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全てが新しい異世界にて -fast life-  作者: 鰹節
第三章 交易公国 ファブログライン
96/132

港 ~終了~ からの異変

随分と感覚が開いてしまい、申し訳ありませんでした。


多忙なプライベートもひと段落したので、再び上げていきたいと思います。

「リリア! リリア! 返事しろ!」


 手に握る刻印石へと必死に叫ぶが、先ほどの襲われているという言葉を最後に、リリアとの連絡は途絶えてしまった。


 何度も叫んでも刻印石は沈黙のままで、繋がる気配がない。


「何で急に…。さっきは繋がったのに」


「考えられるとすれば、再び妨害するものが出来たか、向こうの刻印石が壊れたかじゃ」


 隣で宙に浮かぶ座布団に、座ったままのセンジュがそう教えてくれた。微動だにしない刻印石に奥歯を噛みしめながらも、後悔の気持ちと一緒にポケットに仕舞う。


「リリアたちの所に行こう。早くいかないと手遅れに…」


「ちょっ! ロウさん!?」


 勢いよく立ち上がったロウは、揺らぐ視界に思わず片膝をついてしまった。どうやら先ほどの戦闘は思っていた以上に、ロウの体力を削っていたらしく、体が鉛のように重い。倒れそうになった体を、二ニルが支えてくれる事で何とか、もちこたえることができた。


「行くとはいっても、何処に行こうというんじゃ。どこにいるかなど分からんじゃろ」


「それは‥‥‥」


「まぁ、少し待っとれ。」


 座布団に座ったままのセンジュが手を叩くと、影から一人の男がヌルリと出てきた。急に現れたその男は、顔に黒いマスクを付け、体は小枝のように細長い。


「戦闘が起きていると思われる場所を見つけてきてれ」


「…御意」


 それだけ残して、その男は再び影の中へと姿を消した。


「ある程度のめぼしは付いてるから、とりあえずそこを目指そうと思う」


「ほう? して、それはどこじゃ?」


「マザールの屋敷だ。確証は無いけど、俺はそこにいるって言ったから、集まってるんじゃないかという予想だ」


「マザール様の屋敷だと? ・・・急いで戻るぞ」


 静かに怒りの感情を目に灯しているジェリカは、そう言って壁にもたれ掛かりながらも歩き出す。


 ふらつく足に今一度力を込めて立ち上がり、今度はふらつかない事を確認して、歩き出そうとしたロウの目の前に半裸の男が前に立ちはだかる。


「何処に行こうってんだよ」


「・・・ギャザリック」


 指を鳴らしすこの男は、全くと言っていいほど消耗していない。ランスロットに飛ばされた時も一撃で失神した事や、マーリンを倒しに行ったときもサポートだったので、そこまでマナを消耗していないのだ。


「俺の仲間は全員死んだってのに、お前たちは助かろうとするのか? そりゃ無ぇだろう…なぁ?」


「貴様、そこを退け! そんな事を言っている場合ではないのだぞ!」


「ギャザリック、お主の気持ちも分らんでもないが冷静になれ。そんな事をして何になる?」


 この場において最も力を発揮できるのはギャザリックだ。消耗しきったロウと、ダメージの大きいジェリカの二人に倒す力は残っていない。センジュや二ニルなんて以ての外だ。


「何にもならねぇよ。ンなこたぁ分かってんだ、ただ気に入らねぇ」


 軽く叩いた足元から数本の剣が現れる。うちの一本を掴み、話すセンジュの目の前にへと剣先を向けた。


「俺の仲間が全員死んだ傍で、お前等だけ助かろうなんて虫が良すぎるだろうが。俺たちは何もしてねぇってのによぉ」


 悲し気な口調に思わず同情してしまう。今回の一件について、ギャザリックたちは完全に被害者だ。罪を擦り付けられる存在でありながら、迎えた最後は皆殺しという凄惨極まりないものだ。それを分かっているから、センジュは何を言うでもなしにただ黙って剣先を見つめる事しかしていない。


