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ルーク飛翔②

 ガタゴトと揺れる馬車にルーク、ジン、ケイトの3人が乗っている。



「ねぇ、まだ時間がかかるのかしら?」



「もう少しで着くんじゃないかな。確か前に通った時がそうだったと思うんだけど。」



 ケイトの質問に返事を返したルーク。トント村からグラスフォードへ出てきた時に通った街へ向かっている事もあり、大体の場所を覚えているようだ。



「ルークの言う通りそろそろ着くはずだ…、ほら見ろ、もう見えてきたぞ。あれが目的地のロンメルだ。」



 ジンが前を指さして言う。



「お客さん達、悪い事は言わねえ。あの街はさっさと通り過ぎた方がいいですぜ?」



 3人に声をかけたのは乗っている馬車の御者だ。



「なんでもこの辺りは一ヶ月程前から恐ろしい魔物の目撃が相次いでたんでさあ。実際周囲にある小さな村のうち2つが潰され1つは半壊したって話しですぜ?」



 出発前はあまり人相の良くない御者を見て警戒もしたが、出発してからの気配りは心地よいものだった。人の良い御者に3人を代表してジンが告げた。



「大丈夫。俺達はそいつを倒しに来たんだ。」



~~~~~~~~~~~~


 街へ着いた3人が見たのは物々しい雰囲気の冒険者達であった。



「この人達ももしかしてロックレックスの討伐に来ているのかしら?」



「え?でもその依頼は僕たちが受けたのに?そんな事あるかな?」



 不思議そうに首を傾げるルークとケイトを見てジンがふぅと溜息を洩らした。



「そういえばグラスフォードから離れた場所で高ランク依頼を受けるのは2人共初めてだったな。依頼地の冒険者達で手に負えない魔物が出た場合なんかは周囲の冒険者ギルドに助けを求めるんだ。だけどそのせいで違う場所で出た依頼を同時に受けるなんてことが発生するのさ。最も、そんな事になる依頼は元から人数を集めて討伐する必要があるような魔物ばかりだから何の問題も無いんだけどな。」



 実力はあるが相変わらず世間のこと、特に冒険者業界のことについて全く知らないルークに呆れながら説明する。



「普通はそういう事情なんかも冒険者やってりゃあ少しづつ知っていくもんだがなぁ…」



 現れたと同時に街一番の裏ギルドである黒天壊滅の立役者となりあっという間に高ランク冒険者となったルークには下積みという経験が無い。更にはDランクのケイトもまた高ランク依頼の事情など知る筈も無く、ジンはこのアンバランスなパーティに良くやきもきさせられている。



「まぁ文句なんか無いけどな。」



「「え?何か言った?」」



「いいや、何でもないさ。」



 ジンは2人に聞き返され笑いながらそう返す。


 そのまま3人はロンメルの街へ入る。



「それじゃあまずは冒険者ギルドへ行こう。依頼の受注手続きをしないとな。」



「う~ん、先に宿へ行かない?こんなに冒険者が多いんじゃ泊まれる所があるか心配だよ。」



 それもそうかと話した結果、ジンとケイトが冒険者ギルドへ向かいルークが宿の手配をしに行くことになる。



「(しかしこいつは…。いつかその性根を叩きなおしてやるからな…)」



 そもそもこのパーティのリーダーはルークである。そのパーティが依頼を受けるに当たって受付へ責任者が行かないというのはなかなか問題だ。ジンはパーティを組んでからルークがギルドへ行きたがらない事に困り果てていた。


 しかし、当のルークは涼しい顔である。


 ルークは自分よりもジンが行った方が何事も手際よく終わる事を知ってから自分よりもジンにそういった仕事を頼む傾向にあった。



 パーティの顔としてもっと表立って活動して欲しいジン

 

 手際の悪い自分が行ってもたつくよりもジンが行った方がギルド職員も助かるだろうと考えるルーク



 現状この問題は平行線を辿っており、パーティリーダーのルークの意向が通った形だ。最もジンは未だ諦めてはいない。自分が認めたルークをもっと表舞台に立たせたいと考えていた。



「(くそっ、本当ならこんな役目は取り合いになるのが普通なんだよ!他の冒険者が尻込みする依頼を受けに行くとギルドへ申請に行くんだ。冒険者冥利に尽きるってもんだろうが!他の冒険者達からも一目置いて見られるってのに…)」



 そんな事を考えながらジンは思わず吹き出した。ルークじぶんがみとめたおとこがその依頼を受けると言った時の事を思い出して。



『そんな魔獣が出たんなら早く倒さないと!戦えない村の人達が傷つくなんて駄目だよ!』



「(甘い男だ全く…)」



 自分でも気づかないうちにジンは苦笑いを浮かべていた。



 冒険者ギルドへ向かった2人はなんなくギルドを見つけ中へ入る。



「ひっ!?」



 ケイトの声が上ずった。そこでは3人の冒険者が血まみれで倒れていた。



「き、貴様!!」



 おそらくは倒れている冒険者達の仲間だろうと思われる男が吊り上がった目で1人の男を睨みつけていた。



「ぎゃあぎゃあと喚くな。お前らじゃあロックレックスは無理だと言っただけだろ?逆上して襲い掛かってきて返り討ちにあった、それだけの話しだ。」



 何の興味も無いとばかりに冷たく返す男に悪びれた様子は一切無い。



「まぁ良かったじゃねえか。ようやく見つけたターゲットなんだ。こんな奴らがヘマやって逃げられたってんじゃ目も当てられねえぜ?」



「ははっ、それもそうだな。」



