変わらぬ正義 その3
久しぶりの真面目な戦闘シーン。書いてて楽しいものです。
ズバシャアア!!
黄色く発光する鎌が、魔物達の胴体を真っ二つにする!!
戦い始めてから30分ほど、数えきれないほどの数の魔物を殺した。
「ヴォオオアアア!!!!」
「グォオオアアア!!!!」
「プシュルルルル!!!!」
「ガァァァァアアアア!!!!!」
そして私はあえて雷を上空に向けて放ち目立つことで魔物を引き寄せていた。勇者領を取り巻いていた全ての魔物達が私に向かって押し寄せて来る。
肉が肉を押しつぶし進む波のように、巨大な地鳴りを起こしながら破壊の限りを尽くし走ってくる!
右から豚5体、左からでかいカッパみたいな奴12体、背後から………だーー!!知るかそんなこと!!
ブシャ!!ズシャア!!ザクン!!!
四方八方全てから来る攻撃を反射だけで全てかわし、体をぶった切る!
鎌が通った軌道を真っ赤な血が彩り、軌道を大きくそれた血が私の濡れきった顔にピチャンと音をたてて付着する。
一瞬一瞬での判断を常に強いられる。常に緊張状態。頭をフル稼働だ。
ギュィィイイインン…………
魔物の群れの後ろから何かをためるような音がしたから私は振り向くと、魔物20体が魔力を彼らの前方でため直径10メートルぐらいの巨大なエネルギー弾を作っていた。
ドシュン!!!
それは前にいた魔物達を巻き込み燃やし尽くしながら、私に向けて放たれた!!!
ドシュンドシュンドシュン!!
魔物が断末魔をあげながら焼き尽くされる。
かわそうと思えばかわせる!だけど周りは刃だらけ、そんな中に高速で突っ込むのは危険!!かといってあれを食らうのは…………いや、知るか!!!
ザン!!
私はその巨大なエネルギー弾を斬りつける!!
すると、断面から内包されていたエネルギーがプクりと膨らんだ。
プクプクプクプクプク!!!
そしてその泡のような小さな粒は増殖していく!
ドォオオオンン!!!!
私の周り全てを巻き込む巨大な爆発が起こった。
地面がクレーターのように抉り取られるほどの一撃。魔物達は皮膚を一気に燃やされ、筋肉をゆっくりと燃やされ、骨を焦がされた。
ボッ!!!
でも私には関係ない!!
私は爆発の中から抜け出し、エネルギー弾を放った魔物に走り寄る!!熱エネルギーが、爆炎が、私を逃さないとでも言うように、私にまとわりついて来る。でも、それすらも私は振り切る!!
歯を食いしばって、地に足つけて踏ん張れば、こんなもの屁でもない!!!
ズバァーー!!!
私は魔物達を鎌で一線に斬りつけた!!
グオッッ!!
私が鎌を払った隙をつくためか、魔物達が一斉に私に飛びかかってくる!!
確かに体制が崩れていて、後ろからの攻撃は食らってしまうかもしれない!
バチッッ!!ザクザクザクザクザク!!!
私が電気を帯びると、あちこちに転がっていた私の剣が反応し、私に向かって飛んでくる!それに魔物は突き刺されていく!
ポイ
私は魔物を突き刺しながらくる剣達を前に、鎌を上空に投げた。
そして、
パシパシパシパシ!!!
高速で飛んでくる剣達の柄をかわしながら掴む!
全部で13本!結構多いね!!
ピュンピュンピュンピュン!!!
トストストストストス!!!
遠く、1キロほど離れた地面へと放り投げていく!!
「さてと、確かこの世界の地面って魔力に反応して同じ性質を持つんだよね?」
バチバチバチバチバチ!!!
私の体が黄色に光りだす。
私がコレクションしている剣は、カイに頼んでもらって電気を導くような性質をつけてもらっている。
そう、私の電気を導くのだ。それが私から半径2キロメートルに円を描くように地面に乱立している。つまり、この範囲の地面は全て電気を通すということだ。
バチバチバチバチ!!!!
