逃げまくれ
「ちょ、クソジイイ!!あんたなんでこんなところに………」
増援をこっちに寄越さないのは勇者領内のこいつを守るためなんでしょ!?それなのにこんなところに王様がいるっていうのは………おかしすぎるでしょ!!
「ん?いやーーちょっと暇だったから来ちゃった。」
「暇だったからってあんた自分の立場ぐらいちゃんと理解してよ!!」
「だってーーイリナちゃんがピンチだって言うじゃん?そりゃあ駆けつけないわけにはいかないじゃん。」
なん……この、変態性欲色ボケジジイ!!だから誰にも慕われないんだよ!!
「つーか」
タン………
ジジイが一瞬で[マシュマロの天丼]の前に移動した。
ベキッッ
そして頭を右手で掴み、首を簡単にへし折った。
「怪我しなきゃいいだけじゃん。」
……まったく………
ブチャッ!!!
私は[健康のぬれなす]とやらの胸を貫き、心臓を握りつぶした。
「まぁジジイがいればこれ以上心強いことはないけどね。」
「お、惚れちゃう?」
「ほざいてろ。」
ジジイがいれば残党もすぐに倒せるだろう。なんだかんだで勇者最強だもんなぁこいつ。
「待たぬか!!」
ヘカトンの元へ行こうとした時、さっき殺した魔物の声が聞こえた。
振り返ると体を怒張させ骨格と筋肉が蠢いているぬれなすと、五体十体百体と何体にも増えたマシュマロが立っていた。
「我が名は曇天のマシュハラ!!空に浮く厚塗りの雲のように無限に、実体を持つことなく広がり続ける!!」
「我が名は激昂のクレヌス!!怒り、我が身を高ぶらせることで無限に等しい力と再生能力を引き出す!!貴様ら程度では我らに勝てはせん!!」
「えーーなにこいつら。不死身?」
………鮮血のパルメザンといいこいつら不死身で腹立つなぁ。グラディウスは不死身集団か何か?
「クソジジイ、こいつら50回ぐらい殺せば死ぬから。」
「あ、そうなの?そりゃあ楽でいいわ。」
私は背中の剣を引き抜き、
ピュッスパパパン
マシュマロ達の首を刎ねた!
するとその体と首はスーッと空へと消えていってしま……
スパン!!
消える前に出現したもう一体を今度は真っ二つに切り裂いた。
相手の魔力は影分身みたいなもので、雲みたいに掴むことはできず無限に漂い続ける。でもそんなの、一際強い風の前ではなす術なく散り散りに吹き消されるのさ。
私は泡影のマシュマロを切り捨て、また現れては切り捨てを永遠と繰り返した。弱いなこいつ………パルメザンの方が強かったな。
ズバシュパッ
ジジイの方も敵を二本の剣で切り続けていた。切り続けていたっていうか、刺し続けていた?身体に剣を一本差し込み、剣を生成してまた剣を体に差し込み………と、敵の身体中剣まみれになっていた。
メキメキメキッッ
その攻撃によって敵の体はドンドン怒張し、何回か攻撃を試みるがジジイには一切当たらない。どんなに攻撃力があっても当たらなくちゃ意味ないよね。
「クソォオオオオ!!!」
ガバッ!!
マシュマロが10体に増え、私を包囲し一斉に飛びかかって来た!
「ふん!!!」
ピシャァァアアア!!!
体から全方位へと放たれた弾ける雷が分身を全て霧散させた。
「そろそろ終わりかな?」
ポン
剣が小槌に変化し、それが巨大化した。
目の前の敵は10人ほど。私を倒そうと走って突っ込んでくる。
グッ
私は思いっきり左足で踏ん張った!
グイン!
そして右手で引っ張るように小槌を振り、
ブワン!!
腰を捻り遠くへ吹っ飛ばすように振り抜いた!!
