↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地底800マイル  作者: 悟飯 粒
赤き血潮の大悪党
70/70

始まりの終わり

ガシャン………ガシャン…………


壊れることのない希望の塔を破壊し尽くし、炎帝は青ローブの元へと歩いていく。


「おお、炎帝様!ようこそこの下劣な地に来てくださいました!感謝申し上げます!」


青ローブは隠しきれない興奮のまま炎帝に跪き、こうべを垂れる。歓喜と狂気が入り混じった表情。狂った忠誠心がよく見える。その男の頭に、炎帝は手を差し伸べ………


ボッ!!!

青ローブを焼いた。


「なっ…………」


青ローブの男は、終始狂気的なまでの笑顔のまま燃え尽きた。残ったのは一片の青色の生地と、燃え残った骨の灰だけ。


「…………………」


炎帝は周りを見渡す。一体その目は何を見て何を思っている?狂気か?喜びか?破壊か?怒りか?……兜のせいでなにも分からない。


「…………このままだったら、全員殺されるぞ。」


ズクが、何もない表情のまま呟いた。

私達は炎帝を囲むように立っている。包囲した状態で戦えばワンチャン…………


ズゴォオオオオオオオンンンン!!!!


炎帝を中心に火柱が噴き上がった。どこまでもどこまでも伸び上がり、空を焼き尽くすようにその災禍を広げていく。


ガシャン…………


そして一歩、踏み出した。私達の包囲に近づいた。


ガシャン…………


そしてまた一歩


ガシャン…………


そしてまた……………


「………あああああああ!!!!」


炎帝の威圧に耐えきれなくなった1人の勇者が、炎帝に向かって飛び出した。そして思いっきり剣を振り下ろす!!


ピュッ


振り下ろされた剣は、炎帝に当たる前に消えていた。刃が折れたように、スッパリと溶けていたのだ。

それを見ながら炎帝はゆっくりと、剣が溶かされたことに驚き、硬直していた男の肩に手を乗っける。

ゴオウッ!!!

すると男の体は火達磨となり、呻き声を上げながら地面を転がった。


「「「「…………う、うわぁぁあああ!!!!」」」」


それを見た勇者達は炎帝に向かって走り出した。待っていたら殺される。それならば、一斉に攻撃すれば良いのだと考えたのだろう。魔力を最大出力で発動しながら、剣を握りしめる。


ブンッ………


しかし、炎帝が手を振ると、大火が壁のように燃え広がり、勇者達の魔力を燃やし尽くした。本当に一瞬の出来事。跡形もなく、燃えたというよりかは消えたと表現した方がいいそれは、勇者達の目を通り、脳を刺激する。圧倒的恐怖が、更に彼らの足を進ませる。もはやブレーキはない。震える膝が勝手に前へ前へと進んでいくのだ。

そして勇者達はその剣を振り下ろし…………


カラン…………


身体ごとこの世から姿を消した。


残ったのは、私達3人と、足がすくんで動けなかった者だけ。


今のを見てよく分かった。このまま何もしなければ炎帝に皆殺しにされる。しかし、何かをしても殺される。


「…………俺達であいつを倒すしかねぇ。」


ズクが強く、一歩を踏み出した。


「………みたいだね。」

「………………」


私とカイも続いて一歩を踏みしめ、炎帝にその目を向ける。


「………行くぞ。」


ズクが飛び出すのと同時に、私は雷を最大出力で放出した!!


ピシャァァアアンンンッ!!!

雷は空気を切り裂きながら、炎帝にその牙を向ける!!

ボシュッ

しかし、炎帝の炎が、雷を虚しく喰らい尽くした。


「ふっ!!」


しかし、いつのまにか背後に回り込んでいたズクが、がら空きの首にめがけてその手刀を振り下ろ


ゴォォオオオウウウッッ!!!


炎が身体から噴き出し身体に直撃すると、ズクは思いっきり後方に吹き飛ばされた!!


ボシュゥウウッ!!!

