テンプレ発生
ルークとクラウドが初めて採取依頼を受けた日の翌日、ルークは一人で冒険者ギルドへとやって来た。クラウドに教えられ一通りの読み書きを覚えたルークは依頼票を張り出した依頼板の前に立っている。
「う~ん、色々あるんだな。」
昨日は採取依頼を受けて達成したものの、討伐した魔物を捨ててくるという冒険者にあるまじき失態を犯したルーク(とその保護者)。昨日の反省を活かし常時討伐依頼にはどういったものがあるのかを事前に確認しているようだ。
依頼板に張り出してあった常時討伐依頼は主に3つあった。ゴブリン討伐、オーク討伐、薬草・どくけし草の採取である。繁殖力の高い魔物の討伐と需要の多い薬草類の採取という非常に分かりやすいものであった。
「今日はクラウドが居ないけどせっかく来たんだから何か依頼を受けようかな。」
そう言いながら昨日受けたのと同じ薬草の採取依頼とゴブリンの討伐依頼の用紙を手に取り受付カウンターへと向かう。
「すいません、これお願いします。」
「はい薬草採取とゴブリン5体討伐依頼ですね。昨日の方とは外で合流されるのですか?」
どうやら昨日と同じ受付嬢に当たったようでルークの事を覚えていたらしい。登録したばかりのルーキー、それも登録がようやく可能となったばかりという幼い少年が討伐依頼を受けるのが珍しかったというのもあり心配になったようだ。手早く手続きを終わらせてルークへと話しかけた。
「いや、今日は一人なんです。では行ってきます!」
現在冒険者登録の手続き中であるルークはギルドカードが出来るまでのあと数日はカード無しである。(そのため依頼の達成状況はギルドが記録として残し、カードが届いてから記録を移し替える必要がある。)手元にカードが無いために依頼の受理時にその都度提出をしないですむルークはそう言うと駆け足で森へと向かった。
今まではマーサ婆さんやクラウドの稼ぎで暮らして来たルークは自分の力でお金が稼げるというのが嬉しくて仕方が無いようだ。
「え!?ちょっと待って下さい!」
しかし、10歳前後の子供がゴブリンの討伐依頼を一人で受けるなど危険極まりない話しである。それを聞いた受付嬢は驚き慌てて止めようとする。が、後ろを向いて駆けていくルークが気づかなかったようだ。
冒険者は危険と隣り合わせの職業である。命を落とす事さえ珍しいことでは無い。しかし、それでも登録したての子供が死ぬなど痛ましい話しなのは間違い無い。カウンターから飛び出した受付嬢が建物の外に出て辺りを見回すが少年の姿は何処にも見つけられなかったのであった。
「どうしたのイリア?」
「あっミア。それが登録したての子供が1人でゴブリンの討伐依頼を受けて飛び出していっちゃって・・・」
「げっ!?まーったく最近の子供は無謀にも程があるわね。仕方ないわよイリア、冒険者はあくまでも自己責任が大原則。それは幼いからといって許されるものでは無いもの。」
「そ、それはそうだけど・・・」
無口な受付嬢の名はイリアというようだ。冒険者ギルドを飛び出した同僚を見て隣のカウンターに居たミアが話し掛ける。そして話しを聞いてみれば、何処かの子供が無謀にも討伐依頼を受けたという。困ったものだと話しているイリアとミア。自己責任ではあるものの前途洋々な若者が命を散らすともなれば当然止められるものならば止めたいというのが心情というもの。
加えて冒険者ギルドにとって受け付けた依頼の成功率とは非常に大事な数字である。成功率が高いギルドには高額の依頼が集まりやすいし、高額の依頼が集まるギルドには腕の良い冒険者が集まってくる。また、高額の依頼ともなれば成功報酬の一部を人件費等の経費として徴収しているギルドからしてみれば高収入に繋がるのだから。
などとギルドの華である受付嬢達に心配されているとは露知らず、話題の主ルークは空を飛んでいた。
「やっぱり空飛ぶ絨毯は便利だな。」
昨日は周囲の地形を覚えるのも大事だと言われクラウドと歩いて森まで向かったルークであるが、今日は一人なので話し相手も居ないからと人目が無いのを確認した後アイテムリングから空飛ぶ絨毯を取り出し森へと向かっていた。昨日は1時間半ほど掛かった移動時間が今日は僅か10分程で森までやって来たようだ。
ルークは森の入口に降りるとお尻のポケットから小さな手帳を取り出した。片手で開いて見る事が出来るサイズのコンパクトなその手帳は冒険者の必需品だと言ってクラウドが用意したものの一つである。
そこには魔物の簡易的な説明や生息している地形・弱点や性質から始まり森や草原等で採取する際の薬草などが自生しやすい場所とそれぞれの薬効等が詳細に書き込まれていた。暑さ1cm程度であることより数十ページはある筈のその手帳は既に全てのページにびっしりと書き込みがなされている。
それも『魔物』『植物』等のカテゴリー毎に分類され非常に見やすく整理されている。クラウドがいつかルークに渡そうと1年前からコツコツと書いていたのだ。
反抗期の少年ならばその場で引き裂きそうなほどの過保護振りを示す手帳であるがルークはとても気に入ったようだ。
もちろんそこには今回採取依頼を受けた植物も載っている。
「よし、昨日に続いての薬草採取だ。傷薬の基になるヒルン草10枚とどくけし草の基になるヨーキ草10枚だな。」
ふんっと鼻から息を吐き出すとさっそく手帳を開き植物のページを見る。
「あった、これだ!ふんふん、ヒルン草は日当たりの良い茂みか。逆にヨーキ草は湿気が残る日陰などに生殖してる・・・と。」
ふんふんなどと言いながらさも今手帳を見て知ったように振舞うルークであるが、これからの事を考えて胸を躍らせながら読みふけるのが日課となっているルークにはわざわざ手帳で確認する必要は無い。
勿論一番最初に必要になりそうな薬草のページなど読み込み過ぎて丸暗記を終えているのだ。それだけでもどれだけルークが浮かれているかが分かるというものである。
「・・・よし、これでヒルン草は10枚揃ったぞ。次は・・・」
一生懸命に採取を続けるルークは今日も順調に採取を終えた。
採取依頼は新人が受ける事が多い。ある程度稼げるようになった冒険者は採取依頼など受けないしポーションを買う方が効率的なのだ。そのため、森の中では薬草は割と多く見かけることが出来る。
順調にヒルン草とヨーキ草を集めたルーク。そろそろ帰ろうかとした時であった。
「きゃああぁぁっ!」
森の中に悲鳴が響いたのであった。