そして私の体はいつも以上に光ります。
私の魔力は時間をかけて充電すればするほど力をつけるものだ。もう既に許容限界状態にまでたまっている。
「吹っ飛べ!!!」
カッッッッッ!!!!ゴロゴロゴロゴロゴロ!!!
私の体から勢いよく放たれた電撃は、私の周囲にキロメートルをドーム状に覆い尽くし、生きるもの、死んでいるもの、元から死んでいるもの、全てを打ち果たし、燃やし尽くした。
ヒュンヒュンヒュン…………パシ。
私は落ちてきた鎌を右手でキャッチした。
バチッ
少し帯電していたのか、電気が発生した。
いまので結構な数を削れたな………30分の積み重ねもあったから、残り1500体といったところかな?これなら余裕そう。本当にここから離れて余計な魔物でも退治しようかな。
「!?!?」
ビュッ
私は視界に入ったものを反射的にかわした。しかし、かわしきれず頰を少し切ってしまった。薄っすらと血が滲む。
岩が刃のように地面から突出してきた!
魔力!?しかもこの速さ、相当のレベル……ちっ!!!
ダンダンダンダンダンダン!!!!
ゴォオオオオオァァアアア!!!!
続けて竜巻と爆発、木の蔓のような鞭が襲ってきて、私はすぐさまその場から逃げた!
「………真打ち登場って顔してるね。」
8人の子供達が私の前に立ち塞がった。
そして、その後ろには
「……………」
沈黙し、佇む青ローブ。
こいつがこの事件の主犯格かどうかはまだ確信が持てない。グラスの時のように子供に青ローブを着せている可能性があるからだ。………それでも、
「ムショ送りにしてやるんだから覚悟してなよ。」
私は不敵に笑った。
北方200キロメートルの平地で、大規模な戦闘が行われていた。といっても人数は9対3万5000。二軍団が乱れる混戦というよりかは[大群に立ち向かう喧嘩上等の頭がおかしい奴ら。]といった構図ではあるが………
んーー………やっぱり押せてしまうんですね、この人数相手でも。
カイは敵と戦いながら、そんなことを考えていた。
いくら勇者最高戦力とは言え、3万5000の大群には苦戦するだろうと勝手に想像し身構えていたのだが、いざ戦ってみると拍子抜けするほど苦戦を強いられていなかった。むしろ押しているぐらいだった。他の勇者6人がイリナさん並みの勢いで敵を倒していくからだ。剣の振る速さ、身のこなし、全てが最高レベル。
戦闘のプロフェッショナルだからって流石にこれは………先頭苦手な僕涙目じゃないか。
僕はヒョイヒョイと敵の攻撃をかわし、敵を斬りつける。こんなことをしている間にも他の人は3人ぐらいは簡単に倒せてしまっている。
これ僕いらないなぁ…………途中でこっそり抜け出して、住民の救助をしよう。そっちの方が被害が出ずに済みそうだ。戦闘って僕苦手だからね、仕方がない。
僕はこの近くにある村を探すために、視線を巡らせた。すると、すぐにイリナさんの看板が目に入った。
本当、無駄にでかくて邪魔だけど、こういう時だけは役に立つから批判できないんだよなぁ。良くも悪くも目立つというか………ん?
「……………あ。」
僕は薄暗くなりつつある闇夜に飲まれる看板を見て、疑問であった1つが解消された。
「あーー!!もう!!邪魔くさい!!」
私は子供達の攻撃をかわしながら、怒声を飛ばしていた。
私は青ローブさえ倒せればいいんだ。だから、あいつに向かったら子供達が攻撃してきて邪魔してくる!
君達本当邪魔!!どうでもいいんだよ君達は!!青ローブさえ倒せればそれでいいの!!