その隙をついて放たれたカイの津波も、炎帝の炎とぶつかった瞬間に水蒸気となり消えてしまった。


「大丈夫!?ズクっ!?」

「ああ………俺は死なねぇよ。」


炎によって欠損した顔を持ち上げ、ズクは立ち上がった。傷ついた体はみるみるうちに回復していき、元の身体に戻った。


「…………これは、イリナとズクさんの素早さで撹乱し、攻撃を叩き込まないといけないみたいですね。」


カイがやっと重い口を開いてくれた。


「………オーケー。」

「やるしかねぇよな。」


カイの作戦を聞き、態勢を整え、私達は勢いよく飛び出した。

高速で襲いかかってくる炎をかわし続け、ひたすらに炎帝の近くへと進んでいく!たまにギリギリでかする炎………それに1発でも当たれば死んでしまうほどの威力で、私の心を緊張感で支配する。しかし逆に、その緊張感が私の集中力を跳ね上がり、全ての炎がスローに見えるほどになっていた。

当たらない、当たらない!こんなのじゃ、何も当たらない!


ボシュゥウウウウッッ!!!!

そしてナイスタイミング!!カイが水を放出し、炎帝がそれを炎でガードしたせいで、水蒸気が煙幕となり私の姿を隠した!!これならがら空きの後頭部に私の蹴りを………


サンッ!!!!


水蒸気を何かが切断した!


サンサンサンサンッッ!!!!


何度も何度も切断され、水蒸気は切り払われる!

大剣だ……炎で作られた、私3人分ぐらいある大剣が空中を漂い、滅多やたらに振り回されているのだ。


ズパンッ!!!


ズクの身体が横に両断された。


ズラァアアッッ!!

そして炎帝の背後から大量の大剣が姿を現し………

ザンザンザンザンザン!!!!

私達めがけて飛んでくる!!かわすと大剣は深々と地面に突き刺さり………


ドゴォォオオオオンンンン!!!!

巨大な爆発となって地面を消しとばした!空気が震え、遠くの木々をその振動がへし折ってしまう!!


なんて威力だ………私達の本気の出力を、いとも簡単に超えてくる!!化け物か炎帝は!!


「ヤベェ………化け物かあいつは。」


身体の大半を消しとばされたズクは私の元まで吹っ飛ばされてきた。顔半分だけだったズクは、しかし高速で再生してすぐに元の身体へと戻る。


「ど、どうする?このままじゃ…………」

「………諦めるわけがないだろ。」


ズクは立ち上がり、拳を固く、固く、握った。


「俺は死ねねぇ。死にたくねぇ。絶対に死にたくねぇ。何が何でも死にたくねぇ。…………全力で雷をぶっ放せ。」


ズクが私に言ってきた。表情はないが、覚悟を醸し出し、決死の言葉で。


「…………次で決めるってこと?」

「ああ、全力で殺す。」


そういうと、ズクは前傾姿勢となり、思いっきり地面を蹴飛ばした。


ボッボッボッボッ!!!!

ドゴンドゴォオンン!!!!


炎帝から放たれる火炎弾は、ズクに向かって高速で飛来するが、ズクはそれらをギリギリでかわしきり、炎帝に近づいていく。


ズァッ!!!

そして炎帝が炎でできた大剣を作り出した瞬間!!


ボシュッ………

大剣は消滅した!!


「俺の魔力は進化している!!てめぇの魔力もぶっ殺せるんだよ!!」


体を破壊するだけだった魔力が、とうとう魔力すらも殺せるようになったのか!!たしかに、あのまま戦っていたら私達は間違いなく…………今は味方になってくれて心強い!!!


「いけぇぇえええ!!!!」


身体中の力を振り絞り、私は魔力を全力で解放した!!


ピシャァァアアンンンン!!!!


「グォォオォオオオオオオオ!!!!!」


5匹の龍が雷を迸らせながら、炎帝に向かってその牙を向ける!!


ズゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!!!


しかもカイも魔力を放出したようだ。巨大な氷の塊が地面をえぐりながら炎帝に向かって行く!!

ズクに至っては魔力を解放し、その感染したもの全てを殺す魔力を至近距離から見舞っている!!

これならっ!!!!


ゴォォオオウウウゥゥウウウッッ!!!!


