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全てが新しい異世界にて -fast life-  作者: 鰹節
第三章 交易公国 ファブログライン
97/132

一難去ってまた一難

これにて第三章も終わりです。

途中、更新が止まった時はすいませんでした。


砂となった腕についての疑問は後回しとなった。詳しいことは城に戻った時に、あの研究員に相談してみようと思う。


互いに話さいけない事が多く、時間を少しでも省略するために、ロウは死体となったマザールを見せることにした。

金獅子の兄弟、兄がカルア・弟がカルマの二人は、その死体を見て絶句していた。少なくともこの表情に嘘は見えない。


あまりにもショッキングであるからと、一部(フィオナやフィル。面倒を見るリウの三人)は話だけ聞くことになり、マザールの屋敷の比較的綺麗な部屋に集まっているところ。


一階の大きな窓が付いたこの部屋は、窓ガラスが割れている以外、特に荒れているという事は無い。


大理石のような白い石でできた机を囲う様に置かれた、ソファーに座っているのはキリエとフィオナ。それからシュールとその付き人メシアの四名だ。まだ座れるスペースはあるが、なぜか座る気分になれないので、自然とそこに空きスペースが出来ている。


ジェリカは遅れてやってきた部下たちにいろいろと指示を与え、少し遅れてロウ達に合流してきた。


「見てもらったあれが、話の全てだ。それから、怪しいと思われた港に行ったらそこでマーリンとランスロットの二人と出会ったって事だ。ギャザリックもその時に知り合って、少し一緒に行動することにしたから、よろしくな」


壁にもたれたギャザリックは鼻を鳴らして、何を言うでも無く不愛想な表情のまま話を聞くだけだ。


「それじゃぁ次は儂らじゃの。とは言っても、さっきロウが言った通りじゃ。そこのシュールじゃったか?そいつらを襲っとった黒マントに割り込んだ結果、紆余曲折あってマザール前に繋がったという訳じゃ」


「それはもう大変でしたよ。金獅子の二人が来なかったら、今頃皆死んでましたから」


強く頷きながら話すリリアの前で、その時の出来事を思い出しのか、リウの方も少し汗をかいているように見える。


「全くだ。あそこで俺たちが偶然居合わせたからよかったものの、そうでなけりゃ全員あの黒マント一人にしてやられてたところだぁ」


偶然の所に強く強調されたような気がしたが、それについては特に触れることなく話を進める。


「一人? あの場にはたくさんいただろ」


「追加で来たんですよ。もっとも、最初の一人に比べたら追加で来たのはたかが知れてましたけどね」


「・・・そうだったのか」


最初、フェザーを除いた一行が先のマザールの屋敷に付くと、追いかけてきていた一人の黒マントとそこで戦闘になったそうだ。


そこにカルアが合流し、続いてフェザーとカルマ、それぞれの一団が集まって大規模な戦闘になったというのが、あらかたの経緯らしい。


「その黒マントに襲われていた、お二人にはその辺り少しお話しいただきたいな」


睨むつもりは無かったが、自然と顔は険しいものとなる。去り際に放たれたナイフは二本。一本は納得がいくとしても、フィオナに向かって放たれたナイフについては詳しく知っておく必要がある。


「・・・・・・・・。」


話さない、というよりも離せないという方が正しいかもしれない。メシアの方は警戒の色を緩めず、シュールの方は俯いたまま服の裾を掴んでいる。


動く気配のない二人に痺れを切らしたジェリカが、詰め寄りそうになったところで、膠着した空気を打開したのはキリエの質問だった。


「あの、ちょっといい?」


「どうした?」


「間違ってたらごめんなさい。もしかして、『ラゴート公国』のシエル・ラビィですか?」


キリエの質問の意味はロウを含めて、殆どが理解しておらず、唯一まさかと言葉に出したのは座布団に座るセンジュだけだった。


「何を、貴様・・・」


「ラゴート公国の数いる子息たちの末っ子。たしか商業を主だって担当していたと記憶していますが・・・違いますか?」


ここまで話されたことで、俯いていたシュールが蒼ざめた顔を見せてきた。商売人だとしてもまだ子供で、その表情だけで肯定したと確信するには十分だった。


メシアが急に立ち上がろうとしたところで、キリエの方もローブを脱ぎ捨てて素を見せる。


「・・・『ストロガノン』の、キリエ姫?」


「騙していて御免なさい。でもこれで事情は分かりました、あなた達もそうだったんですね」


「キリエ、説明してくれ。どうなってんだ?」


一同の頭の上に?マークが浮かぶ中、一人理解したキリエは少し考えてから口を開いた。


「私たちとおなじ目的でこの国に来たのよ。」


「緊急の国家会議の参加者だと?」


そう、と話を区切って座り直すと、思い出すように話す内容ははどれもこれも初めて聞くモノばかりだった。


国家会議(リヴァール)と、呼ばれるこの会議にはそれぞれの大陸を代表する国が参加することになってるの。ストロガノンを始め、竜王公国『ラゴート』、砂塵国家『サファラ』、夜雅幕府『ジパング』、血戦領土『イスカンダル』、不溶凍土『グラキエス』、空中庭園『バビロン』の七か国がそれにあたるわ」