「貴様の言いたいことはそれだけか? 私もここでゆっくりとしているわけにはいかない。私怨は無いが、邪魔するならここで消えろ」


 ジェリカのその言葉に反応したギャザリックは、向ける剣先をジェリカへと変える。二人の間に冷たい視線が交錯し、火ぶたが切って落とされる直前に、ロウはジェリカの肩を叩いて間に割り込んだ。


「・・・ギャザリック、お前この後どうするつもりだ?」


「何?」


「言葉の通りだ。俺たちを殺して、その後お前は何をするんだ? ・・・仲間が戻る訳でもないのに」


「黙れぇ!!!」


 切りかかった一振りを躱すが、重い体はいつものように動かず、ギャザリックの持つ剣を弾くだけに留まり、胸ぐらを掴まれてしまった。


「・・・お前分かってんだろ。今何をするべきか、お前はどうしたいのか」


「知るかよ、俺はただお前らが憎いだけだ!・・・何で俺だけがこんな目に遭わねぇといけねぇんだよ!」


「俺たちをここで殺したところで、お前の仲間が戻ってくることもない。お前の気が晴れることもない、っ全部わかってんだろうが!」


「黙れぇ!!」


 振りかぶった拳はロウの右頬を捉え、そのまま振り抜いた。

 息も荒く肩で呼吸するギャザリックは、どこかロウよりも苦しそうに見える。


「ちょっとロウさん! 刺激するようなこと言わないでくださいよ! 今のギャザリックさんは冷静じゃないんですから」


 殴られたロウに駆け寄ってきたニニルの手を借りて立ち上がる。


 冷静じゃない? 違う、コイツ(ギャザリック)は冷静だ。ここでロウを殺してしまっては、マーリンに出会えるかもしれない道が消えてしまう事を知っている。だから、手に持っていた剣で切らずに殴り飛ばしたのだ。

 それに、本当に殺すつもりがあるのなら、近くに落ちている自身の錨のような槍を拾うハズだ。


 今はぶつけようのない怒りにどうしていいのか分かっていないだ。だから、コイツに一つの道を示してやる。


「俺に手を貸せ。マーリンまで連れて行ってやる」


「・・・んだと?」


「当然、今すぐという訳にはいかない。まだ始まったばかりだからな」


 黙って聞くギャザリックは構えた剣が少しずつ下がり始め、自身の感情に押しつぶされそうな苦し気な表情は、鳴りを潜めた。


「少なくとも、ここで争っているよりかは良いと思う。どうする?」


「・・・一つだけ聞かせろ」


 手に持った剣を地面に突き刺して、ロウの眼前まで歩み寄り、見下す様に睨みつける。


「テメェは、何であいつらを追いかけてる。外道だっていう事は分かるが、それは人間であるお前もそうだろうがよ」


 ロウよりも僅かに身長が高いギャザリックを見上げ、一歩も下がらずに正面から睨み返す。二人の間に交錯する視線は『敵対』しているというより、互いの『疑念』がぶつかり合っているという方が正しい。


 ギャザリックからしてみれば人間であるロウは敵でしかないのに、考え方や態度は人間のそれではない。

 一方で、ロウからすれば、何処の馬の骨とも知れない奴を仲間に引き入れようとしているのだ。少しでも相手の事を知ろうとするのは、当然の事と言える。


「俺が人間であることを知りながら、それでも俺の事を家族と呼んでくれた奴が攫われたからだ」


 思わず息を飲んだのは目の前のギャザリックだけでは無かった。


「そいつを助けるために俺はあいつらを追いかけなきゃならない。けど、相手は強大だ。少しでも力が欲しいっていうのが理由だけど・・・不服か?」


 どうやら思っていた答えとは違っていたようで、ロウの答えを聞いて僅かに動揺の色が伺える。それから俯いて何かを思い出す様に苦し気な表情を浮かべたかと思えば、大きく息を吐きだした頃には元に戻っていた。


