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トント村の悲劇

特に見所がある回でもなく、物語上、書かざるをえなかった回です。読みごたえなくて申し訳ない・・・

 クラウドが家族の一員と認められてから5日が経過した。


 見たこともない男が村に入り込んでいる。


 仕事もせずに暮らしている。


 小さなトント村では噂話などあっという間に広まっていく。それが村唯一の無役のいる家ともなれば尚更だ。



初めて一緒の食卓を囲んだ日の夜、クラウドはルーク達3人に相談していた。



「仕事は必ず見つけるが、何をするかはまだ決めていないんだ。村の中の様子を少し見てから決めさせてほしい。申し訳ないんだが、決まるまで少しの間待っててもらえるか?」



と。3人はその言葉に頷いた。





 そんなある日、担当となった床の拭き掃除を終え、洗った雑巾を干していると見知らぬ男から声がかかった。



「おい、お前。一体いつからこの村にいるんだ?数日前から見かけてはいたが・・・。」



 クラウドが振り返ると引き締まった体躯をした男が右手に鉈を持ち立っていた。



「初めまして。私はクラウドと申します。5日前からマーサさんのところでお世話になっています。あなたは?」



 思いのほか丁寧な返答に男は拍子抜けした様子で答える。



「おれは隣に住んでいるガストンってもんだ。・・・猟師をしてる。」



 トント村は家同士がある程度散らばって建っている。ルークの家も隣人が住む家とは20m程度離れていた。


 更に近隣への挨拶はマーサ婆さんに止められていたことで、クラウドは隣に住むガストンの顔を知らなかった。



 今、自分たちと近所付き合いをしている家は無いからと。



 わざわざ挨拶になど行っても、どうせ追い返されるだけだと。



 それを聞いたガストンはバツが悪そうに返事を返す。



「ん・・、まぁ・・・。そうかも・・な・・。」


 歯切れの悪い言葉を聞いてクラウドは不思議に思いガストンに尋ねた。ルーク達家族への思いから口調がややくだけたものになる。



「もしかしてこの村の無役への扱いは何か訳でもあるのか?俺はよそ者で、この村には来たばかりで何も知らないんだよ。良ければ教えてくれないか?ガストンさん。」



 そう頼むとガストンは少し俯いた後、小声で返事を返してきた。



「・・・ここじゃ目立つ。家に来い。」



 それだけ言うと足早に自身の家に向かって行った。


 クラウドも彼について行く。ガストンは自分の家に入り、そのまま裏口へと向かう。

裏口横に置いてある丸太を輪切りにしたような椅子にドカッと腰を降ろした。



「家の中じゃ誰かが入って来ればすぐに見つかる。ここからなら家の中も見えるし、あんたも直ぐに外に出ていけるだろう。」



 何に警戒しているのか分からなかったが、クラウドはガストンに早速本題について尋ねる。



「・・・で、ここまで入れてくれたってことは教えてくれるんだろ?一体何だってルークの奴をここまで村八分にしたんだ?無役の他に何があるんだ?」



「・・・村八分か。その通りだな。・・・確かに無役のやつには世間様は冷たいもんだってのが一般的と聞いている。だけどよ、そりゃ人が集まる王都なんかでの話だ。特に偉そうに俺達を見下す貴族様から馬鹿にされるらしい。」



「まぁ、それなら分からないでもないさ。庶民を見下す貴族は多いと聞くしな。だけど、それなら・・・」



 まだ喋ろうとするクラウドを遮り、ガストンが話しだす。



「あんたも数日とはいえ、この村で暮らしたんだ。何かおかしいと思うところは無かったか?」



 言葉を遮られたクラウドは眉間に皺を寄せるが、その一言でガストンが何を言いたいかの察しがついた。





 この村には近くに森や丘などはあるが水場がないのだ。川や池が無いにも関わらず、クラウドはこの村で井戸さえ見たことが無かった。




「・・・この村って井戸は何処にあるんだ?いつもマーサさんが『水汲みは女の仕事だ』と言うもんだから任せきりになってたんだが・・・。」



 それを聞いてガストンは忌々し気に答えた。



「・・・この村には井戸はない。水源を持つ領主から水を買ってるんだ。」



 ガストンは村の中に井戸は無く、村長の家に隣接して建っている領主の館の敷地に1つがあるのみだと説明した。そしてその井戸は村では無く領主の所有となっていることも。



 トント村は小さな村落だ。



 日々を生きていくだけで必死なはずの住民が、毎日必要となる水を買い続けるなど出来るはずがない。



 そんな蓄えを持つ者などいるはずない。しかし、ガストンは水を買っていると言った。つまり買える程度の捨て値で売ってもらっているのだろう。





 その代償に何らかの便宜を図りながら。



「何で村の中に井戸を掘らない?」



「・・・井戸を掘ったって水が出なけりゃ同じさ。」



「出なかったのか?」



「掘るまでもいかなかったんだよ。」



 ガストンは思い出す。



 以前、村の皆でなけなしの金を持ち寄って冒険者ギルドに依頼を出したことを。



 冒険者ギルドを通じて雇った水の精霊使いのことを。



 精霊使い。それは召喚の儀で精霊を呼んだものの魔術師になれなかった者たち。しかし彼らの中には魔術こそ使えないが精霊との簡単な意思疎通なら可能という者達がいる。



 初めはどこを掘れば水が出るかを調査してもらうはずの依頼だった。



 しかし、その精霊使いは無惨な調査結果を村長に告げたという。 



 村の中に使えそうな水源は一つもないと・・・



 もうすぐ魔法の出番作る予定です。


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