「その内の一国、ラゴートのお姫様だと、そういう事か?」


「えぇ。風の噂で聞いただけだから、本当かどうかは分からないけど、つい最近、商売方面で多大な損害が出たと聞いたことがあるわ」


「なるほど。その失敗を挽回するために、懐疑のついでに足を運んだと、そういう事か。」


「失敗などしていない!」


今迄だんまりを決め込んでいたメシアは、ロウの言葉に反応して声を荒げた。いきなりの事だったので、少し面食らったが、隣に座るシュール、もといシエルの手によって抑えつけられる。


「落ち着いて、シエル。結果だけ見たら同じことよ」


「ですが!」


何も言わずに首を横に振るだけの主を見て、苦しそうな表情を浮かべたままシエルの後ろへと移動する。どうやら、もう素性を隠すことに意味が無くなったらしい。


「偽名を使っていた事の無礼を謝罪します。それと、命を救っていただいたことについても、厚く感謝いたします。ありがとうございました」


ペコリと頭を下げる幼い少女は、最初見た時よりも大人びた雰囲気だ。


「キリエ様がおっしゃった内容は、殆どその通りです。付け加えるなら、その時の失敗が原因で・・・少し、冷たく当たられただけです」


「それで命狙われてちゃ、世話無いな。どんだけ血生臭い国だよ」


「生命線ともいえる取引を潰してしまったんですから、当然のことです」


服の裾を掴む手に力籠められ、再び俯いた表情は暗そうだ。声を掛けようにもなんて声を掛ければいいのか分からず、逃げるようにジェリカへと問いかけた。


「で、取引相手としてはその事どうとらえてるんだ?」


「ラゴートとの取引の消失は、我々としても手痛い出来事だ。だが、その事を特別悪いとは思っていない」


「因みに聞きたいんだが、何で取引を潰したんだ? ジェリカたちにとって手痛いなら、わざわざ潰す必要も無かっただろう」


「当時、潰した要因は品質と供給の釣り合いが取れなかった事、それに加えて、輸送の手間とサルワートルとの関係が垣間見えたことが大きな一因だ。細かく言えばもう少しあるが、上層部はこれらの要因が打ち切るべきだとそう決めたようだ。」


「ちょっと待ってください! ちゃんとした物を送っていました!」


ジェリカの言葉にいち早く反応し、声を荒げて詰め寄るシエルの圧は、ジェリカがたじろぐ程に強い。


「それにサルワートルとの繋がりなんて、あるわけが…」


「待つのはお前だ、シエル。少し落ち着け」


割り込んだロウによって、冷静さを取り戻したシエルは、おずおずと自分の席に戻る。


「そっちの事情を蔑ろにするつもりはないけど、まず俺たちの質問に答えてくれ。何でフィオナが狙われたのか、それを先に教えてくれ」


「…おそらく、黒だからだろう」


シェルの後ろに立ったままのメシアが、淡々と答えてくれる。


「私達、…シエル様を狙ってくる派閥は白だ。黒を敵対視している節があるために、おそらくその繋がりだろう」


「…そうか。」


絡まった国の内情を知り、それ以上の返事は出てこない。


「話は終わりでいいだろうか? 図々しくて申し訳ないが、マザール商会に関係しているであろう、ソコの人物と話がしたい」


「随分と急ぐんだのう。もう少しゆっくりしてもバチは当たらんじゃろうに」


「助けて頂いた恩については、本当に感謝している。けれど、我々にとっては国家会議よりも、事は重大なのだ。…申し訳ない」


感謝の言葉を言われながら頭を下げられるという行動に、どうしようかと頬を掻く。助けた本人であるフェザーもロウと同じようにして肩をすくめていた。


立場が変われば事情も変わるのは当たり前の事なので、ロウとしては会議の方に向き合って欲しいのだが、どうやらあちらはそれ以上に切羽詰まっている様子。


「俺たちとしては会議の方にも出てくれるんなら、越した事は無いよ。それに、頭を下げるなら俺たちじゃなくて、こっちだろ。・・ジェリカ、どうなんだ?」


「どう、とは何だ。こちらとて大忙しだ。マザール様の謎を解かねばならないし、それに商店の方も態勢を変えなければいけない。これでもやることは多いのだ。こうして顔を出してやっているだけでもありがたいと思うんだな」