「本当にあの外道まで辿りつけるのかよ」


「お前も見ただろ。あいつらが次から次へと俺に関わってくるところを。・・・絶対に追いついてやる。必ずだ」


 少しも揺らぐことの無い物言いと、頑ななその態度はテコでも動かない。その事を勘で察したギャザリックは、言いたいことを飲み込んだ腹いせに、近くの壁を殴りつけると、蜘蛛の巣のようなヒビが入った。


「そこまで言い切るのなら、俺を外道に会わせろ。・・・良いな?」


「任しとけ。」


 背中を向けて歩き出したギャザリックに続いて、ロウも歩き出す。その後ろを付いてくるセンジュは、一人納得していないのか、何度も首を捻っていた。二ニルがどうしたのかと問いかけると、座布団に座ったセンジュは悔しそうに呟いた。


「儂の時よりだいぶ簡単に認めてないかの?」


「センジュとは初対面が悪かったから仕方ない。諦めろ」


 ロウのその言葉を最期に、座布団の速度を上げて先に飛んでいってしまった。


 ◇◇◇


「どうなってるんだ」


 拗ねたセンジュに追いついたところで、調べに出していた部下が帰ってきた。伝えられた場所はロウが予想した通り、マザールの屋敷前であることを知り、帰っている最中の街中を見て思わず出た言葉だ。


 賑やかだった大通りは一体何があったのか、壁は抉られ、地面は割れていた。かなりの怪我人が出たのか、そこら中から泣き声が聞こえてくる。


「止まるな。先を急ぐぞ」


 ジェリカの言葉に後押しされ、一向はマザールの家まで真っすぐに向かう。ロウ達が港でマーリンと戦っていた最中、一体何が起きたのか気にはなるが、おそらくこの答えはリリアたちが知っているだろうと、先を急いだ。そして、その数十分後。目的のマザール別荘の近くまで来たところで、遠くから騒がしい音が聞こえてくる。


 折られた樹木や隕石でも降ったのか、と思う程のクレーターなどが至る所に広がる道の先、近付くにつれてこれが剣戟の音であるとハッキリと分かる。


「ギャザリック、頼む!」


「命令すんじゃねぇ!」


 港近くにいた馬を勝手に拝借したギャザリックは、気負いよく跳び上がると手に持っていた錨のような槍を、今まさに戦いが怒っている中心へと投擲する。風を切って進むその槍は、地面にあたると同時に周囲に無数の剣や槍が生える。


 急な変化に対応できなかった面々は、少しの間動きを止め、剣戟の音が止まる。僅かに訪れた静寂を逃すこと無く、ロウは声を上げた。


「そこまでだ!」


 急に聞こえてきた第三者の声に、一同の視線がロウへと集まる。その中には、血と泥に汚れたリリアとフェザーの姿を見つけ、無事である事に安堵の息を漏らした。


「既に増援を呼んである、ここに来るのも時間の問題だ。逃げたいなら今しかないが・・・まだやるか?」


 この場にいる様々な面々は、一同に顔を見合わせてその後の動きをどうするかを探り合っている。たった十数人しかいない黒マントたちは、姿を見せたロウへと一瞬殺気を放ってきたが、結局それ以上何もしてくる事は無かった。


「・・・終」


 リーダーと思われる黒マントのその一言を最期に、一斉に跳んで消えた。瞬きの間に姿かたちも消え、恐ろしいぐらいに鍛えられているプロの集団だ、というのは誰でも分かることだろう。


 危険が去ったことを伝えると、生やした剣や槍を収めると近くの瓦礫の上に座り込んだ。ジェリカは中が気になると、塀を飛び越えて戻っていった。二ニルとセンジュは怪我人へと駆け寄って、それぞれができうる限りの手当てを行っている。


