とうとうやっちまった……
「あーー年は取りたくないですねー!300キロメートルぐらいでこんなに疲れるなんて!」
3時間かけて私達は目的の場所の……えーっと、メルボルンじゃなくてベロンベロン?………カルンコルンだ!それだよそれ!
私はかなり遅く走っていたから疲れてはいないけれど、姫子さんはグッタリしていた。都市の門柱によりかかり深呼吸している。
よく考えると時速100キロメートルだもんね。秒速28メートルぐらい?はえーー具体的な数字にすると結構なことだよね。
カイはまだ来ていなかった。手続きと調査報告に時間がかかっているのか………まぁ、勇者の内部の事案だからね。デリケートで面倒臭いのだろう。
そんなことよりこのカルンコルンという都市には1ヶ月前に来たことがあるからある程度の情報はあるよ。開けた高山平野に作られた都市で農作業に向かず、鉄鋼やらの工業用品を大量に製造して収益を得ている。そう、工業都市というやつさ!少しバカなイメージが先行して来ている今日この頃だけれど、私だって頭は良いのさ!工業都市とか普通使わないでしょそんな言葉!
低木林と背の低い高山野草と同じように、山肌にピッタリと位置するここは工業用品だけではなく、この都市から見える景色でも有名さ。日の出の時の景色とか凄いらしい。鮭のようにオレンジ色に染まりきった大きな陽が目の前に出てきて雲を照らす。山肌をゆっくりと侵食していく明るい光は見るものの心を動かすとかなんとか…………見てみたいものだね。
「汗かいてベタベタだから、宿をとってシャワー浴びよう。」
ここは火山地帯で温泉が豊富に取れるだろうから、格安料金で温泉に入れるはず!いーよねー温泉!効能とかは肌のやつ以外は信じられないけれど、やっぱり疲れが取れるのは確かだもん!
カコーーン
てなわけでね、宿をとって温泉に浸かっちゃうのさ。岩盤で作られた浴槽に、熱々のお湯が流れ込んで、コポコポって良い音が響いている。
「イリナさん……よくこんな熱いお湯で平気な顔してられますね。私、早くものぼせてきたんですけど。」
そして、姫子さんも一緒にお湯に浸かっている。そりゃあね、一緒さ。別々で入るほど仲は悪くないよ。
「私の魔力のせいだね。耐電性能が上がってるから熱には強いんだ。電気ってなんだかんだいって熱だから。」
私は浴槽から見える景色に目を向けた。ここは山の中腹に作られた為に都市や自然が一望できる。緑色と黄色の針葉と、ちょこっとピンクの広葉が鬱蒼と重なるように生い茂っている森林を覆うように屹立する山々……荘厳な景色というやつだ。ここに滝とかがあったら最高なんだけれど、この山の反対側にあるから見れないんだよね。
「いやーー羨ましい魔力ですね。私なんかのよりも数百倍使いやすくて………」
絶景から目を離し姫子さんの方を見ると、熱々のお風呂に姫子さんの胸がプカプカと浮かんでいた。
………風船?
「………私は羨ましいよ、そっちの方が数百倍も。」
「………ああ……」
姫子さんは私の視線に気づいて、手でお湯に沈めた。
「[ああ………]ってなにさ!今私のことを絶対哀れんだよね![女として最低だろ]とか思ったでしょ!」
「いや、さすがにそこまでは………」
「うわーーん!!貧乳に人権はないのか!!……いいもんねー!!あと3年もしたらボンキュッボンのダイナマイトバァディー!になってやるんだからね!今に見てなよ!!」
「いや、イリナさんがそうなっても似合わないと思うんですけど………」
似合わないだってぇ!?私には巨乳になる資格がないとでも言うのか!!女に生まれたのなら誰にだってその権利はあるんじゃないの!?ないの!?そんなところに超えられない壁があるの!?………私の胸は、絶壁を超えることはできないでも言うの!?
