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騎士の力も活かし方次第

すいません、高熱で寝込んでおりまして更新止まってましたORZ

復帰しましたので、これからまた駄文にお付き合い下さいますようお願いします。

 ユーテリア王国の王城にある会議室にいるのは王国のNo.2である宰相エリックを始めとした10人ほど。



「やはりあの様な素性も実力も分からぬ輩など認められません。」



「だが、ランドルフが負けを認めておっただろう。」



「手合わせもせず口でケムに巻くなど、やはり胡散臭いですなぁ。」



「ええい、時間が無いというのに!」



 リリーとクラウドのやり取りを見た後、アンドリュー国王に報告をしに行ったエリックはその場で国王から一つの指示を受けていた。「やはりあの男はただ者ではない」と言った後、ドラン連邦国に行くクラウドに同行出来ないか相談するよう言われたのである。



「別に構わないが、そっちに合わせる気はないよ。」



 そう笑ったクラウド。「準備が出来次第出発するからそれまでにエリックさん達も出れるようにしといてね。」と言われたエリックであったが、問題となったのは貴族達の主張である。

ドランなどわざわざ行くまでもない。向こうを呼びつけるべきだと言う者もいればクラウドの実力など分かったものでは無いと言う者もいる。

ランドルフとの経緯は知られてはいたが結局ドラン連邦国の勇者の腕前に動揺したランドルフをケムに巻いたと思われていたようだ。


 平行線を続ける会議はついに国王の鶴の一声で終わった。


 それは実際にドランの異世界人を捕らえた実績があるのばクラウドのみであり力が借りられるのなら協力は仰ぐべきというもの。それとドランを呼び出した場合、まず間違いなく王子達がドランに残され交渉のカードにされるだろう。相手に主導権を渡すくらいならこちらから出向くべきというものだった。


 結果、大急ぎで外交の人員が組まれることとなった。交渉にかかっているのが王子、王女の身柄とあっては間違っても失敗る訳にはいかない。王国No.2である宰相エリックが直々に出向くこととなる。それに伴い護衛に騎士団から1000人、王選魔術師団より100人が選ばれることとなるのであった。






〜出発日〜


 クラウドが門へ向かうと既に王国側の人員は揃っていた。



「あれ、待たせちゃったかい?」



「ふふふ、大丈夫。我らもようやく準備が整ったところだ。」



 本来なら宰相を待たすなど許される訳が無い。しかし、協力してもらうために出発日を数日ずらしてもらった経緯もありエリックが強気に出る事はない。



「全く、リリー殿下には頭が上がらなくなったよ。」



 そう笑うエリック。出発を5日ほどずらして欲しいと申し出たエリックの願いに「駄目だ」と即答したクラウド。その日の夕方にリリーが部屋を訪ねて来た訳であるが、その時クラウドが「誰に言われて来たのか?」と尋ねたところ「誰にも言われてない。父上が困っているのを見て自分で来た」と答えたリリー。


 人見知りで自分の意見を表に出さなかったというリリーの変化に笑みがこぼれたクラウドは「仕方がないな、準備が出来たら知らせな」と答えたのであった。



「クラウド殿、今回の護衛よろしくお願いするぞ。」



 ?マークを頭に浮かべるクラウドにエリックが紹介する。



「クラウド殿、こちらはガルド軍務卿だ。王国の軍事責任者でな。今回の護衛のメンバーなども全て彼が取り仕切って決めたのだ。」



「そうなのかい?まぁ、護衛は腕利きを選び出したんだろ?きっと大丈夫さ。」



「それなら良いがな。それと今回の護衛の責任者も紹介しておこう。」



 そう言うとガルドの後ろから2人が歩み出て来た。



「初めまして。ユーテリア王国騎士団長ファンク・ラギュオスだ。クラウド殿は相当な手練れと聞いてる。よろしく頼むよ。」


「王選魔術師団長ランドルフだ。いつぞやは口先で躱されたが、今回の護衛で必ず貴様の化けの皮を剥がしてみせよう。」



 久しぶりにあったランドルフはどうも周りが言う「ドランの勇者の腕前に動揺したところを突いてケムに巻いた」と言う話しを信じているようであったが、クラウドにとってはどうでも良い話しである。「はいはい」と軽く躱して出発となった。


 王都を出発してしばらくは何の問題も無かった。最も1000人を超す団体である。盗賊はおろか魔物すら近寄ることは無い。順調に旅は進み東部の統治都市ストラフォードに入った時、領主アーヴィン・バーナード伯爵より不穏な報告が入る。それは元レムリア皇国領土から多数の魔物が流れ込んでいると言うものであった。


