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古代魔法使いとの邂逅 その壱

初めて書きますので、至らないことも多いかと思います。ご指摘等あれば直しますので、よろしくお願いします。

 かつて高度な魔法文明を誇った時代があった。魔法使い達が自在に繰り出す「魔法」はあらゆる魔物を討伐する。また戦いの他、人々の生活の隅々までがその「魔法」の恩恵を受けていた。

畑を耕し作物を収穫する土魔法、違う場所に荷物を輸送するのに便利な重力魔法、家族のための家事に使われる生活魔法。また、戦いから生活までを全てにおいてサポートする強力で便利な魔導具の数々。

およそ人が生活する範囲において魔法が使われないことはない。



 それほどまでに魔法は普及していた。それは言い換えれば、人の手によって「魔法」が研究されていたということ。



 人類の叡智とも言うべきその魔法研究の成果が人類の繫栄を永久に約束してくれていると誰もが疑わなかった。



 しかし、人類史において最も大きな栄光と繫栄を掴んでいたその時代は、ある時代を境に突如として終わりを告げた。











 □ □ □ □ □ □ □ □



 高度魔法文明期よりおよそ1000年が経過した現在、人口約200人程の小さな村に一人の少年がいた。

少年が暮らす村の名はトント村。ユーテリア王国の南端に位置するこの村は農業と小規模な酪農で生計を立てているそんなありふれた村である。少年の名はルーク。ブラウンの頭髪は短く揃えられており、その顔はまだあどけなさが残る。特別美男子ということもなく、何処にでもいそうな少年で性格はお人好しの一言。人を気遣い損な役回りが回って来ることなど日常茶飯事であった。

 先月7歳になったばかりで4つ年上の姉タニアと祖母マーサの3人で暮らしている。



「はぁ・・・」



 今日で何度目かのため息をついたルークは村の東にある森の入り口近くまで来ていた。



 魔物は森の奥にしか出ず、入り口付近には小動物が生息しており村の猟師が肉を求めてよくやって来る。村の者には馴染みのある森だ。ルークも森に入ったことはないが、入り口付近の拓けた場所で兎を捕まえたことがある。

 切り立ってはいるが小振りな崖のふもとに立ち、土壁にもたれながら森を眺めていた。時折3mほどの崖の上から動物の足音が聞こえてくる。

 今頃は村の中央広場で儀式が行われている。それを見たくなかった。


 5歳になれば誰もが行う「召喚の儀」。それは王都の教会本部から司祭と神官が派遣され、杖の魔道具に魔力を込め直径15mほどの魔法陣を地面に書き込む。そして「召喚の儀」を受ける子供が魔法陣に立つと子供から魔力を吸収し、互いに惹かれあう召喚相手=精霊を呼び出す。召喚される精霊は契約者の魔力属性によって決まり、火・水・風・土の四大属性の精霊が召喚される。


 一般的に複数の魔力属性を持ち、魔力量も多い場合は魔力量に応じて複数の精霊を召喚できるとされているが詳しい仕組みは解明されていないらしい。複数の属性持ちはかなり優遇されており、望めば王国の魔法学校へ入学することが出来、将来は王選魔術師と呼ばれる国に所属するトップエリート集団に属すことも可能である。

 また、冒険者となれば強力な魔法使いは戦闘の要であり駆け出し新人でも複数の属性を持つなら有名パーティーから勧誘がくる程の有望株である。

 しかし戦闘を可能とするような強力な精霊はなかなか召喚されず、ほとんどが精霊は召喚出来ても魔法は使えないというのが一般的である。


「何が出てくるか楽しみだぜ~。」


 順番待ちをしている子供が期待に満ちた目で声をあげた。


「ちぇっ。おれ魔法なしか~。」


「ハンスだっせぇ。」


「あはははは。ハンスってば~。」


「まあ無役よりマシと思って我慢するか・・・。」


 子供達は思い思いに声をあげている。


 楽しそうな騒ぎ声が風に乗ってわずかに聞こえてくる中、ルークは自身の召喚の儀のことを思い出す。胸をときめかせながら魔法陣の上に立った時のことを。そして何もその魔法陣から出てこなかった時のことを。召喚の儀に失敗し精霊を得ることが出来なかった者は、使役できるものが無いという意味で「無役むえき」と呼ばれる。