けれど私の想いは届かない。子供達は容赦なく私を攻撃してくる。
不本意だけど、子供達を先に行動不能にしよう。そうじゃないと青ローブを叩けない。
でも流石に8人の最高幹部を同時に相手するのは辛いよなぁ…………
………仕方ない、削るか。
グン!!
そこら中に突き刺されていた剣が、私に引き寄せられる!!
でもさすがは子供達だ。私の攻撃をなんとかギリギリでかわす。
トスッ
そして、私はその隙をついて、剣を引き延ばし1人の太ももに突き刺す。
私の剣は伸び縮み可能だ。結構多彩なんだよね。
はい、1人目終わりー。次どんどん行っちゃ……
ゴォオオオオオ!!!
巨大な竜巻が発生し、私はそれを全速力でかわす!
ちっ………遠距離は厳しいね、近づくしかないか!!
ダッ!!
私は弾丸のように飛び出し、炎を操っていた子供の方に突っ込む!!
「ぐぉおおおお!!!!」
すると、数十体の魔物が立ち塞がってくる。
あーーこいつらもいたか!!めんどくさーー!!!
「お呼びじゃないんだけど!!」
「グオッ………」
魔物達を一瞬で断ち切る!けれど、
ドンドン!!
すぐさま魔法の大規模攻撃が起こり、私はまた距離を取らなくてはいけなくなった。
どんどん距離を離される………やっぱり私達勇者の旨味は近接戦闘。近づければ勝機はあるんだけれど、大量の魔物に大規模魔法…………これが辛い。こいつらをなんとかしないと…………
「…………うん!!考えても何も思いつかないね!!アッハッハッハッ!!!」
私は大きな声で笑った。
「グォオオオアアア!!ッッッガッッッ!!」
バチン!!
走り寄ってきた魔物を、私は笑いながらビンタして吹き飛ばした。
「………本当さ、」
ビシッ
私の足元の地面にヒビが入る。
「青ローブ許さないからね。」
ッパンパンパンパン!!!
私の踏み込み、蹴り込みに合わせて地面が吹き飛ぶ!!
………気に入らない、
ゴォオオオオオ!!!
巨大な竜巻を私は横にかわし、再度敵に向かって走り出した!
グシャアアア!!!
私の前に立ち塞がってきた魔物には私の全速度を乗っけたタックルを食らわし、体を粉々に吹き飛ばす!
魔物の臓器が体に付着して気持ち悪い。だが、そんなこと、今は構ってられない。
ガンガンガンガン!!!
今度は巨大な氷の柱が上空から幾本も降り注ぐ!
パリンパリンパリン!!!
だが、そんなもの私には関係ない。全て、ぶん殴ることでぶち壊した。
ピッ
その時に氷のカケラが私の体を切りつけるが、それすらも関係ない。
気に入らない………気に入らないんだ。こんな力を勇者領の中に避難していた住民に向けられていたかもしれないと思うと、本当に気に入らない。それにそもそも魔物を使って攻撃させているのも気に入らない。子供を利用しているところも気に入らない。………無関係な住民を殺すのは、もっと気に入らない!!!
ビキッ………パン!!!!
地面が盛大に吹き飛ぶ!!
あと少しで青ローブに手が届く!!20メートルかそこらで!!届けばぶん殴って………
ゴォオオオオオ!!!ビュァァアアア!!!パキンパキンパキンパキン!!!ゴロゴロゴロゴロ!!!
風と氷と火と雷が同時に発生し、私の体を吹き飛ばした。氷のカケラが私を切り刻む。血が体の至る所から流れ出す。風によって火力が増した炎が、私の体を燃やす。
ボンンンン!!!!