………癪なことに今のは上手かったね。本当に癪だけれど持ちネタにしよう。
「はぁ………人間格差を感じたよ。まっ、いいや。そろそろ上がろうかな。多分カイがここに到着しているだろうし………」
もう出発から3時間40分が経っていた。さすがに事務は全て処理したでしょ。
これから聖騎士長のプラドを力づくで捕まえなくちゃいけないから、轍が捕まった情報が広がる前に行動をすると比較的やりやすくなる。それをカイも知っているだろうから、もうそろそろ終わらせてくるはずなのさ。
………子供が2人もいるから、メンドくさい戦いになるだろうから、みんなで全力で戦わなくては……ん?
「てか姫子さんの魔力ってなんなの?私まだ把握できてないんだけど。」
「えぇ………分からない状態でよく私を信用できてましたね。」
「そりゃあねぇ、どんな魔力だろうと私なら簡単に対処できちゃうからね、気にする必要がないのさ。強者ゆえの怠慢?」
と言ってるけれど、本当はカイの話をほとんど聞いてなかっただけなんだよね。長々と、そしてどうでもいいところで難しい言葉を使ってくるから頭に入ってこないのさ。もっと簡単な言葉を使えって言いたいね私は。
「改めて思いますが凄い人ですね………そうですね、良い機会なので階級と合わせて教えますね。私の階級は聖騎士長です。そして魔力は[譲渡]。自分よりも弱い人間に力を与えるものです。まぁ、力を渡したら私はすごく弱くなるんですけどね。」
「へぇー………強いのか弱いのか分からないね。それなのに遠征のメンバーによく選ばれたね。」
遠征とは、勇者領に隣接する魔族領に殴り込みをかけて領土を広げることをさす。
魔族は強い。知性があるから魔物なんかよりもよっぽど手強くて、徒党を組んで戦略性を持ち、魔力も大規模なものばかりでメンドくさい。だから遠征のメンバーに基本選ばれるのは戦闘に長けたものだ。言っちゃえば魔力が戦闘に適したものばかりさ。でもね、姫子さんの魔力が戦闘に適しているとは思えない。だから遠征には適してないよね。
まぁ、その選択基準で行けば私とカイは筆頭候補なわけだ。もし私達が遠征メンバーに選ばれたら、そりゃあもう鬼神のごときペースで領地広げちゃうよ?魔族領とかアリでも住めないぐらいにちっちゃくしちゃうよ?でもね、私達は勇者領全域の平和維持、それに今は内部の青ローブの対処が任務だ。遠征よりも大切なことを任されているのさ。だから遠征メンバーに選ばれることはない。
てかね、話変わるけれど今結構やばいらしい。姫子さんが暴れてくれたおかげで魔族が進行してくる東側の防衛が薄くなって結構押されてるんだって。だから王様がわざわざ軍を連れて押し戻しているらしい。
もし青ローブが魔族の刺客で、勇者陣営を混乱させて戦力を大幅に削るのが狙いならば目的達成だ。まぁ、今も子供達を作り続けているからそれが目的なのかは分からないけれどね。
とまぁ内外で勇者領は危機を迎えていて、私達が遠征になんて行くことはあり得ないのさ。私達は内部を維持しなきゃいけないのだ。
「私は後方支援がメインでしたよ。強い魔力を持っている人に力を与えた後に食料の補充とか負傷者の手当て………そういえば身元の確認とかもよくやってました。死体が多すぎてこれだけは慣れませんでした…………」
…………ふーん、大変だね遠征は。
「………それじゃあお互い、裸のおつきあいで親睦を深められたことだから今度こそ上がろう。さすがにのぼせそうだよ。」
「………頑張りましょう、お互い。」
姫子さんが右手を差し出した。
「………助けてやろうじゃない、子供も都市の人々も。」
がっ!
私は姫子さんの右手を勢いよく握りしめた。
………胸が欲しい。
対面して、改めてそう思った。
もっと大胆に書こうとしたのですが、私の技量のなさじゃ18禁になるので抑えました。PG12程度のエロをエロくかける作家は相当な執筆能力を持っているなって思いました。




