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暗躍する者達②

 ケイトが消息を絶った次の日、グラスフォードの冒険者ギルドは大騒ぎとなっていた。



「それで、ルーク君には連絡は取れたのか!?」



 ギルドのサブマスターであるノビアが苛ついた表情で問いかける。



「いえ、それがまだ連絡がつきません。何せ登録したての冒険者という事もありルーク君の常宿が何処かさえ誰も知らない状態で。今はしらみ潰しに街の宿を当たっています。」



「くそっ!まさかこんな事になるとは!」



 ノビアの言う『こんな事』。それはティアの採取依頼で不正を働こうとした冒険者を取り調べたところ、裏ギルドの構成員だと発覚したこと。


 しかもその裏ギルドはグラスフォードでも一番大きな裏組織。予想外の大物が関係していた為、警戒した冒険者ギルドは当事者であるケイトとルークに注意を促そうとしたが…


 ケイトの家を訪ねた職員は寝たきりの母親から数日前から娘が帰らないと聞かされる事となった。


 事の重大さを理解したノビアはもう一方の当事者であるルークを保護する為、職員総がかりでその所在を探していた。


 最も、登録したての新人冒険者を探すに当たり、職員達が安宿から捜索を始めたのは仕方がないことである。


 一人一泊銀貨8枚を超える高級宿に家族3人で泊まっているなどと誰が思いつこうか。



 そんなルークの足取りを最初に掴んだのは受付嬢のイリアだった。



「ル、ルーク君!?」



 ルークの捜索に走り回っていた彼女は今日も収穫無しかと肩を落として帰る途中でそれを見つけた。



「あれ?冒険者ギルドの受付の人?」



 最高級とまではいかないが、どちらかといえば高級な宿。そんな宿の前を通りかかった時、広い庭の片隅で一心不乱に剣を振るルークの姿を見つけたのだ。


 キョトンとした表情でイリアを見るルークは汗だくである。その手には少年には似つかわしくない程に大振りの剣が握られていた。自身の背丈と同じ程度のその大剣は一般的な大剣であるバスタードソードよりも一回りも二回りも大きい。


 本来大きな武器はその重さのために剣筋がかなり制限されるが、それを器用に振り回し遠心力を得て繰り出す一撃は今までイリアが見た事も無い程に鋭かった。イリアは見つけたルークに向かって走り出す。



「よ、良かったルーク君!無事だったのね!」



「え?あ、はい?」



 そしてイリアはルークに説明する。ケイトが行方不明となった事、ルークが捕まえた冒険者が裏ギルドの構成員であった事、その裏ギルドはグラスフォードで一番大きな勢力である事、ルークの身にも危険が迫っている事について。 



「大変だ!ケイトさんを助けなくちゃ!」



「え!?」



 話しを聞き終えたルークの最初の言葉がそれであった。イリアは驚いて目を見開いている。


 本来自分の身に降りかかる危険は自衛が原則である。攫われたケイトを助ける為に冒険者ギルドが動いているのは自身と相いれない敵対勢力を潰すためという本音があってのこと。

 パーティを組んだ仲間等の理由も無く、少なくとも一冒険者が損得勘定抜きで人助けを行うという事は通常なら考えられない。



「貴方は話しを聞いていたの?」



 しかしいくらその気があろうとも気持ちだけでは人は助けられない。いくら何でも相手が悪すぎるのだ。にもかかわらず、ルークは考えを変えなかった。



「どちらにせよ君は一旦ギルドまで来て。君の身の安全はギルドが守るわ。」



 冒険者ギルドへ来るように促されたルークはチラリと振り返り自分が寝泊まりしている部屋へと視界を向けた。



「(…クラウドとお姉ちゃんが心配するかも知れないけど、僕は約束したんだ。冒険者として1人で頑張るって!幸いあの4人を心配する事は無いし!)」



 何処が安全かと問われれば、最も安全な場所は今自分が居るこの宿であることは間違い無い。しかしルークはギルドへ向かう事を了承した。部屋に居るクラウドとタニアへ「少し出かけるのでしばらく留守にする」とだけ伝えて出発した。



「何があったのかしらルーク…」



「ふふふ、それは分からないが段々と良い顔する様になってきたと思わないかいタニアちゃん?」



 クラウド達が楽しそうにルークの成長について話し合う。



「それじゃあそろそろこっちも食事にしようか。タニアちゃん食堂へ行こう。」



「うん、そうね。…でも、あのねクラウド?こんな事言っちゃいけない事くらいは分かってるんだけど…」



「どうしたタニアちゃん?遠慮なんかせずに何でも言ってよ。」



「うん、あのね、ルークが頑張ってるのは本当に良く分かってるの!今までだってずっと身体を鍛えてきたのを見てたもの!でもね、それでもやっぱり危険な事やどうしようも無い事だってあると思うの!ルークが独り立ちしようと頑張っている時にこんな事言うのは良くないんだけど、もしルークが本当に困った時があったらこっそりとでいいから助けてあげて欲しいの。」



 少し顔を俯けて話すタニアへクラウドは笑顔を向けた。



「何言ってんのさタニアちゃん。そんな事くらい当たり前だろう?俺はいつだって2人の味方だよ!」



「…うん、ありがとうクラウド!それじゃあ食堂へ行きましょう!ふふ、ずっと思ってた事が言えてスッキリしたら私もお腹がすいちゃった!」



 そう言いながら恥ずかしさもあったのだろう。そそくさと部屋を出る支度をして食堂へと向かうタニア。そして部屋からタニアが出て行った事を確認したクラウドが小さく呟いた。



「…オウル。居るか?話しがある。」



「はい、ここに。」



 そう返事が返ってきたかと思うと部屋の隅の影からゆっくりと1人の男が姿を現した。クラウドがタニアを追って部屋を出たのはその数分後であった。



□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ 


 冒険者ギルドの扉が勢いよく開いた。



「ただいま戻りました!ルーク君を見つけて連れてきました!」



 まるで容疑者の様な扱いでルークが連行されている。



「でかしたイリア!良く見つけたな。よし、これで人手をケイトの捜索へ回せるぞ。」



 そう顔を綻ばすのはギルドのサブマスターのノビアである。



「一体何処にいたのよ、皆で探してたんだからね?」



「それがね、家族でグラスフォードまで来てたみたいで。彼ったら森の木漏れ日亭にいたのよ。」



「ええー、あんな良い宿に泊まってたの?何、少年って良いとこのお坊ちゃん?」



「ち、違いますよ…」



 イリアから聞いた居場所に同僚のミアが驚きを隠せないようだ。



「おしゃべりはそこまでだ!ルーク君はしばらくギルドで匿うとして我々はギルドからの緊急依頼を出す準備だ。裏ギルド黒天を襲撃して今度こそこの街から一掃してくれる!」



「「「はい!」」」



□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ 



「ライザー様!」



「なんだ騒々しい!」



 裏ギルド黒天の拠点の一つでその元締めであるライザーにある報せが届いた。



「はっ、ダック様から連絡がありました。探していた冒険者を見つけたと。どうやら今は冒険者ギルドに匿われているようです。」



「ちっ、先に身柄を押さえられたか。ま、仕方無えか。それならそれでやりようはある。」



「それが面白い話しがありまして。実は…」



「何!そりゃ本当か?」



「確かです!」



「そりゃあ本当に面白い事になって来たじゃねえか!よし、しくじるなよ!」



「勿論っすよ!そんれじゃあ俺も行って来ますんで!」



 そう言うと伝言に来た男は部屋を出て行った。



 冒険者ギルド、裏ギルド黒天が共にあわただしく動き出すのであった。

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