偉そうな言い方だが、ジェリカのこれからの事を思えば、まだ飲み込める。頭が急死したうえ、町中がこんな有様だ。いつも通りの商業を再開するのは少し先になるだろうし、それで負う負債は少なくないだろう。


「そこを━━」


「が、そんな中で大口の取引が戻るというならば、こちらも願ったりの展開だ。今すぐとはいかないが、後日改めて会話の席を設けたい。今はそれで抑えてもらえないか?」


一瞬、地獄に落ちたような暗い影が垣間見えたものの、その後のジェリカの提案に救いを得たのか二人は満面の笑みを浮かべていた。シエルの方は薄らと涙を浮かべており、流れないように堪えている。


「さて、話も一段落したと考えたいが・・・あんたらはどうなんだ。金獅子兄弟」


「ここで口を挟むのは無粋でしょう。知りたいことについてはあらかた知れましたし、依頼主の謎については私たちの管轄外なので。キリもいいからこの辺りで失礼します、そこに緑髪とは今後二度と会いたくないので」


「また今度食事でも奢りますよ。楽しみにしていてくださいね?」


「二度と会いたくないと言ったんだ、馬鹿者! 二度と俺に関わるなよ、二度とだぞ!」


「・・・フリですか?」


「違うわぁ!!!」


「行くぞ、兄者。用は無くなったからよぉ」


ギャイギャイと叫ぶカルアを引き連れて、カルマはこの場を後にした。去り際にロウへと見せた意味深な視線については、今は考えないでおこうと思う。


「だったら私もここで消えるとしよう。そこの人間、お前とはいろいろと話したことがあるからな。近いうちに時間を作っておけ。いいな?」


返事も聞かずにこの場を後にしたジェリカは、急ぎ足で駆けていく。これからのやらなくてはいけないことの多さに、しばらく時間は作れないだろう。暇な時でも顔を出してやるか、程度の考えに止めておいた。


「しかし、災難じゃったのう」


「・・・だな。大変だった」


センジュのまとめた言葉は、確かにその通りだった。マーリンの件に関してはロウが中心ではあったが、それ以外の面については、自分から首を突っ込んだ結果の出来事だ。


解けていない謎は多く、どれも大事な事だと思うが、解決に至るまでの手がかりがない。手掛かりがない以上、考えたところで仕方が無いので、記憶の片隅に刻んでおくことにする。


「それに、大変なのはこれからだ。急いで準備を整えて出発しねぇと、時間に間に合わねぇ」


「そうね。買ったのモノは殆ど捨てちゃったから、一から買い直しだわ」


「そうらしいです。いつまでも休んでないで、行きますよ、リウ」


「何で私が悪いみたいな言い方するの? 結構頑張ったよ、私。」


不満そうに口を尖らせる横で、手を引くフィルが一言。


「知ってるよ?だから早く終わらせてゆっくりしようって言ってるんでしょ?」


当然のように言われた一言に、怒った手前素直に喜んで良いのかどうかに迷い、何とも言えない表情をしている。その姿を見て笑った後、未だにソファーに座って、安心したように息を吐いているシエルへと向く。


「という訳で、一緒に行かないか?」


「私たちも?」


「意外に誰がいるんだ。時間が無いのは一緒だろうから、もし遅れるなら仲間の一人でもいた方が安心できる」


「ズルいわよ、その考え」


「でも事実だろ。という訳でどうだ?」


シエルと何度か視線を交わし、少し考えた後で微笑みながら回答した。


「ぜひ、お願いします」


「よっしゃ、それじゃさっさと向かうとするか! ロウ、お前もちゃんと荷物持ちせぇよ?」


「何でそんなに気合い入ってんだ?」


久しぶりの血を流した戦闘のせいか、テンションが少し高めのフェザーを筆頭に部屋から出る。


一同の楽し気な雰囲気の中、全員が楽しそうにショッピングの時間を過ごした。




━━━━━━とはいくはずもない。ロウを取り巻く事件は、次から次へと止まる事は無い。



「あれ、あの人何処かで━━」


マザールの屋敷を出て遠くに見える、一人の小さな少女の面影は、どこかで見たことがあるいで立ちだった。


紫色の長い髪、ラフな服装は肩がはだけている独特の服だ。厚底のサンダルと、手錠のようなゴツイブレスレットを付けた、間違えるはずの無い少女━━


「あ、いタ。ようやく見つけたヨ!」


こちらに向かって手を振る少女、ソルドールがそこにいた。


もしかしたら、一章・二章の書き直しをするかもしれません


そしたらまた止まることに・・・ならないように頑張ります

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