 センジュの影から湧き出てくるそいつらの働きっぷりは、何かの賞を贈られても良いと思う程だった。


 この場に残った面々は、黒マントが消えたことによって各々が安堵の息を吐いている。くずれ落ちる怪我人の中をかき分けて、泥だらけになったリリアへと駆け寄った。


 ヘタをすれば女に見えるこの緑の長髪の男性は、血と泥で汚れたマントを羽織り、今は疲れたように地面に転がっていた。


「リリア!良かった、無事だったか」


 刻印石から連絡を受けた時は、最悪な結末も覚悟していたが、こうして生きてる姿を見ることが出来て、何よりだ。


「いえ、全く無事じゃないですけど。どこを見てロウは無事だって言ってるんですか?」


「ははっ、そこまで言えれば十分無事の藩中だ。それで、無事だったのはそこの彼が助けてくれた、ってことでいいのか?」


 少し怒り気味のリリアの言葉も途中に、ロウは近くの壁にもたれ掛かっている一人の男性に目を向けた。そこにいた男性は、間違えるはずもない。つい昨日、互いに殺し合いをした仲である獅子の獣人だ。


 空を見上げる顔色は、お世辞にも良いとは言えない。リリアと同じように疲れて座るその獣人に、近寄ろうとすると、その間に割り込んできたのは獣人の片割れ。燃えるような金色の鬣を風になびかせている、筋骨隆々の獣人だ。