 しかし、だからと言って今更足を止める訳にもいかないと一団は入念な準備を終わらせレムリア皇国領土に入ったのである。


 皇国領土は報告通り魔物が多数湧いているようであった。本来なら全員で戦うところであるが、戦闘はほぼ王選魔術師団をメインとして行われていた。その理由は、



「また出たぜ!」


「ちっ、このままじゃ魔力が切れちまいそうだ。全く役立たずの騎士団なんざ居るだけ食料の無駄だな。」



 湧いている魔物の内、殆どがアンデッドとあっては騎士団では分が悪い。なんせアンデッドは剣や槍では倒すのが難しいのだ。物理攻撃で倒すならスケルトンのような相手は動かなくなるまで粉々にしなければならないし、グールのような相手は腐肉が邪魔で致命傷を与えるのは難しいのだ。



「くそっ、一体何だってこんなにアンデッドが湧いているんだ!?」



 そう毒づくファンク。



「そりゃドランとの戦闘だろ。ろくな後始末もしなかったんだろうな。」



 平然とクラウドが言うが、現状は厳しい。今は騎士団が壁となり魔術師団の時間を稼ぎ魔法で倒すという戦いを繰り返していた。


 しかし出てくる数が異常である。今も100体を超えるアンデッドをようやく倒したところであった。レムリア皇国領土に入ってからの数を考えれば、優に1000体に届くだろう。魔術師団のメンバーは魔力回復が間に合わず魔力切れを起こす者達が出だしたのであった。


 そしてその度に魔術師団と騎士団の間で摩擦が起きていく。



「全く役立たずの騎士団だな。」



 魔術師の1人がそう言ったのをきっかけに不満が溢れ出したようだ。



「何を!俺達が居なければ魔法など使う暇も無いだろうが!」



「ふん、盾くらいしか出来ることも無いだろうが。大人しく我々に従っていれば少しは役に立たせてやるぞ。」



 そんなやり取りを見てファンクが声を上げる。



「いい加減にしろ!お前らはそれでも王国騎士団と王選魔術師団か!」



 歪み合う双方を一括していると今度はランドルフが出て来たようだ。ファンクに噛み付いている。それを見たクラウドが呆れていた。



「しかし、こんな敵地の真ん中でよくやるよな。」



 決して誰に聞かそうと思った訳では無かったが、エリックがそれを聞き顔を歪ませる。



「すまんな、クラウド殿。全くもって恥ずかしい限りだが、これが今の騎士団と魔術師団の実態よ。騎士団とて誇りを持っているものを役立たずなどと言われれば怒りもするというものだ。」



「うん?ああ、別に聞かすつもりは無かったんだがね。・・・少しは騎士団で引き受ければ良いだろう?魔術師に任せっきりにするから荒れるんだよ。」



「そうは言っても騎士団ではアンデッドの討伐は難しい。数が少なければ問題も無いが、多数のアンデッド相手に動きを止める程にダメージを与えるというのは時間がかかり過ぎる。あっという間に囲まれてしまうだろう?」



「何を言ってんの?それこそ魔法使いの出番だろ?」



「うん?どういう事だ?」



 「またこれか」と現代の魔術師との差に呆れかけたところで騎士団と魔術師団のやり取りがクラウドに飛び火する。



「大体国王直々に力を借りるべきだと言われた本人が何もしていないようではな。我々魔術師団の負担は更に増える一方よ。」



 ランドルフの一言にファンクが声を荒げた。



「負担が更に増えるとはどういう事だ!」


「それすら分からないようなら重症だな。」


「貴様!」



「いい加減にせんか、馬鹿者!」



 ついにエリックが仲裁に出て行く事になる。しかし、お互いに積もった不満はそう簡単には解消しないようだ。


 クラウドもまた仲間を罵るやり取りには辟易としていたことで一つの提案をする。



「それなら魔術師団はしばらく休めばどうだい?俺と騎士団の皆でやるよ。手が足らなくなったら力を貸してくれるよう頼みに行くからさ。」



「ほう!それは面白い!今の言葉に嘘は無いだろうな、確かに聞いたからな!」



 笑いながら「言質を取ったぞ」と喚き散らすランドルフ。



「クラウド殿、今のは少しまずかったな。」



 おそらく助力を頼みに行く時は「それが人にものを頼む態度か?」といったやり取りになるだろう事はクラウドも分かっていた。「それなら何故?」と問うエリックとファンクにクラウドは平然と言う。



