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新生冒険者パーティ

 グラスフォードの街からほど近い草原。そこからもう少し進めば茂みは深くなり更にその先は森へと続いている。そんな場所にルークとジン、ケイトの3人がやって来た。


 そもそもの話しは黒天襲撃の一件が終わった後、ジンがルークにパーティを組もうと持ち掛けた事である。


 彼は冒険者ギルドも頼りにする程の凄腕のBランク冒険者である。しかし高位の冒険者でありながら決まった仲間を持たず活動してきたのだが今回の一件で気が合ったルークを仲間へと誘った。この申し出をルークが応諾。そしてギルド屈指の一流パーティが出来る・・・・・筈だった。



「しかしこんな事になるとはな…」



 そう言いながら「はぁ」と溜息をつくジン。



「すっ、すいません…」



 申し訳なさそうにケイトが俯いている。


 実はルークはジンに誘われる前に既にケイトからパーティを組もうと持ち掛けられておりそれに応じていた。つまりルークとケイトのパーティにジンが後から参加した形だ。

 戦闘力はあるけれど世間慣れしていないルークのフォローが少しでも出来ればと考えルークを誘ったのであるが実力の違う冒険者ジンが参加した事で途端に場違いな立場になったと感じているケイトは既にいたたまれなくなっている。



「あ、いや、そういう意味じゃないぜ?気を悪くしたなら謝る。」



 知らない内にお荷物を抱え込まされたと、つまりケイトはジンに足手まといと思われたと考えたようだが、ジンの溜息の意味は違った。彼は昨日の出来事を思い出していたのだ。



 それは一言でいうならば『呆気にとられた』というもの。



 ルークとパーティを組むにあたり既に仲間ケイトが居るとは思わなかったジン。しかし、元々成り上がる事にそれ程のこだわりがある訳では無いマイペースな彼はケイトの事も受け入れた。自分とルークがいれば十分カバー出来るだろうと。寧ろ若い後輩の指導は彼にとっては一つの趣味のようなものだ。


 パーティ結成が決まってこれから共に行動することになった3人。


 ジンはそんな仲間へ自分の拠点を使おうと申し出た。彼はBランクの冒険者でありパーティの中では一番お金を持っている。そして今までの稼ぎで家も建てている。それは数人で暮らすには十分過ぎる大きさであり宿代は要らないからと共同で使う事を申し出たのだ。

 それを聞いてケイトが喜んだ。病気の家族を持つ彼女にとって家賃の心配が要らない事はありがたい事この上ない。しかしそうなればルークだけ断るという訳にもいかない。せっかくパーティを組んだというのに出だしから歩調が合わなくては一体感が無いとルークが考えたからだ。


 その結果、ジンとケイトはこれから別に暮らすと家族に説明しに行くルークに同行しパーティメンバーとして挨拶へと向かった。それが一昨日のこと。











 その場で話しを聞いた者達の反応は様々であった。


 姉と名乗ったタニアはルークが独り立ちしていくことを嬉しい反面寂しいと言った。


 無二の親友と名乗ったヒュウガという男は自分も其処に住むと言い出して周りに止められていた。


 タニアを敬愛する従者と名乗ったリックはそんな事は好きにすれば良いと言った。


 他の者がオウルと呼んでいた男は一言も喋らなかった。


 来客していた自称友人はルーク殿が冒険者として歩き出した場に立ち会えて嬉しいと言っていた。というか王国のNo2である宰相だった。


 その様子をジンは戸惑いながらも見ていた。





 その時の事を思い出してジンは溜息をついたのだ。その中でも一際変わった男が居た事を思い出して。




「あれがルークの兄なぁ…」



 その男は自分はルークの兄だと言った。


 そして兄として弟を心配していると言った。


 そして兄として同行するパーティメンバーが足を引っ張らないか心配だと言った。


 そして妹に叩かれていた。


 そしてこれからも鍛錬は必要だからなるべく帰ってきて自分の修行を受けろと言ってた。


 そしてせめて自分の人生を歩き出した弟に餞別を贈りたいと言った。


 それと同時に弟と共に戦う俺達にも餞別を贈りたいと言った。


 そしてアイテムポーチを2つ差し出された。便利だよと言いながら。アイテムリングが正式名と注意された。


 同時に武器も渡された。見た事も無い程に豪奢に飾られた剣。つい先日やって来た男の落とし物らしい。聞けば偶然にも壊滅した裏ギルドの二つ名持ち、『好色』と同じブルームという名の男らしい。


 というか、どう見てもブルームの代名詞とも言われた魔剣スキアヴォーナに見える。


 挙句に貧相な魔剣だけど無いよりマシだろとか言ってた。


 ケイトへ渡していたのも魔剣らしい。短剣タイプで魔剣ウインドダガーという名らしい。


 ケイトは俺より武器の扱いが不慣れなようだから少し良い武器にしたよとか言ってた。


 というかどう見ても目の前で作ってたように見えた。自分のアイテムポーチから短剣を取り出し普通に「エンチャント魔法、風魔力付与。よしこれでいいか。」とか言ってた。


 最後に防御用の魔導具も渡された。『プロテクションバングル』といってアイテムリングを嵌め込んで使えるから邪魔にならないらしい。


 刃物や飛来物を自動で察知して防いでくれるらしく魔剣スキアヴォーナ程度じゃあ傷もつかないらしい。それもうほとんど無敵じゃね?とか思った。


 それらを渡した後、皆の前で仲間はお互いを大事にするものだと力説していた。


 仲間がピンチの時は身体を張って庇うのだと言ってた。主にジンに言いたかったのだろう。だって話していた時両肩を掴まれてたし。


 そしてまた妹に叩かれていた。


 それをヒュウガという男が止めていた。大事なことだとか言いながら。


 さらにそれをリックという男が止めていた。タニア殿に無礼な真似は許さんぞとか言いながら。







 そして現在、3人は貰ったアイテムの性能を確かめに草原へと来ている。



「はぁ…。何でこんな事になったんだろ…」



 再度溜息をつきながら後ろを振り返るジン。そこには魔物が倒れていた。魔剣スキアヴォーナの切れ味は今まで見た事が無い程に鋭く、襲い掛かって来た魔物を簡単に切り裂いた。

 普通なら刃が通りにくい程に硬い毛を持つ猪型の魔物ヴィレッジボアさえ一刀両断する。


 その横であわわと言いながら震えているケイト。彼女は襲ってきたゴブリンをウインドダガーで斬りつけた。


 ジンの腕前に見とれていたためゴブリンに気付くのが遅れたケイト。近くにあった茂みからいきなり飛び出してきたゴブリンに焦ってしまい腰が引けたまま剣を振る。その結果、剣先がゴブリンを掠っただけであったのだが、ゴブリンは掠った剣先から真っ二つに斬り裂かれたかと思ったら巻き起こった暴風に包まれ肉塊へと変わった。




 「本当に何でこんな事になったのか」何度目になるだろうその言葉を思いながらジンはケイトへ魔物と戦う時はなるべくその武器は使わないよう言った。冒険者が魔物と戦うのは金になるからだ。


 にも関わらず、渡された武器によってゴブリンはただの挽肉へと変わった。


 魔物の素材や討伐証明部位などどこ吹く風である。


 渡された魔剣の性能は驚くばかりだ。しかもそんな魔導具をあの男は何の逡巡も無くポイと渡してのけた。それを思い出したジンは何度目かも分からない溜息をまたつくのであった。



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