 おおよそ300人に1人いるかどうかであるが、まさか自分が無役になるとは思ってはいなかった。自然と共に暮らしていくこの世界で精霊に見放されるということは世界に見放されたという意味を持ち蔑まれる。

 また、「無役」がいる家は納める税金が他家より高くなる。無役とそうでない者ではこなせる仕事量にも差が出てしまうため、役立たずが同じ税金では周囲に不満が生まれる。そのため高い税金を負担させることで役に立たない分を金で賄わせるというものだ。それはつまり無役ルークの家族の負担が増えるということ。


「・・・・どうして出てこなかったんだろう。」


 家に帰った時、姉や祖母に嫌な顔をされると思うと涙が何度もこみ上げ、帰ろうとする歩みを止めた。しかし帰ってみると姉のタニアは「気にしないでよね。ルークが悪い訳じゃないんだから。」と慰めてくれた。


「そうじゃよ。どうすれば出てくるかも分からんのじゃから。練習のしようもないわい。そんなことよりはよう夕ご飯にしよう。」と祖母マーサはいつも通り優しかった。


 契約者達は色々な可能性を持つ。今は魔法が使えなくても将来は使える可能性もあるからだ。が、無役となればそれすら無い。しかも無役はなぜか魔法が使えないだけじゃなく、スキルの習得・熟練も上手くいかない。


 もう自身は役立たずと決まったのだ。


 おそらく自分は今後単純な肉体労働すら周囲が満足するほどには出来ないかもしれない。狩人になっても畑を耕しても成果は上がらないだろう。村を出て街で雇われ先を探したところで安い賃金は目に見えている。自分の稼ぎはたかが知れたものだ。

 だがルークにとって何より辛いのは自分のせいで家族までもが周りから冷たい目で見られることであった。現に村の中でも美人で器量良しと評判で数人から早くも結婚を申し込まれていた姉は、弟が無益と分かったとたんに周囲の対応が一変したことをルークは知っている。


 妻になどなられてたまるかと態度を変え、酷い男となると「税金が払えない時は金を払ってやるから一晩言うことを聞け。」とまで言われたようだ。マーサに抱き着きながら泣いているところを見たことがあった。


「魔術師になりたいとまでは言わないけど、せめて精霊は欲しかったな。お姉ちゃんやおばあちゃんに迷惑なんてかけたくないのにな・・。冒険者なんてなれなくてもよかったんだ。2人が喜んでくれるだけで・・・よかったのに・・・。」


 つぶやきながら我慢していた涙がこぼれ落ちていくのもこれでもう何度目だろうか。



 しばらく泣いた後、俯いた拍子に足元の土壁からわずかに光が漏れていることに気づく。


「・・・何だろ?」


 不思議に思い土を少し掘ると空洞があった。不思議に思いながら更に土を掘ってみると小さな洞窟が姿を現す。入口は子供が一人通れるかどうか程の大きさであったが、中に入ってみれば信じられないほどに広い通路があった。切り揃えられた石が敷き詰められておりそこには僅かな段差も無い。


 ルークは訳が分からず固まった。この場所は何度も来ているお気に入りの場所だ。落ち込んだ時はよくこの土壁にもたれ掛かり泣いたものだ。


 掘った土は大体10cm程度。しかも下の部分を3分の1も掘ったところで残りの上部はバラバラと崩れてあっという間に洞窟の入り口が出てきた。こんなものがあれば今まで気づかないはずがない。あまりに不思議で頭が回らないまま、なんとはなしに進んでみると見たこともないほどに立派な扉があった。


「何だろ?こんな少し掘るだけですぐに洞窟が出てくるなんてありえない…。大きなモグラの魔物なんてこの辺りじゃ聞いたこともないし、そもそも魔物が作った洞窟に扉なんてあるはず無いし・・・」


 ルークが扉にさわろうとした時、扉の向こうから声が聞こえた。触れてもない扉が開いていく。







「・・・・お、おい、ちょっとまて・・。ここに繋がれる人間なんかいるはずが・・・・。」





 これはかつて高度魔法文明期において研究と修行に明け暮れた挙句に世の中を悲観して世捨人となった最強の魔法使いと、その魔法使いの心を救った優しい少年の物語である。



思いつくまま書いています。一日一話くらいのペースでいきたいです!

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