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初依頼

「わぁ、ここが森の中か。」



 無事登録を終わらせたルーク。折角登録したのだからとその場で採取依頼を受けた2人はストラフォードの西にある森に来ていた。ストラフォードの周囲は踏み固められた街道がある。その街道を約1時間程歩けば周囲には草原が広がっている。その草原から更に半時間程歩いた先にはミルトアの街よりも大きな森が広がっていた。

 ルークとクラウドが受けた採取依頼は冒険者ギルドで常時依頼として張り出されている傷薬の基となる薬草と解毒に使われるげどく草である。



「ほらここにもあるぞ、あそこにも。」



 次々と薬草を見つけるクラウド。久々のフィールドワークに若干気分も良さそうである。



「ちょっと待ってよクラウド。そんなに次々言われても分からなくなるよ。」



「何言ってんだルーク。次からは自分で見つけなきゃいけないんだぞ。ほれほれ頑張れ~。」



「えっ!?」



 その言葉を聞いてルークの手が止まった。ルークからしてみれば当然クラウドは自分と一緒に冒険者として活動していくものと考えていたのであるが、そのクラウドの口からこれから先はルーク一人で冒険者としてやっていけと言われたのだ。困惑するのも仕方がないだろう。


 しかしクラウドからしてみればマーサ婆さんと交わした約束がある。ルーク一人で暮らしていけるように独り立ちさせたいクラウドは一般的な方法であるが冒険者としてルークの身を立てさせようと考えていた。そのためには自分という保護者が同伴する訳にはいかないのだ。


 そのためにはクラウドは心を鬼にする必要がある。困ったからと言ってすぐに頼られてはいけないのだから。




 しかし、現在のルークの所持品はアイテムリングを始めクラウド特製のアイテムの数々を所有しており既に甘やかしているなどというレベルですら無い。唯一、最初から強い武器を持っては剣の腕が上がらないからという理由で持ってる剣は店売りのロングソードであるが。



「グガァッ」



 不意に茂みから現れたのは2匹のゴブリンであった。こん棒とも言えないような短い丸太を持っている。



「ほら魔物が現れたぞ。剣と魔法で1匹ずつ倒してみろ。」



「ええっ、いきなり!?」



 あたふたと腰の剣を抜きながらルークはもう片方の手を前にかざした。



「はあぁぁっ、【ファイアーボール3式】!」



 そう唱えるやいなや構えた手のひらから拳大の火球が3つほとんど同時に飛び出しあっという間にゴブリンの顔面へ直撃した。



 ボボボォンッ!



 小さな爆発音を上げ顔面の一部が爆散し焼け焦げたゴブリンはその場で絶命した。その隣を走っていたゴブリンが相棒が死んだ事に驚き足を止める。その時、ダッシュで距離を詰めていたルークの持つ剣が横一文字に薙ぎ払われた。



「ギャァァッ!?」



 腹部からこぼれる腸が周囲に不快な臭いを立ち込めさせる。背中の皮が辛うじて繋がっているだけの状態でもう一匹のゴブリンもその場で息絶えたのであった。



「やった!初めて魔物を倒したよクラウド!」



 そう喜ぶルークの頭にクラウドの拳骨が落下する。



 ゴツン!

「痛っ!?」



「何が倒しただルーク!剣術の方はまだギリギリ及第点をやれるが最初のファイアーボールは何だ?発動までに時間がかかり過ぎてる、訓練の時はもう2秒は早く打てていたぞ!しかも威力だって調子の良い時と比べると7割程度じゃないか!」



 振りぬいた剣筋は真っ直ぐ横一文字になっており鍛えられた足腰と剣の型が見てとれると思ったクラウドであったが魔法の方はいただけない。ルークは現在精霊との契約を終え火・水・土・風の精霊魔法のうち初級魔法と中級魔法を使えるまでになっている。

 しかも契約精霊は30体程になっており、威力を底上げするために複数の精霊を同時に使役することで同系統の魔法の連射(イメージ化しやすいようルークは連射数+式と発声している:上記戦闘では3発連射で3式)をも可能としている。


 ルークの熟練度はクラウドが満足するレベルでは無い。しかし既に市井の冒険者レベルでいうならば戦闘力は優にベテランランク程度はある。剣術が使える魔術師等という稀少さを考えれば更に上のAランクからでもパーティへの勧誘があるだろう。



「そんな腕前じゃワイバーン程度の雑魚にでもあっという間に殺されるぞ!まだまだ特訓は続けるからな!」



「うん!僕頑張るよ!」



 一般常識から逸脱しながらも少しずつ成長を遂げているルーク。見方によれば既に独り立ちはいつでも可能な状態である。しかしクラウドにとってのルークの『独り立ち』が『どんな魔物と戦っても殺されずに帰ってこれる事』という前提の上に立っている以上、クラウドから及第点を貰うのはハードルが高そうである。


 その後もゴブリン・コボルト・オークといった魔物を狩りながら採取を続けたルーク。日が沈む頃になってようやく帰路につくことになった。



「あ~初めて魔物と戦ったから疲れちゃった!それにしても薬草は結構採れたねクラウド!」



 無邪気に喜ぶルークの足元で倒されたオークが横たわっている。



「ああ、ルークが頑張ったからさ。こうやって受けた依頼を着実にこなしていくことが大事なんだ。それが積もり積もって人からの信用になるし、お金だって溜まっていくんだからな。」



 偉そうに講釈するクラウドの背後では倒れて伏した大蛇からもうもうとした煙が立ち上っていた。



「よし、それじゃあ今日は帰ろうぜ。」



「うん、お姉ちゃんも心配してるかもしれないしね!今日の依頼でどれぐらい稼げたかな?」



「ははは、楽しみだよな?早くギルドに向かおうぜ!」





 意気揚々と引き上げていく2人。






 そしてその場でゴミ同然に捨て置かれている魔物の骸。ルークが倒したオークから素材をはぎ取れば薬草採取の依頼料よりも良い値で売れるのは間違いない。

 しかもクラウドが焼き払った大蛇に至っては近隣では最も危険と言われる魔物の一匹であるイビルヴァイパー。勿論その素材は超がつく程の高級素材である。


 しかしそれを教える事が出来る人物は残念ながらこの場には居ない。ルークに冒険者稼業について教えている教師役のクラウドがそれらの素材に何の価値も見出していない以上仕方が無い。せめてトント村で冒険者が訪れたり魔物の素材が売買されていればルークは気づけたであろうが。








 冒険者ギルドへ戻りゴブリンやオークといった常時討伐依頼が出ている魔物を倒した場合も証明部位を持ちかえれば報酬がもらえる事やイビルヴァイパーの素材が非常に高額で売れることを受付嬢から知らされたクラウド。



「えぇ、あんな蛇の素材なんて使ってどうすんだよ?粗悪品しか出来上がらないだろ?」



 それを聞いてクラウドが漏らした一言を聞いた受付嬢の表情は引きつっていたという。



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