青色の炎が吹き荒れた。

ズクを飲み込み、雷の龍を焼き尽くし、氷塊をあっという間に消しとばした。大海に突如現れる渦潮みたいに、大地の全てを巻き込み、焼き滅ぼし、包み込んで藻屑に変えてしまう。


「あっ………」


終わった…………


青色の輝きが、ドンドン近づいてくる。全てを飲み込み、チリへと変える無慈悲な光が。

私が消えても、光剣は残るのだろうか………

そんなことを考えながら、私は光に飲み込まれ………


ドンッ


押し倒された。私はあっけなく尻餅をついた。なにが……どうなって………


「……………」


カイだ。

私の目の前にカイがいる。氷と水で分厚い壁を作り出し、無言で青色の炎に向かっていた。


「………挫けないでください。」


待って………何その遺言みたいなやつ。認めない、認めないから………待って、なんで、なんで私の前に………なんで…………待って、待って、待って!


私が手を伸ばしたのと、炎が私達を包み込んだのは同時だった。



「…………………」


炎が晴れると、目の前に炎帝がいた。赤く、巨大な鎧に包まれたその顔は一体何を考えているのだろうか。


「…………………」

「…………………」


カラン………


青色の鎧が音を立てて地面に落ちた。

崩れ落ちた希望の塔。怨嗟に満ちた死体の山。風に飛ばされる灰。一瞬で荒野へと変貌したこの世界に生き残っているのは、きっと私達2人だけだろう。

私はただ座って、呆然と今を眺めていた。いや、何も見ていない。ただ、生きているだけだ。

どうせ死ぬ、すぐに死ぬ。炎帝が手を振り払った瞬間に………すぐにそっちに行くからね、カイ。


炎帝が右手を持ち上げた。そして………手を振るうと、世界が真っ赤に燃え上がった。


「ギャギャギャギャッッ!!!!」


魔物だ、私の背後にいた魔物が、断末魔をあげて燃えている。

ドッドッドッドッドッ!!!!

そして、大量の魔物の群れがこっちに突っ込んで来るではないか。


「…………………」


炎帝は私を一瞥した後、私の元から去っていく。


「待て………待て………待って……………」


なんで?なんで殺さない?どうして?早くカイの元へ連れてってよ。なんで?待って、待って、待って!


ドッドッドッドッドッ!!!!


遠ざかっていく炎帝、近づいてくる魔物の群れ。


「……………待ってよ………」


ザッ…………


私の背後に、誰かが来た。

誰だろう…………もう何もかもがどうでも良い………


「死んだら何もかも終わりだぜ。」


ズクだった。

その中性的な声で語りかけてきた。


「カイに挫けるなって言われたんだろ?じゃあ生きれば良いじゃん。」


そして、それだけ言うと、ズクは離れていく。


「………うっ、うううっ………」


なんだよ、知った風な口聞きやがって。生きなきゃいけないだって?カイもいないのに?そんな世界、なんの意味もないじゃない。


ドッドッドッドッドッ!!!!

迫り来る足音。もう既に、私の近くに来ている。魔物は得物を私に振り下ろし………


「…………うわぁぁああああんんん!!!!」


グチャッ。

私は泣きながら、魔物を握りつぶした。


「あぁぁああああああ!!!!」


声にも似つかない叫び声を上げながら、ひたすらに殴り殺した。怒り、悲しみ、全てをぶつけ、それでも余る悲しみを噛みしめるように、ひたすらに殴り続けた。



今回の作戦で失われた戦力は、聖騎士長以下約600名、第一類勇者約20名、第二類勇者………一名。

青ローブと[崩界]の魔力を持った男、そして突如乱入した魔王と魔族の大群。それらの脅威に立ち向かい、ただ1人生き残ったイリナ=ヘリエルには、勇者領で最も価値のある賞が授与された。

しかしその3日後、イリナは姿を消した。次に姿を現したのは………その、一年後。


「あーー塾行かなきゃ………面倒クセェまじで。」


1人の男を引っさげて………

これにて地底800マイル終わり!!

この続きはもう連載している[Face of the Surface〜Seven Kings〜なので、興味があったら見てください。しかし、オススメは……しない。

↓次の作品の小説コード

https://ncode.syosetu.com/n2328fq/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。