 冷徹な目をした男に話しかけてきたのは真っ赤な鎧を着た戦士。それを見たジンが呟く。



「あれは…」



「知ってるのジンさん?」



「ああ、ここより東で名を売ってる奴らさ。Bランク冒険者以上で結成されたパーティ『竜伐の剣』だ。とにかく腕が立つってことで有名だがそれと同じくらいに血の気が多い事でも有名でな。やたらと揉め事の多い奴らさ。」



「あまり関わり合いたくないわね、いきましょうジンさん。」



「ああ。さっさと受付を終わらせてしまおう。…それと何度も言うが俺の事はジンと呼べといっただろう?ようやくこの前からルークはそう呼ぶようになったから後はケイトだけなんだけどよ?」



「も、もう!私なんかがそんな事出来る筈ないでしょ!?」



 いつものやり取りをしながら受付へと向かう。



「あぁ?ジンじゃねぇか!」



 そんな2人を見て「また足手まといが来やがった」と毒づいた男であったが、その中に見知った男がいるのに気づいて声を上げた。


 気づかれたくなかったジンは舌打ちしながら返事を返す。



「…久しぶりだなライド。」



 しかし知り合いである事とは裏腹にジンとライドと呼ばれた男の表情は硬い。



「ありゃりゃ~?そいつは確かジンとかいう奴じゃなかったか?前にお前の誘いを断った奴だろう?」



 割って入ってきたのは先程同様赤い鎧の男。「何でこんな所にいるんだ?」と騒ぐ男を見てジンが溜息をつく。



「この時期にこの街にいるんだ。言わなくても分かるだろう。もう行かせてもらうぞ、俺達は着いたばかりだ。まだまだやる事があるんでな。」



「…てめぇ!!」



 あしらうようなジンの返事を聞き、怒りが篭った声で前に出ようとする戦士。それをライドが止めていた。



「まあいいさ。だが調子に乗るんじゃねえぞジン!手前ぇは俺達の誘いを蹴ったんだ。仲間面はすんじゃねえ!俺達の邪魔をするんならそれなりの報いを受けてもらうからな!」



 喚き散らす戦士を引きずりながら竜伐の剣の2人は出て行った。それを見てケイトが呟く。



「…一体何を言ってたのかしら?」



 それを聞いたジンがおそらくと言いながら説明する。ライドは竜伐の剣を立ち上げたパーティリーダーでありそのライドとよそ者である自分が対等に話していたのが気に食わなかったのだろうと。仲間面するなというのは馴れ馴れしく話しかけるなという意味だろうと。それを聞いたケイトの表情は引きつっていた。




「ちっくしょうが!」



 悪態をつきながら路地を歩く赤い鎧の戦士。


 いつかは竜を討伐する程に腕を上げるという意味を込めて結成されたパーティ『竜伐の剣』。彼はこのパーティの結成からのメンバーであり、周りと衝突を繰り返す自分をパーティに誘ってくれた今のリーダーに深い恩義を感じている。

 初めて会った時に本人が「自分の事はライドと呼んでくれ」と伝えた事でジンはそれが名前と誤解しているが彼の本当の名はストライダーといいライドとは仲間内の呼び名である。仲間面するなとはこのことを指すのだがそれをジンが知る筈も無い。



「ウロチョロすんじゃねぇ!」



 機嫌の悪い戦士は自分が歩く路地で走り回る子供にイラつき怒鳴り声を上げた。子供を抱え込むように掴まえたふくよかな母親が焦った顔で「すいません」と繰り返し謝っている。



「けっ!ガキの躾けくらいちゃんとしろや!」



「おい、お前。」



 謝る母親を蹴飛ばそうとした時である。不意に自分の近くから声がした。



「謝ってるだろ。許してやれよ。」



 いきなり話しかけられ戦士は驚いた。生意気な口の利き方にでは無い。ほんの数歩で触れるほどの距離まで近づかれておきながら今まで一切気づかなかったことにである。



「き、貴様っ!」



『自分の間合いにいきなり侵入していた』


 それは戦士にとっては十分な攻撃理由になったようだ。剣は抜かなかったものの握り込んだ拳は手甲で守られている事もあり十分な凶器となっている。が、



 カツッ!



 凶悪な拳が届くより先に目に見えないほどの速度でくうを走った拳が戦士の顎を打ち抜いた。その途端、顎は跳ね上がり脳は揺さぶられ脳震盪によって戦士は昏倒してしまう。


 ばったりと倒れた戦士を見ておずおずとした調子で子供を抱えて抑え込んでいる母親が助け船を出してくれた男に声を掛けた。



「あ、あの、ありがとうございました。何とお礼を言えばよいか…」



「ん?な~に気にする事もないさ。」



 ほのぼのとした雰囲気さえ漂わす男を見て、ほっと一息ついて安心した母親。お礼をしたいという申し出さえ断りその場を立ち去ろうとする男。母親はロンメルの街に住んで既に20年以上経つ。しかし見た事も無いその男を見て、最近街へよく来る冒険者かと思った。しかし改めて礼がしたいからと言って尋ねてみるとその男は依頼を受けてきた冒険者では無いと言った。



「それなら貴方は…?」



「な~に、出来の良い弟の様子を見に来たただの保護者だよ。」



 今、ロンメルの街に1人の男がやって来た。弟を大切にする兄と言えば聞こえは良い。


 しかしその実態は・・・・





「取りあえずあいつの邪魔になりそうな魔物はこれから狩るとして、先ずはあいつにからみそうなたちの悪い奴らを取り締まっておくかな。」



 特別スペシャルなまでに過保護な親の代理人モンスターペアレンツであった・・・



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