「そりゃもうあいつらの出番はないからさ。さっきの言葉はこちらが力を貸してくれと頼むまでは手を出せないという意味にもなるだろう?」



 今まで魔術師団がいたからこそ戦い抜いてこれたと言える。2人が驚いたのはその『主力』を必要無いと言うクラウドの話し方であった。


 激昂して冷静で無いと言うならまだ分かるというもの。


 彼は全く冷静なままでそれを言ってのけたのである。しかし、クラウドからしてみれば当たり前の話しである。なぜなら彼は当初は一人でドランまで行くつもりだったのだから。むしろクラウドからすれば魔術師が出張っておきながら遅々として進まないその旅路に苛立ちが出始めてた事もあってのセリフであった。


 レムリア皇国領土にアンデッドが湧いているとは知らなかったが、彼からすればそんなものは些事である。


『如何なる相手も自分の歩みを止めることは出来ない』


 確固たる自信がそう告げていた。





「エリック様、またアンデッドの群れが出ました!今回は今までで最大の数です。目算でおよそ200体はいるかと!」



「なっ!早く魔術師団の準備を!」



 そう言うエリックを横目にランドルフが申し訳なさそうに謝る。



「申し訳ありませんエリック様、未だクラウド殿より詫びを頂戴しておりませんで・・・」


「貴様、この期に及んでっ!」



 そんな会話の横でクラウドはファンクに尋ねる。



「ファンクさん、アンデッドの動きについていけない騎士はいるかい?」


「どういう意味だクラウド殿?倒せるかでは無く動きについていけるかというだけか?それならただの一人もおらんぞ。今回選抜されたのは腕利きの騎士の中でも精鋭と言われる第一騎士団の連中だ。それにアンデッドが厄介なのは騎士が使う剣や槍では倒しにくいってだけだしなあ。」



「そんな人手が1000人もいるのか。よし、んじゃ騎士団の前に連れて行ってくれるか?」



 そう言うとファンクと共に騎士団の前まで移動する2人。



「ク、クラウド殿、本当にさっきの言葉を言うので?」



「当然。もう魔術師団も引っ込んでおくよう言ったしね。」



 何やら気が進まない風のファンクであるが、仕方ないと腹を括ったようだ。騎士団を前にファンクの演説が始まった。



「皆!今まで散々魔術師団より役立たずと罵られていたが、ついに我々が力を示す時が来た!」



 騎士団のメンバーも魔術師団からの誹謗にはうんざりしていたようだ。「自分達の力だけで戦う事に異議はない」「共に戦うと言ってくれたクラウド殿には感謝する」と言った言葉が噴出している。そんな中・・・



「ああ、全員で行く必要は無いよ。この程度の規模なら50人くらいで十分じゃ無いかな。」



 今まで精神を削りながら戦ってきたというのに、今までで最大数の敵襲に50人で良いと言うクラウド。その理由は、



「それじゃ前から50人までの人、剣を抜いて上に掲げてくれるかい?」



 クラウドは躊躇いながらもファンクに促され言われるままに剣を掲げる騎士達に手を向けた。



「【聖なる刃ホーリーエッジ】」



 それは武器に魔法を纏わせる付加魔法。アンデッドが倒せない理由は動きについていけないからでも強力な攻撃手段があるからでもない。むしろ日々鍛錬に励む騎士団が肉弾戦で劣る筈が無い。


 今騎士達の剣からは白く光る輝きが溢れている。アンデッドの弱点である浄化の力を剣に纏わせる武器強化の魔法であるが、それを理解している者は居ないようだ。至る所で「何だこれは?」と聞こえている。



「いいからさっさと行って来い!」



 前に進まない騎士達に痺れが切れたクラウドから檄が飛ぶ。さすがに50人だけではとしり込みするファンクを余所にアンデッドに向かって行った騎士達であったがその効果は尋常では無かった。


 比較的動きの遅いアンデッド達である、騎士達が一太刀入れること位は容易い。驚いたのはその一太刀で勝負が決まってしまうことである。それは通常なら歯牙にもかけず襲い掛かって来る程度の斬撃。しかし浄化の力で包まれた剣はいとも容易くアンデッドの力を無効化した。一太刀でアンデッドを仕留めることが可能。それならば200体は一人が4回剣を振れば討伐が終わる数でしかない。



「こ、こりゃあ50人でも多かったか・・・?」



 ようやく絞り出した声でファンクが目の前の光景を見て呟くのであった。

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