「まさかお前まで来ているとは思わなかったよ」


「俺だって、まさかお前が関わっているなんて思ってなかったぜ。・・・落ち着いてる雰囲気を見るに、事情を知ってるな?」


「話したいことはお互い様だ、詳しいことは後にしよう。…文句は?」


「・・・ねぇな」


 文句はありそうだったが、後ろにいる疲弊しきった相方への心配が勝ったのだろう。踵を返してロウから離れて行った。


 そんな獣人を見届けることもせず、ロウの方も倒れているリリアを担いで、門の近くに見えた見覚えのある猫耳少女の元へと近づいた。


「ロウ!」


「師匠!」


 全身ボロボロのロウを見て、それでも嬉しそうな声を上げる姿を見るに、おそらく余程危険な戦いだったらしい。


「良かった。怪我は無いか?」


「えぇ、大丈夫。リリアさんが必死に守ってくれたから」


 担いでいるせいで顔は見えないが、それでもなんとなくニヤついている事が想像できたので、近くに捨てるように肩から下ろした。


「まぁ、それくらい働いてくれなきゃ割に合わないからな」


「偉そうに言いますけど、こっちがどれだけ大変だったか分かりますか?」


「そのセリフそっくりそのまま返してやる。・・・襲われた理由は、あれか」


 文句を言うリリアを放っておいて、見回した先に、少し離れたところに座るシュール達を見つけた。近くに立っているフェザーから手招きされた。


「随分やられたな。そんなに強敵だったのか?」


「鈍っとるのもあったが、それを差し引いてもなかなかじゃろう。それはロウにも言えそうじゃがな」


「言ってくれるな。俺だっていろいろ・・・」


 そこまで口にした瞬間、何かに気が付いたようにロウはピタリと動きを止めて、空を見上げる。そして、近くの瓦礫を拾うと、座るシュール達の頭上をその瓦礫で振り抜いた。


「何を・・・」


 その刹那、鳴り響いたのは金属音。いきなりの行動に動けなかったシュールと、付き人のメシアは金属音が鳴った先を見て息を飲んだ。


 ロウが弾いた先には、一本のナイフが落ちていた。紫色の毒々しい空気が漂う、歪なナイフだ。


「こりゃぁ、呪いがかかっとるな。おそらく追跡かなんかじゃと思うが・・・まさかさっきの黒マントか?」


「分からねぇ、けどその可能性はデカい。そもそも、あの黒マントたちはシュール達を狙ってたんだろ?だとしたら、それしか考えられないけどな」


 手に持った瓦礫を投げ捨てると、何事かと近づいてきたセンジュはそのナイフをおもむろに調べ始める。


「しかし、よく気が付いたのう。」


「経験からだな。この世界じゃ俺が思っているより、もう一つ先に進む必要性を知ってるだけだ。あの黒マントたちが大人しく引き下がったのが、少し引っかかってたから。」


「なるほど。一理ある。そう言われると、怪しく感じてくるから、不思議なものじゃ」


 ロウとフェザーが話す傍ら、何かに気が付いたセンジュは小さく唸っている。


 雲が消えた空には太陽があるだけで、未だに強い陽光を放っている。眩しさに手を翳し、ギラギラとした光に眼を細めたるのは、至って自然な事。


 そして、とっさに手を出した事も、きっと自然な事だった。


「ロウ?」


 空から降りそそいだのは、もう一本の同じナイフだ。黒紫の見た目や、毒々しい雰囲気は間違うハズも無い。唯一違うとすれば、狙われた先がシュール達ではなく、フィオナだった事。


 後ろに跳んで腕を伸ばしたロウの手首に突き刺さったそのナイフは、大量の血を垂れ流させている。


「・・・ッ!」


「おい! ロウ!」


 駆け寄ったフェザーがロウからナイフを引き抜こうと、伸ばした手は隣に来ていたセンジュの杖によって弾かれる。


「触れるな! ヒュドラの毒じゃ!」


「・・・ヒュドラ?」


 聞いたことの無い毒の名前は、フェザーたちからすれば相当に有名な物らしい。センジュからその名前を聞いた途端、見る見るうちに顔色が変わっていった。


 腕に感じる痛みはナイフに刺されただけのもの。慣れているその痛みに耐えながら、周囲に近付いてくるセンジュとフェザーを見る余裕は、すぐに消えて無くなる。


「何だよ、・・・これ!」


 ナイフが刺さった個所を中心に、腕が石のような灰色に変化しだすと、水を含んだ砂のようにボロボロと腕が零れ落ちていった。


 悍ましいその光景に、駆け寄ってきたリリアは顔を引きつらせていた。


「リリア! お主の魔法で何かできんのか!」


「治癒魔法を行う程のマナは残ってないですし、それにヒュドラの毒の治療法なんて知りません!」


「儂もこの治療薬は持っておらん。というより、この毒に効く薬があるなど聞いたことが無いわい!」


 そうして話している間には腕の砂化は止まらず、肘まで差し掛かろうとしていた。


「打つ手なし、ってマジかよ」


 流れる冷汗は滝のようで、少しずつ砂となっていく自分の腕を、絶望の表情を浮かべて見つめる事しかできない。


 痛みは無い。ただ、そこにあったものが消えていく、という経験したことの無い恐怖に、体の震えが止まらなかった。


 周りで騒いでいる音は、雑音としてしか処理されず、目の前で手ぐすねを引いて待っている『死』から逃げるように、瞼を強く閉じた。


「・・・え?」


 ざわついた周囲の声の中で、ロウの耳に声をして聞こえてきたのは、キリエの驚いた声だった。最初、何に驚いたのか分からなかったが、閉じた瞼を開けることでその意味を知る。


 腕の砂化は肘を過ぎたところで止まり、そこから時間が巻き戻るかのように、砂化した腕が元に戻り始めていたのだ。


「・・・は?」


 訳が分からないままセンジュやフェーザ達の方を見るが、彼らも一体何が起きているのか全く理解していないようだった。周囲の騒めきは収まり、代わりに疑問からくるため息が周囲に充満する。


 現状が理解できないでいるロウ達をあざ笑うかのように、元通りになったその腕を動かして何度も、何度も確認するが、どれだけ確認しても自分の元通りの腕だった。


「お主、本当に人間か?」


 問いかけるセンジュの質問に、別の生き物のように感じるその腕を触りながら答える。


「人間、のはずだ。・・・俺は人間、で良いんだよな?」


 人間であることを肯定して欲しくて返した質問に、答えてくれる者は一人も居なかった。


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