そして、竜巻内部から巨大な爆発が起こり、私を100メートルほど吹き飛ばした。
ドサッ
私は地面に墜落した。
ああ、やば。さすがに体が動かない。最高幹部の魔力だもんなぁ………こうなるのは仕方ないことか。
ググっ……バタン。
なんとかして立ち上がろうとするも、手に力が入らない。肘で力が抜け、顔すらも地面から持ち上がることなく、腕だけが虚しく地面に叩きつけられる。少し左手に違和感がしたから見てみると、薬指が第2関節から千切れていた。多分氷のせいだろう。
ズシズシ…………
魔物がゆっくりとこっちに歩いてきていた。いつもならバカみたいに走ってくるのに、無駄に知性をつけたせいか警戒しているのだろう。こんな時だけは、知性を持ったことに感謝だ。
私はなんとかして頭を巡らせた。雷はどうせかわされる。いや、充電した大規模攻撃ならどうかはわからないが、今の充電が一切なされていない状態じゃ確実に無理。
体を動かすのも無理だ。このザマだもん。
ザッザッザッ…………
とうとう私の顔に魔物の影が落ちる。
………くそう、悔しいなぁ。気に入らないなぁ。こんなところで終わって、借りを何も返せないなんて………あの青ローブの鼻をへし折ってやりたいのに。
もっと力があれば……力………子供達もこんな気持ちだったのかな。悔しくて悔しくてたまらないや。
パリッ
私の背中に電気が走った。
………え?なんで?私、電気を出す気なんてこれっぽっちもないんだけど。充電して一発逆転狙ってたんだけど………なんで…………
「…………そうか。」
私の視界に、地面に突き刺さる剣が映った。
そうか、そういうことか………ここの地面は私の魔力の性質を帯びる。貯めてたんだ。地面の中に。私が放ったさっきの電撃を。
グググ…………
私は起き上がった。………と言いたいところだけど、全然起き上がれていない。膝を地面につけて、両手を地面につけて、右頬を地面につけて、這いつくばるような姿勢。何もカッコよくない。ダサい。間抜けな姿勢だ。強者がするポーズじゃない。
でも関係ない。そんなのどうでもいい。私は今弱い。このチャンスを生かすためなら、なんでもするよ、
私は右手を子供達に向けた。その先には青ローブ…………
「…………償え、私の雷で!」
カッ!!!
「「「ゴォオオオアアアアア!!!!!!」」」
3対の巨大な雷の龍が、全てを揺らす咆哮と共に出現した。
その時に漏れ出た龍の一部が、私の近くにいた魔物を焼き滅ぼす。
ギロッッ
龍が子供達と青ローブを睨みつけた。そして、
「「「「ゴォオオオアアアアア!!!!!!」」」
バチバチバチバチバチバチ!!!
雷が周辺物を全て焼き焦がしながら突進していく!!
パキンパキンパキンパキン!!!ゴォオオオアアアアア!!!バンバンバンボンボン!!!カッッ!!!!!ボンンンン!!!!
子供達が魔法を放つ!けれど、そんなの………
ボフッッ
龍は1匹が犠牲となったが、その爆発をまるでものともしないように突き破り、巨大な煙を纏い、まるでジェット気流のように太く濃い跡を流しながら突き進み続ける!
ゴンゴンゴンゴン!!!
今度は岩で門が何層にもなって作り出された。あれで止めようとしているのだろう。
バキッッ………ボゴン!!!
また1匹が犠牲となったが、それでも1匹の動きは止まらない。岩を噛み砕き、子供達へと大きな口を開けて突撃する!
バクン!!!
龍が青ローブもろとも子供達を飲み込んだ。そして、
カッッ!!!!!ゴロゴロゴロゴロ!!!!
龍が一筋の煌めきとなり、地平線に平行になるように雷が発生する!!!!
ドサドサドサドサ…………
子供達と青ローブがまだ黒焦げになって地面に倒れた。
彼らは最高幹部だ。魔法に対しての耐性はあるから死んではいないだろ。
私はフラフラになりながらも、なんとか立ち上がって彼らの元に向かう。
そして青ローブの元にたどり着くと、私はフードを剥ぎ取った。
「…………子供?」
まさか………
私は周りを見るために顔を上げようとしたと同時に、横からの強い衝撃で吹き飛ばされた。




