のようなものが伸びだしている。
「「な・・・」」
小太りな貴族とルーカスは声も出ない。
「言っただろう。命をかけて誓ってもらうと。
だからお前らには変化の呪いを宿す魔法を使った。誓いを破れば身体が変化するんだよ。
ありがたく思えよ。虫ケラほどの価値もないお前らが虫として生きて行けるんだからな。」
(まあ命を助けるのは本当に殺してしまえばタニアちゃんかマーサさんにバレた時に怒られるだろうからだけど。)
心の中でおよそその場に似合わないようなことを考えながら、人としての人格を疑いたくなるような言葉を、クラウドは平然と言ってのけた。
呆れ返る二人の前で悪夢はまだ終わらない。
次は顔が鼻を中心に後ろへ折れ始めていた。バキバキと音を立て骨が折れる音が聞こえる。声にならない悲鳴が上がり続ける中、エイハブは氷に映った自分を見て、自身が何に変わろうとしているか知る。
頭から生えたのは角ではなく触角。
腹から生え出した足、手と足はすでに昆虫のソレへと変わっている。
「あ、あ、油虫・・・・」
小太りの貴族が呟くがそれに反応した者はいない。
「うぉぇ〜〜っ。」
エイハブの歪んでいく口から吐瀉物が吐き出される。人の身でありながら油虫に変わろうとしている現実。
受け止められるハズがない。
身体の8割ほどが油虫へと変わった時、ルーカスは既に失神し、小太りの貴族は失禁しながら泣き崩れていた。誰に許しを請えばいいのかと。
自身の身体にも同じ魔法が宿っている、それを考えただけで吐き気が止まらない。
やがて身体が完全に油虫となった後はゆっくりと縮んでいく。
後に残されたのは数分前に自分で吐いた吐瀉物を啜っているだけの一匹の何の変哲もない油虫だった。