巨大な面に打たれた敵10体は凄い速度で吹っ飛び、山を越えて見えなくなってしまった。
王様の方も敵を倒し終わったようだ。ぬれなすとやらが身体中に剣がブッ刺さった状態でピクピクと痙攣しながら地面に倒れている。真っ赤な池に浮かぶ針山………地獄みたいだ。
「それじゃあヘカトンを捕まえにいくか。」
「そうだね。」
ザッ
頂上へと向かおうとした時、私達の周りを魔物が取り囲んだ。グラディウスみたいな指揮官も数体いる。
……………チッ
「邪魔だな本当。」「それな。」
ダッ
私達は敵に斬りかかった。
「右後方から来る魔力は左へと受け流してください!!前方から来るのは上へ!!」
ギュイン!!グワン!!
僕達ら隊列に指示を与え、敵の攻撃をいなし頂上に向かって進み続けていた。進み続けていたというか逃げ続けていた?
「カイさん!!あの不死身が追ってきますよ!!」
後ろから他の魔物とは明らかに雰囲気が違う奴らが追っかけて来る!!これはきっとイリナさんが言っていたグラディウスとやらだ!!全員不死身なのか!!
僕は後方に移動し彼らの迎撃に努める!!
イリナさんがいれば幾分か楽なのに、僕1人でやらなくちゃいけないなんて!!恨んでやる!!勝手に1人で飛び出しやがってぇ!!
ズガァアアンン!!!
後方全部を吹っ飛ばすように、高さ10メートルの巨大な氷の塊を打ち出す!!
ガガガガガガ!!!!
それによって岩肌はえぐれ、魔物達はその圧力と刃物のような表面でバラバラになった。
グチャグチャグチャ…………
しかし、グラディウスと思しき奴らは肉片を蠢かせ、くっつき、元の形へと戻っていく。むしろ強化されているかのように体が大きくなっている。
「………あ、ダメだこれ。皆さん全力で逃げますよ!!!」
「待たぬか貴様ぁああ!!!」
僕達がトンズラを決めた途端、グラディウス達は豹変し、物凄い速度でこっちに走ってきた!!
「逃げずに戦え!!!誇りはないのか!!!」
「こちとら生き残るので精一杯ですよ!!!」
パン!!!
僕が撃ちだした氷の塊が破裂した。
ザクザクザク!!!
「ぬぅうう!!!」
そして細かな破片が魔物達の体に突き刺さり、全身が氷まみれになった。
「誇りは二の次!!いの一番に生き残れってね!!!」
彼らが復活するまでに何秒稼げるか分からないけれど、とにかく、ヘカトンを捕まえさえすれば僕らの勝利だ。無駄な戦いはしない主義なのさ、弱いから。だからとにかく走る!!
バッ!!
上空から敵が降って来る!!
なっ、なんだこいつ!!
パキキ!!ビュッ!!
氷の剣を作り出し、敵の頭を斬り飛ばした!!切り口から血が吹き出て、上空が真っ赤だ。
ニョッ
しかし、なんか、切ったところからまた頭が生えてきた!!
えええええ!?なんて再生能力してんだこの人!!こいつもグラディウスか!!
パリーーン!!!
敵の攻撃を剣で防ぐと、剣が割れてしまいそのまま僕は殴られ、吹っ飛ばされた!!
いったぁあ!!イリナさん来て!!こんなのと戦うのめんど……戦えないですよ!!
パキーーーン!!!
巨大な氷の壁を作り出し、僕は仲間の方へと走る!!!
ガンガンガン!!!
氷の壁は攻撃を何回も受けヒビが入り始めていた。
「ど、どうします!?戦いますか!?」
「いや、あんなのと戦うのは時間の無駄です!!とにかく走ってヘカトンの所を目指すんです!!」
僕達はイリナさんみたいに無双できるわけじゃないから、とにかく勝利条件を満たすことだけを念頭に置かなくちゃいけない。出来ることをしっかりと見定め、突き進まなくてはいけないのだ!
「生き残りてかつ任務達成しますよ!!」
そしてその報奨金で世界の建築物プラモデル100選を買ってやる!!
僕達はひたすらに登り続けた。
逃げまくれとうったら投げまくらと変換されました。そんな言葉使ったことないんですけどね…………




